《不用なし方》第91話

マンションに向かう途中にあるコンビニに立ち寄ってから優希の部屋へと辿り著く。

コンビニで購した飲みりのビニール袋をローテーブルに置いて亜をソファに座らせる。

「優希くんも」

はソファのスペースを空けるように奧へとを移させた。

ソファに座ると、亜との距離が近くなる。

張する優希の気持ちを知ってか知らずか、亜が優希の手に指を絡めてきた。

「飲み飲めないだろ」

「いいの」

よくない……。

優希は空いている方の手で頭を掻いた。

繋いだ手を振りほどく気はない。しかし、これ以上の接は避けたい。

張する優希の隣では亜が嬉しそうな顔をしている。會話もない靜かな空間に気まずさをじているのは彼だけのようだ。

こっそりと亜の表を窺う優希の視線に気付いて亜が顔を上げる。反則としか思えないしい表に優希は降參するしかなかった。

そっと顔を近付けて軽くを重ねる。もっと味わいたい気持ちを抑えて彼を抱きしめた。

「これ以上は……勘弁して」

「え?」

「これ以上すると、抑えが利かなくなるから」

大事にしたいならば踏み止まるべきだと自分に言い聞かせる。それなのに……彼の手が自分の背中に回されると簡単に気持ちが揺らいでしまう。 

を拒絶したいわけではない。當然だ。彼はこれ以上ないおしい存在なのだから。

「亜を……大事にしたいから、これ以上は無理」

なんの準備もなく彼を抱いたら……今まで以上に自分を許せなくなる。

を苦しめたからこそ、今度は彼が不安になってしまうようなことは避けたい。そう思っているのに……うまく伝えられない。

「……帰るね」

は繋いでいた手を解いて立ち上がった。

優希と一緒にいられるだけで充分だった……最初は。

自分にれることを避けていると気付いたとき、こちらかられにいけたら……と思った。なかなかタイミングが見つけられずにいたけれど、水族館では意図せずに手を繋ぐチャンスを得ることができた。

近付くキッカケになればいいと思っていたのに……ここまで拒絶されるとさすがに凹む。

大事にしてくれるのは嬉しい。けれど、これは違う。大事にされているというよりも、怯えられているだけだ。

自分から積極的にれたり、うようなことを口にするのはとても恥ずかしい。けれど、恥ずかしいからとなにもしなければ、きっと優希はこの先何年も自分にれようとはしないだろう。

その期間が長ければ長いほど、彼が自分を責め続ける時間が長くなる。そう思うとやるせない気持ちになった。

気持ちが重なっているようですれ違っている……それは、片想いよりも辛い。

は優希に引き留められることなく部屋を出て、ひとり駅までの道を歩き出した。

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