《悪役令嬢の影武者を嫌々演じて十年、憎っくき本に『ざまぁ』したけど? 本當の悪役はアイツだった……!?》3
「シェリー様、起きてください」
「……くかー」
「ううっ、酒臭いわ!」
馬鹿の寢室はお酒の匂いがプンプンしていた。わたくしは窓を開け、散らかった食などを片付ける。
朝から腹立つわね、コイツ。
「シェリー様? 今日は行かれるんでしょう? 起きてください!」
「う、うーん……スヤスヤ」
くそう、叩き起こしてやる。
馬鹿の頬に軽くビンタする。「おい、起きろや、このアル中が?」とココロの中で言ってみる。でも起きる気配が無い。いえ、むしろ気持ち良く安眠してる。余計に腹立つ。
「仕方ない……失禮します」
憎しみを込めてビンタを往復をした。
ピシッ! ピシッ! ピシッ! ピシッ!
「う……」
「お目覚めですかー? 朝ですよー! 今日は朝から登校するのですよねー?」
態と耳元で大聲を出す。
「う、うるさいわね……先に行っといて……くかー」
よ、よいよ、コイツだきゃー。アンタね、そんなんでこの先、皇室でやっていけるの? 自滅するわよ? まあ、その方がいい気味だけどね!
ああ、今日もやっぱり朝から影武者することになったか。まあ予想したけどね。コイツは朝起きれない。でもビンタしまくったからすっきりしたわ。
***
お晝前に目覚めた馬鹿は、いつもの様に遅れて現れた。重役出勤は日常茶飯事なのだ。という事で公爵令嬢から用務員へ戻ったわたくしは校庭の花壇に水やりをしていた。
「あの、ちょっと良いですか?」
不意に男子生徒から聲をかけられ、振り返ると確か王子様の取り巻きだった。
「何でしょう?」
「貴にお話ししたいとある方がいまして……」
「はあ?」
ある方って、もしかしてエリオット様⁈
わたくしはそのまま生徒會室へ連れて行かれた。生徒會長は王子様ですから、やっぱりエリオット様がわたくしを呼んだのです。
ヤバいっ! 超ドキドキする。一わたくしに何の用なの⁈
そこにはエリオット様と取り巻きが二人、更に……ん? 貴はミーア様⁈ なぜ生徒會でもない彼がここに⁈
わたくしは憧れの王子様と馬鹿がいつもめているミーア様を前に張と驚きで足が竦んでしまった。そんなわたくしを王子様は微笑んで出迎えてくれる。かなりの至近距離で。
ああ、相変わらずハンサムですわねぇ……などと見惚れてる場合ではない。
「やあ、用務員さん。毎日見かけるけど話したことは無かったね」
「お、王子様、恐です!」
「ははは、まあそうくならずに。椅子にかけて」
「は、はい」
「ミーアを影ながらフォローしてくれてありがとう。謝する」
「あ……」
「用務員さん、わたくしからエリオット様にご報告致しました」
「そうなのですか」
エリオット様は長い腳を組み替えて、熱い眼差しをわたくしに向けます。
「さて、本題にろう。……君はシュルケン公爵家の使用人として貴族院に派遣されている。だが実質はシェリー付きの使用人だ。そうだよね?」
「仰る通りです」
「うん、君の事は調べさせて貰った。家は伯爵の出だ。だが破産して沒落寸前だったところをシュルケン公爵が資金を注ぎ込んで助けた。君が僅か八歳の時だね」
「はい」
えーと、何でわたくしの事をお調べになってるのでしょう?
「そこから君はなぜか公爵家へ奉公する様になる。どんな事があるのか分からないが君は売られた」
「そ、それは親がお決めになられた話ですから事は存じません」
いえ、単にシェリーに似てるから影武者に使えるとでも思ったのですよ。……と言いたいけど取り敢えず知らんぷりしてみる。
「ある意味君は犠牲者だ。それなのに獻的に盡くす君は尊敬に値する。とは言え、今の境遇に納得はしてないと思うけど?」
「……はい」
まあ、そうですわね。その通りですわよ。
「そこでどうだろう? 僕の味方になってくれないか?」
「お味方⁈ 王子様の⁈」
「僕はシェリーと婚約破棄したいんだ。君に協力してしい」
な、なんと婚約破棄ですって! これはもしや、『ざまぁ』では⁈
「上手くいけば君を公爵家から解放するよう取り計らうつもりだ」
これは願ったり葉ったりのお話!
「はい! ぜひぜひ協力します!」
わたくしは即答したーー
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