《悪役令嬢の影武者を嫌々演じて十年、憎っくき本に『ざまぁ』したけど? 本當の悪役はアイツだった……!?》27

今日で何回目の訪問だろうか。もう半年が経つ。

今、僕は馬車に乗って通い慣れた公爵邸へと向かっている。そこで付き人のバトラーから思いもよらない報を手にれた。

「お坊ちゃん、シェリー様に似た使用人の元が分かりました」

「おお、そうか!」

それは吉報だ。彼の事が知りたい。僕はシェリーに會いに行ってるんじゃない。あの使用人を一目見るために通ってるんだ。ああ、こんなにワクワクしたのは久しぶりだぞ。早く知りたい! 知りたーいっ!

「えー、実はシュルケン公爵の遠い親戚でございまして、地方の小さな領地を治めている伯爵家のご令嬢でした」

「何だって? 伯爵だと?」

「はい。間違いありません」

「どうして伯爵令嬢が使用人をやってるんだ⁈」

「どうやら財政が困窮されていて、その資金をシュルケン公爵家が肩代わりしたとか。……正に沒落寸前だったのを救われた様です。で、その借財のカタに公爵家へ売られたのではないかと思われます。まあ、シェリー様と同い年なのでお相手をなさってるのでしょう」

「そんな風ではなかったけどな。彼は単なる使用人だった。なあ、彼の名を教えてくれ」

「ポピー・パーキーです」

ポピーか。あの慎ましさは伯爵家で培われたものだったんだ。今日、逢えれば良いな。

だが、彼は僕を避けている様だ。何故か分からないけど、たぶんシェリーに何か言われたのだろうな。さりげなく彼の話題をすると途端に嫌な顔をするから、きっとそうに違いない。

「お坊ちゃん?」

「どうした?」

「あの使用人の事より、本日はシェリー様とダンスをご一緒されるとか?」

「うん、そうだったね。あまり気が進まないが」

「シェリー様のダンスは素晴らしいと評判です。是非、彼の素敵な一面をご覧になられて下さい」

「あ、ああ……」

ダンスなどどうでもよい。と、言いかけてやめた。殘念だが婚約者はシェリーなのだ。ポピーではない。そっくりな二人は格も立場もかけ離れている。とても殘念だ。だが、僕の気持ちは変えられない。

やがて公爵邸に到著した。僕は庭園を眺めながらかにポピーを探す。時々、花を摘む姿が見られたから。だがその期待も虛しく玄関口までたどり著いてしまった。

今日も逢えないのかな……

そんながっかりした気分のまま、ハイテンションのシェリーがお迎えしてくれる。

「エリオット様ー! 今日はわたくしとダンスしましょうね! 新しい技を魅せてやるからー!」

「それは楽しみだな」

「なーに? お元気ないですよー?」

いやいや、元気なわけないだろ。だがまあ、我慢するしかない。シェリーは婚約者だからな。きっと評判のダンスで彼の良いところを発見出來るかもしれない。

ポピーの事を想いながらも、僕は自分に無理をした。シェリーを好きにならなければ!

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