《悪役令嬢の影武者を嫌々演じて十年、憎っくき本に『ざまぁ』したけど? 本當の悪役はアイツだった……!?》

放課後、わたくしは急いで変する。お化粧を落とし長いブロンズヘアーを一括りに縛って深く帽子を被る。そしてボロボロの作業服をにまとい、掃除道を持って出掛けた。

影武者をしてない時は貴族院の雑用を仰せつかっている。つまりは用務員だ。

今日はお掃除以外に別の用事がある。早急に彼に會わなくてはならない。わたくしは必死で彼を探した。

「あっ、いたわ! ミーア様、これ持ってって!」

周りを気にしながら、この後トイレでめられるかもしれない彼にタオルと著替えをかに渡す。

「いつもありがとう。……用務員さん」

「いえ、とんでもございません。小耳に挾んだものですから。あ、今日はさっさと帰ってくださいね。でも一応そのお著替えは持っといて。……では!」

わたくしは足早に去って行く。せめてもの罪滅ぼしのつもり。勿論、このことはシェリーに緒よ。だって見つかったらダダじゃ済まないからね。

ミーア様は「いつもありがとう」と言った。

ええ、わたくしはいつも事前に出來る限りのフォローをしてるのだ……

***

「あーあ、ミーアったら、ずぶ濡れで笑った、笑った、ぷっ……あはははははっ!!」

帰りの馬車の中でシェリーは、ミーア様をめた話を自慢げに披する。

ミーア様、捕まったのね。お可そうに……でもわたくしも取り巻きの意見を止められないの。悪役令嬢を演じないといけないから。ゴメンね。

それにしてもこの馬鹿! 何がそんなに可笑しいの! ホント、アタマ逝かれてるわ!

わたくしは知っていた。シェリーはエリオット王子様のことは好きでもないのに、ただ皇族になって煌びやかな世界を楽しみたいだけなの。だから邪魔するオンナには容赦しない。全く最低なオンナだ。

「さあて、明日から面倒な授業はなさそうだからアンタ、影武者は當分良いわー」

「かしこまりました」

本當かな? 朝ちゃんと起きれるのかしら? 叩いてでも起こして差し上げますからね?

わたくしも用務員してた方が気が楽だし。それにお掃除しながら遠巻きにエリオット様を眺めるのが楽しみなので……いや、実はわたくしあの方に憧れてるの。とってもハンサムで彼の碧眼に見つめられたら「きゅん!」としちゃう!

ここで馬鹿の笑ってる顔を見てしまった。三日月の目が妙に腹が立つ。

コイツなんかに第三王子の嫁が勤まる訳がない。……んな訳がないわ。

そうココロの中で悪態ついてるうちに馬車はお屋敷へと到著した。エミリーはお屋敷の使用人に戻り、わたくしは馬鹿のお著替えやお化粧落としを行う。自分でしてしいけどまあ無理ですわね。お人形さんのごとくで手すら上げない。それを十年も繰り返してるから最早諦めの境地。

その後はお紅茶、ワインなど要に沿って準備するけど浴のお世話とマッサージはルーチンだ。

よいよ、老婆を介護してるのかっての!

そんな日常を終え、ようやくわたくしは疲れたカラダを引きずって敷地の小山にあるボロボロの掘っ立て小屋へ帰るのです。

こんな生活、早く抜け出したい。ついでに馬鹿を張り倒してやりたいっ!

わたくしのストレスは超絶マックスだ!

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