《白雪姫の継母に転生してしまいましたが、これって悪役令嬢ものですか?》第3話 バスカヴィル家
「いいですか? 魔法の基本は想像力です。その小枝から風が出るさまをイメージして」
ミラーに言われ、私は握っている小枝の先に意識を集中する。
「十分なイメージが浮かんだら、エイッと小枝を振って魔法を発させます」
「えいっ!」
小枝を振ると次の瞬間――。
「――わっ!?」
正面にいるミラーのフードが吹き飛んだ。
「おお、上出來です」
ミラーはフードを直しながら満足そうな顔をしている。
「びっくりした……。イメージしてたのより風の力が大きくて」
「はじめはイメージ通りにはいかないものです。練習を重ねれば、力加減は自然とにつくでしょう。部屋の壁を吹き飛ばさないよう注意してください」
「え……。それってお城を吹き飛ばす風をイメージしたら、まさか本當にお城が吹き飛んじゃうの?」
私の疑問にミラーは小さく肩をすくめて答えた。
「あるいは……。ソシエお嬢様ならばそうならないとも言いきれません」
「………………」
魔法とは恐ろしい力だ。災害を起こせてしまうわけだから。
Advertisement
とりあえず、むやみやたらに風を起こすのはやめておこう。
「風の魔法は洗濯を乾かすくらいしか使えなさそうだし……。あっ、キャンディでも出す方が実用的じゃない?」
試しにそれをイメージして小枝を振ると、王妃の間の大理石の床に、野いちごのような木の実が転がった。
「うーん、上手くいかない」
何度か振ると、今度はチョコレートヌガーらしきものが床に落ちる。初めより多近づいたけれどもキャンディではない。よく言えば當たらずしも遠からずか。
でも、そもそもこの世界に、私の考えてるようなキャンディはあるのか。
とりどりのフィルムに包まれたそれはない気がした。
チョコレートヌガーを拾ったミラーが真面目な顔をして言う。
「この魔法の影響でどこかの家の子どものおやつから、チョコレートヌガーが減っているかもしれません」
「え……?」
「お菓子は風や火と違って自然ではありませんからね。勝手には湧いてきません。魔法の力で、どこかから移してくるんです。魔法を使われる時はそういった背景にも注意してください」
ミラーは床から拾ったチョコレートヌガーを、ふうっと吹いて自分の口にれた。
お菓子を出すのも被害甚大だ。泣いている子どもの顔が浮かんだ。
そこで王妃の間へ、ツカツカとい足音が近づいてくる。
あれはフリオ王の足音か。
「枝をしまって……! レッスンはこれでお終いです」
ミラーの迫した聲で言った。
「見られたらまずいの?」
「この世界で、魔や魔法使いは迫害される存在です。魔法をけっして人に見せてはなりません」
彼は私に耳打ちすると、さっと居住まいを正した。
それと同時に廊下に続く大きな扉から、フリオ王がってくる。
「レディ、調はどうかな? 一晩寢て落ち著かれたか?」
そうだった。昨日は王の口からスノーホワイトの名前を聞かされ、ショックで気分が悪くなってしまったんだ。
「おかげさまで」
私はスカートを持ち上げお辭儀をしてみせる。この世界のジェスチャーにも慣れてきた。
「うん、顔もいいみたいだな」
王は口元をほころばせた。
それから彼は、私のそばに控えていたミラーへ目を向ける。
「その男は?」
「薬師のミラーです」
答えたのはミラー本人だった。
「普段こちらに出りされている薬師・ベンヘルツ氏がご不在とかで、私が代わりに參りました」
「そうだったのか、ご苦労」
王は自然な笑顔で頷いている。
「しかし驚きました。バスカヴィル家のお嬢様、ソシエ様がこちらにおいでとは……」
ミラーがエメラルドの瞳を、大きく目を見開いてみせた。
驚きの演技が堂にっている。いったい何を言うつもりなのか……。
「何……!? 君はこのレディを知っているのか!?」
王も目を丸くする。
「もちろんでございます。私めはし前まで、バスカヴィル家に仕えておりましたので。あちらの家がお取り潰しになったので、最近職を求めて城下に來たのです」
「バスカヴィル家? 取り潰し? どういうことだ、詳しく話を聞かせてくれ」
王は困の目で私とミラーを見比べた。
*
ミラー曰く、バスカヴィル家は南方の山奧に領地を持つ古い一族だ。フリオ王の國“雪解けの國”の貴族としても名を連ねていたが、バスカヴィル一家は領主の娘・ソシエを殘し、みな流行り病でこの世を去った。
それで領民たちが協力し、ソシエ嬢を新たな領主にと願い出たが、國に認められなかった。未婚のが領主になるのは前例がないというのがその理由だ。
領地は近隣の、別の貴族に與えられた。しかし新しい領主は山ばかりで産業もないその土地に価値を見いだせず、放置している狀態だった。
噓か誠か、ミラーはその話を切々と、王の前で語った。
調べればわかることだから、その話に大きなウソはないんだろう。でも記憶を失う前の“ソシエお嬢様”と一緒に、王に取りろうと策略を巡らせていた彼だから、同を買おうと大げさに言っている面はあるはずだ。
王はその話を聞き終えたあと、書記を呼んで言った。
「今の話が本當なら、レディが私の妻になれば、領地を返してやることができるはずだ。調べを進めよう」
確かに王と結婚すれば、私は未婚でなくなる。家を相続できない理由はなくなるというわけだ。
「しかしバスカヴィル家とは……。失禮ながら……」
書記が王に耳打ちした。
言葉の続きは聞こえなかったけれど、貴族とも呼べないような貧しい地方貴族の子を、王妃に迎えるのは難しいという話なのかもしれない。
もともと王が強引すぎたんだ。素のわからない、記憶喪失のを妻にしようなんて。
どうなることかと、ミラーは固唾を飲んで見守っていた。
結婚の話はなくなってしまうのか……。
しばらく書記と話したあと、王は私のそばに戻ってきてひざまずく。
「レディ……、いや、ソシエどの。君の領地を見に行こう」
王の空の瞳には、相変わらずの自信がみなぎっていた。
【電子書籍化】婚約破棄のため冷酷騎士に決闘を挑んでみましたが、溺愛されるとか誰か予想できました?
ミーティアノベルス様より9月15日電子書籍配信。読みやすく加筆修正して、電子書籍限定番外編も3本書きました。 年頃になり、私、リアスティアにも婚約者が決まった。親が決めた婚約者、お相手は貧乏伯爵家の私には不釣り合いな、侯爵家次男の若き騎士。親には決して逃すなと厳命されている優良物件だ。 しかし、現在私は友人たちに憐れみの目を向けられている。婚約者は、冷酷騎士として名を馳せるお方なのだ。 もう、何回かお會いしたけれど、婚約者のお茶會ですら、私のことを冷たく見據えるばかりで一向に距離が縮まる様子なし。 「あっ、あの。ゼフィー様?」 「……なんだ」 わぁ。やっぱり無理ぃ……。鋼メンタルとか言われる私ですら、會話が続かない。 こうなったら、嫌われて婚約破棄してもらおう! 私は、そんな安易な考えで冷酷騎士に決闘を挑むのだった。 ◇ 電子書籍配信記念SS投稿しました
8 57世界最強はニヒルに笑う。~うちのマスター、ヤバ過ぎます~
數多(あまた)あるVRMMOの1つ、ビューティフル・ライク(通稱=病ゲー)。 病ゲーたる所以は、クエスト攻略、レベルの上がり難さ、ドロップ率、死亡時のアイテムロスト率、アイテム強化率の低さにある。 永遠と終わらないレベル上げ、欲しい裝備が出來ない苦痛にやる気が萎え、燃え盡き、引退するプレイヤーも少なくない。 そんな病ゲーで最強を誇ると言われるクラン:Bloodthirsty Fairy(血に飢えた妖精) そのクランとマスターであるピンクメッシュには手を出すなと!! 新人プレイヤー達は、嫌と言うほど言い聞かせられる。 敵と見なせば容赦なく、クランが潰れる瞬間まで、仲間の為、己の信念を通す為、敵を徹底的に叩きのめし排除する。例え、相手が泣き叫び許しを乞おうとも、決して逃がしはしない!! 彼女と仲間たちの廃人の廃人たる所以を面白可笑しく綴った物語です。 ゲーム用語が複數でます。詳しくない方には判り難いかと思います、その際はどうぞ感想でお知らせください。
8 113バミューダ・トリガー
學生の周りで起きた怪異事件《バミューダ》 巻き込まれた者のうち生存者は學生のみ。 そして、彼らのもとから、大切にしていた物、事件の引き金《トリガー》とされる物が失われていたのだが・・・? ある日を境に、それぞれの運命は再び怪異へと向かって進み始める。分からない事だらけのこの事件に、終息は訪れるのか? 大切な物に気づいたとき自分の個性が武器となる・・・!! ―初挑戦の新作始動―
8 53英雄様の非日常《エクストラオーディナリー》 舊)異世界から帰ってきた英雄
異世界で邪神を倒した 英雄 陣野 蒼月(じんの あつき) シスコンな彼は、妹の為に異世界で得たほとんどのものを捨てて帰った。 しかし・・・。 これはシスコンな兄とブラコンな妹とその他大勢でおくる、作者がノリと勢いで書いていく物語である! 処女作です。 ど素人なので文章力に関しては、大目にみてください。 誤字脫字があるかもしれません。 不定期更新(一週間以內)←願望 基本的に三人稱と考えて下さい。(初期は一人稱です) それでもよければゆっくりしていってください。
8 184夢見まくら
射的で何故か枕を落としてしまった兼家海斗は、その枕を使って寢るようになってから、死んだはずの幼なじみ、前橋皐月が出てくる夢ばかりを見るようになった。そして突然、彼の日常は終わりを告げる。「差し出しなさい。あなたたちは私達に搾取されるためだけに存在するんですから」絶望と後悔の先に――「……赦してくれ、皐月」――少年は一體、何を見るのか。
8 99朝起きたら女の子になってた。
ある日の朝、俺は目覚まし時計の音で目が覚めたら女の子になっていた。 「はぁ?意味わからん。ちょっと、誰か説明してくれ簡単にだ。それと俺はフリーターだぞ?ニー(ry)」 あ、シリアスは、ほとんどないです。(ないとは言ってない)笑いは・・・あると思います。あとTSコメディー作品(男の子が女の子になるやつ)です。 注意事項 ・不定期更新なんだけど…更新頻度高い方です。 ・作者の心はパン屑なので余り強く押さないで下さいね?ポロポロになっちゃいますから。 以上。では本編にて あらすじ変えました。10/9 10/8日の夜、日間ジャンル別ランキング9位にランクイン 10/13日の朝、日間ジャンル別ランキング7位にランクイン 10/13日の夜、日間ジャンル別ランキング6位にランクイン ありがとうございます。
8 70