《悪役令嬢の影武者を嫌々演じて十年、憎っくき本に『ざまぁ』したけど? 本當の悪役はアイツだった……!?》

今日もアイツの代わりに登校した。まあ、晝過ぎには來るでしょう。ーーと、思っていたけど晝過ぎても馬鹿は現れない。……昨晩のお話、気にしてやけ酒でも呑んで起きれないのかしら。或いはみ返しが激しくてけないとか?

そんな時に限って面倒くさい事が起こるもの。廊下を取り巻きと歩いていたら王子様とすれ違った。その背後にミーア様が居て、わたくしを見るなり何と王子様の手を握ったのです! 王子様もお澄まし顔で嫌がってる素振りもございませんよ? 更にミーア様はわたくしに「してやったり!」と言わんばかりに微笑んだのです。

これは馬鹿に対する宣戦布告なのでは⁈

そうは言ってもわたくしは婚約者。一応、揺を隠しつつ微笑しながら禮を取る。いえ、影武者ですけどね。揺したのは昨晩、馬鹿を説得するのにミーア様と王子様が相思相なのかもと言ってしまったのが、まさか本當なのかと驚いたから……

「シェリー様、ご覧になりました⁈ アイツ、微笑みましたよ? これは許されない行為ですわ!」

「そうね……」

取り巻きも興している。とてもマズい狀況だ。

「池に沈めましょう」

あ、あのね、そりゃ犯罪でしょう? シェリーもお馬鹿ですけど取り巻きも相當なお人たちですわね。

「気分が優れないから、また今度ね」

今日はアイツと代する気配がない。ここはわたくしの一存で決めてもいい筈だよね? める場にシェリー様本人がいらっしゃらないので、お楽しみは取って置きましたなどと何とでも言えるし。

「まあ、シェリー様⁈ どうなさったのですか? あんな事されて彼めないなんて?」

いや、だからわたくし影武者なのよ。

「いつもなら死刑ですわよ? シェリー様、お熱がありなのでは? 醫務室へ參りましょう!」

「……大丈夫よ」

やれやれ。何が死刑よ、どういう覚してんのよアンタたちって。

それにしても気になる。王子様はミーア様の事を協力者だと仰られた。馬鹿が如何に酷い人格なのか証明するために、態とめられる役を買って出ている……と言うのもおかしなお話。そんな危険な行為を許す王子様もどうかなさってるし、ミーア様も何でそこまでするのか理解出來ない。でも、二人が人なら考えられない事もない。何としてでも婚約破棄すると言う強い意志がそうさせているのなら説得力があるよね?

何だか王子様とミーア様のご関係を疑ってしまい、気分が本當に優れなかった。

いえ、わたくしの様な使用人が分違いも甚だしいけどね。でも、この件はもうし調べる必要があるわ。馬鹿を説得するためにも……

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