※ジェラール視點

「ブリスと申す。俺が罪人アニエスの監視をする様、王太子から仰せつかった。この書簡を確かめて頂きたい」

かなり不躾な男だと思った。

先ずは偉そうだ。一応これでも私は王族なんだが……。まあ兄の命とあらば致し方ない。

納得いかない気持ちを隠しつつ、書簡へ目を通す。

「ん？　任期は一年と書かれているが？」

「ああ一応ね。正確には婚されるまでだ」

「兄とカリーヌのか？」

「実は々ありましてね」

要約すると婚約破棄騒の後、オードラン公爵が婚約を辭退したらしい。カリーヌではとても王妃は務まらない。アニエスの様な才ではないとの理由だった。それを聞いた陛下は一旦婚約を白紙になされたが、食い下がる兄に一年の猶予を與えたと言う。一年でカリーヌを王族に相応しい令嬢に教育すると約束させたのだ。

い頃のカリーヌしか知らないが、長年英才教育をけてきたアニエスとは比較にならないだろう。ましてやたった一年とは……。

「その間、アニエスを見張るのはどんな意味があるのだ？」

「さあー、どうせお嬢様の願いなんでしょう」

「カリーヌのか、ふーん」

なるほど。正式に決まった訳ではないからアニエスを警戒してるんだな。これは何かある。婚約破棄の原因にからくりがあるかもしれない。

「ところで俺の住まいとデスクを頂きたい」

「あ、ああ。住まいは來賓の屋敷を準備しよう。デスクは個室がいいか？　あまりスペースはないが」

「気遣い無用。共同スペースで結構です。それより囚人島へ來たからには監獄など見せて貰えればありがたい」

「近いうちに案するよ」

ほう。この男はアニエスの監視より島に興味がある様だ。兄の指示か？　だとしたら私の弱みでも摑むつもりなのか。全く油斷のならないヤツだ。

「ところであの罪人は武道を嗜んでいる。自由に行させるのは良いが暴れたら危険だと思うが？」

「彼が武道だと？」

「俺は特殊部隊の出。手加減したが中々の腕前と見える」

「待て、彼と手合わせでもしたのか？」

「ちょっとめそうになったんでね。……殿下、あの罪人は間違いなく悪・役・令・嬢・ですよ」

ま、またしてもその言葉……。アニエス、君はそんなに危ないなのか？　むむむっ、モヤモヤする。會いたい。會って確かめてみたい。いや、しかし……彼は罪人だ。會ったところで何を話して良いのか思いつかない。やはり會わない方がいいな。彼は島から出ること以外、行に制限を付けてないから、うっかり街でばったりってこともありえるぞ。気をつけよう。彼の行を把握しとかなければ！

「殿下？」

「うん？……あ、ああ。デスクだな。し待っててくれ」

今は一人になりたい。私は即座と事務に指示して執務室へ閉じこもった。