《白雪姫の継母に転生してしまいましたが、これって悪役令嬢ものですか?》第21話 ロシアンルーレット
「お嬢様、いらっしゃるなら返事してください……!」
あの聲はミラーだ。私を“お嬢様”と呼ぶのは、ミラーのほかはバスカヴィル領の人々くらいだった。
「ミラー? 私たち地下にいるの!」
こびとに聞こえてしまわないかと、ドキドキしながら呼びかけに応える。
上でガサッと音がして、ミラーがこびとの家の床を探っているのがわかった。
「あのね、ミラー、裏口の玄関先に落としがあるの! 今はもうフタされてると思うけど」
「なるほど、お待ちください」
またガサゴソと音がする。私は祈る思いでその音に耳を澄ました。
ミラーがこびとたちに見つかりませんように……。
見つかったら、きっと無傷ではいられない……。おそらくこびとたちの方が。
しばらくして、落としの四角いり口がズズッと音を立てて開いた。
「――わっ」
り口から差し込むが目に刺さる。
ずっと暗闇にいた私たちには、そのわずかながまぶしかった。
明るさに目が慣れると、こちらを見下ろすミラーの顔が目に映る。
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「まったく、こんなところにいらっしゃるとは……。いったいどういうおつもりですか」
ミラーはエメラルドの瞳で、私たちを冷ややかに見下ろしていた。
「ごめん……。黙って宮殿を出て。でも私、どうしてもスノーホワイトの無事を確かめたかったの」
私は隣にいるスノーホワイトの肩を抱いた。
「それで、いったいどうしてこの家に?」
「森でこびとを見かけて追いかけたら、この家にスノーホワイトがいて」
ミラーに話の話をしてもわからないだろうと考え、私は短くそう説明した。
「なるほど。昨日からお嬢様を探して周囲を探索していましたが、この辺りに他に建はないようですしね。殿下がを寄せるならここでしょう」
ミラーは合理的な思考で納得してくれる。
「しかし悪いこびとに捕まって、ふたりとも地下に閉じ込められてしまったと。そういうことで合ってます?」
「いや。いろんな行き違いの結果、こうなったっていうか……」
こびとたちに悪意はなかった気がするし、今日までスノーホワイトを保護してくれていたのも事実だ。だから彼らを“悪いこびと”と言ってしまうのは違うと思った。
「あっ、それよりこびとさんたちは!?」
「家の中には誰もいませんでした。窓からのぞいて、お嬢様のストールが見えたので忍び込んだのですが……」
ミラーの手には、確かに私のストールが握られていた。
ともかく、こびとがいないなら逃げるチャンスだ。
「ミラー、縄ばしごか何か探してきてくれる!?」
「縄ばしご……。どうでしょうね。周囲を見た限り、そういったものは見當たりませんが……」
「困ったな……」
だったらミラーに引っ張り上げてもらうしかなさそうだ。
ミラーのエメラルドの瞳がキラリとった。
「それでご無事なのですか? スノーホワイト殿下は」
「うん、無事だよ。私たち。お腹が空いている以外は」
スノーホワイトに代わって私が答える。
「例のカリソン、まだ殘ってますよ?」
冗談なのか本気なのか、ミラーはそんなことを言う。
「毒で死ぬのと、暗い地下室で飢えて死ぬのと……。どっちがラクだと思います?」
「……ミラー?」
四角い窓から見下ろす彼の考えがわからなかった。
しゃがんで見下ろしていたミラーが、ふいに立ち上がった。
その顔に影が差し、ますます彼の表が読めなくなる。
「お嬢様おひとりなら助けます。ですがその代わり、スノーホワイト殿下はあなたの手で始末してください」
「え――!?」
一瞬、我が耳を疑った。
「何言ってるの……。そんなことできるわけない!」
私はスノーホワイトの肩を強く抱き寄せる。
「……っ……」
スノーホワイトはミラーをじっと見つめていた。
ふたりの視線が空中でぶつかり、見えない火花を散らす。
「どうして……そこまでボクを……」
スノーホワイトが震える聲で問いかけた。
それにミラーが答える。
「王位継承権を持つあなたが消えれば、フリオ王亡き後の雪解けの國は、ソシエお嬢様のものになる……」
――ふたりで雪解けの國を乗っ取ってやりましょう!
以前、ミラーはそう言っていた。彼はあの時の野を捨てていなかったということか。
「そして今ここでスノーホワイト殿下が死んでくれれば、私たちにとってとても都合がいいんです。あなたがここにいることは、私とソシエお嬢様、それにこびとたちしか知りませんからね。……ああ、お嬢様、こびとは私が殺しておきますのでご心配なく」
「そんな……!」
  完璧な計畫だった。ミラーは私に殺させることで、私を完全な共犯者にしようとしている。
私は首を橫に振った。
「ミラー、私は誰も殺さない……」
「殺さなければあなたも死んでしまいますよ? あなただって、何も暗いの中で死にたくはないでしょう」
白雪姫のお話に、そんなバッドエンドがあるなんて聞いてない。こんなの絶対、許されない……。
「あなたには強い魔力があります。その気になれば、彼ひとり殺すくらいのことは簡単です」
ミラーの言葉に、私は思わず手元にあるヘアブラシを見た。
「ううん。そんなこと、私はしない」
「だったらどうぞ?」
上からバラバラと何か降ってきた。
そして地下室の床に當たって砕けたのは、あのカリソンだった。
「中には食べられるものもあるでしょう。暗い中でそれを探して食べるのは、一か八かの賭けになるでしょうけれど。まあ楽しんで?」
ミラーの聲が笑っている。
「ですがさっき言った通り、私にはお嬢様を助ける心づもりがあります。死にたくなかったら殺すことです。ぜひ。ご自分の力で……」
「………………」
私は誰も殺さない。この語の、悲しい結末なんてまない。
けれどもどうすれば私たちは、ハッピーエンドにたどり著けるんだろう?
白雪姫も、魔も死なないハッピーエンドはあるんだろうか……?
考えがまとまらないでいるうちに、頭上の四角いり口は閉ざされてしまった――。
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