《不用なし方》第89話

自分はなにかを間違えたのだ。それだけは分かる。

優希は攜帯電話を握りしめたまま亜を探すために歩き出した。

そう遠くへはいっていないはずだ。

などにも目を凝らしながら彼の姿を探す。予想通り、彼はすぐ近くにいた。

「亜

は建の壁に背を預けて俯いていた。優希の聲に反応せずにただ地面を見つめている。

「亜?」

は返事をせず、なにかを我慢しているかのように己の下を噛んでいた。

する優希を更に困らせるように、彼の足許に水滴が落ちて水玉模様を作っていく。

「あ……亜?」

昔から彼の涙には弱かった。今回に至っては泣いている理由も分からないため、どうすることが正解なのか見當もつかない。

「あ……」

「……もう、いいよ……無理に付き合ってくれなくても」

は告げた。……涙聲で。

優希がその言葉に衝撃をけたのはいうまでもない。

 「な……なん、で……そんな……」

予想もしていなかった言葉に揺が隠せなかった。落ち著きなく視線を彷徨わせて、なかなか亜を直視できない。

「もう……無理なんか、しなくていいから」

「無理なんて、なにも……っ」

「噓吐き」

涙で潤みながらも怒りのを含んだ瞳が優希を真っ直ぐにる。

「嫌々會われても、嬉しくない……そんな、申し訳なさそうな眼で……私を見ないで」

申し訳なさそうな眼で見ていたつもりはない。けれど、そう見えてしまう心當たりがないわけでもなかった。

「亜……」

「全部……噓でしょ……?」

彼の言葉を信じたいと思う気持ちもあるけれど、こんなに避けられてしまっては信じられなくなるのも仕方がない。

「亜に噓は言わない」

迷うことなく答える優希の言葉に、亜は顔を顰める。

「私を避けてるくせに」

優希の肩が小さく震えたのを亜は見逃さなかった。

「それに関しては……否定しない。けど、亜を避けてるんじゃない」

誤解で嫌われたくはない。優希は暴に頭を掻きして溜め息を吐いた。

「……怖いんだよ、るの」

想像していなかった言葉に、今度は亜が瞳を瞬かせる。

「おかしいだろ? あれだけ酷いことしといて……今更怖いとか。……でもさ、お前を目の前にすると……ほら」

開いて前に差し出した優希の両手は震えていた。

「らしくねぇだろ……だっせぇ」

「なにが……怖いの?」

「俺、だいぶ壊れてるから……お前にったら、大事にできなくなる」

「どういうこと?」

記憶を取り戻してから雑に扱われたことはない。記憶を失っていたときでさえ、彼は亜や両親を気遣って距離を置こうとしていたのだ。

意味が分からない首を傾げる亜を見て、優希は困り顔で額をった。

「……そういうの、俺的には拷問なんだけど」

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