《悪役令嬢の影武者を嫌々演じて十年、憎っくき本に『ざまぁ』したけど? 本當の悪役はアイツだった……!?》52
十年前、ポピーを伯爵家から奪い取った母はシェリーの影武者を時々演じさせていた。主に公的な場面……つまりダンス、宮廷お茶會、貴族院學試験、定例の學力照査などだ。そして彼は常に優秀な績を殘している。
この事を知ってるのは首謀者である母と指示に従ったライラ、それに途中からエミリーも加わっている。
しかし指示に従っていただけかも知れないが貴族院中等部から常に院へ同行していたエミリーからも詳しく聞く必要がある。彼は近々辭めるらしいので急がなくてはならない。
……我が妹よ。
兄でありながらお前の苦しみに気づいてやれなかった事を悔やむ。王子に脅され公爵家を守る為、婚約破棄を事前に知りつつも彼の指示に従わざるをえなかった。本當にすまない。
これからはお前に寄り添っていきたいと思う。
さて、母はライラと荷を整理していた。出て行く準備を始めたのだろう。私は構わずお手伝いしていたエミリーを呼んだ。
「君からも事を聞いときたいんでね」
「ジャック様、私はシェリー様のお守りをしていたに過ぎません。院では彼の気分に合わせポピー様のヘアーメイクなど施してました」
「私はシェリーがどう言った心境で過ごしていたのかを知りたいんだ。君を責める気はない。じた事を話してしい」
「そう言われましても……」
エミリーは黙り込んでしまった。し話を変えてみよう。
「君は彼のお守りと言うよりお目付役だったのではないのか? お母様の指示を従わす為に」
「はい、中等部の頃はそうでした。でもそこからはご自分の意志で影武者を指示されていました。私から指示した事はございません」
「こう推測出來る。シェリーはポピーほど優秀ではない。普段の授業にもついて行かれなくなり、イメージを保つ為に仕方なくポピーと代していた。違うか?」
「仰る通りです。さしあたりのない授業と休憩時間、放課後を楽しんでおられました」
「代してる時は何をしていたんだ?」
「最初は私がお相手しながらお勉強したりしてましたが、段々とお晝寢する様になり……」
「ワインはいつから飲み始めた?」
「高等部にられて暫く経った頃でした。何度もお止めしましたが、私の目を盜んで」
「何故、酒を飲む様になったんだ?」
「恐らく……自分がポピー様のような優秀さをアピールできない悔しさと、王子様が冷たくなされたのが原因かと思います」
「それでシェリーは蔵からワインを盜み、院で飲んでは寢て、飲んでは寢てと自墮落な生活を送る様になった。そして八つ當たりの如く王子に纏わり付く生徒をめた。……こういう話か?」
「はい。あ、それとポピー様にもきつく當たってました。私はお二人の仲を取り持つのに苦労しましたから」
「それは申し訳なかったな」
エミリーの証言が本當かどうかはシェリーに聞けば分かる話だ。雙方の食い違いがあれば、彼が何らかの「鍵」を握っている可能がある。
父は影武者に攜わっていた彼をライラの様に解雇しようとしない。むしろ引き止めている。何故ならシェリーが懐いているからだ。にも関わらず急に辭めるとはどうも不可解である。
それに、そもそも王子は何故見破ったのか? 敢えて聞かなかったのは公爵邸に何かあると踏んでの事だった。
私は意を決して部屋に籠って出てこようとしないシェリーを訪ねたーー
note+ノベルバ+アルファポリス+電子書籍でエッセイ、小説を収益化しつつ小説家を目指す日記
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