「ここがペチェア島の繁華街です！」

「わあーー！」

古い街並みと自然が調和した、どこか懐かしく思えるノスタルジーな景にココロときめいた。道幅は狹くレトロな建が並んでいる。山や海も視野にり、まるで別荘地へ來た気分だ。

「まあ、王都の様なモダンな雰囲気じゃないけど一応生活必需品は何でも揃ってます」

「いい！　素敵な街並みよ！」

「そ、そお？　そう言って頂けると嬉しいです」

だって雰囲気もそうだけど、ここはお洋服屋さん、お菓子屋さん、八百屋さん、お魚屋さん、お風呂屋さん……何でもあるよ！

それに焼いたお魚のいい匂いがする。

「大衆食堂？」

「アニエス様、ひょっとしてお腹空きました？」

「う、うん」

そう言えば朝から何も口にしていなかった。と言うか、大衆食堂ってなに？　お食事するホールよね？

「りましょうか？」

「あ、でも……」

「どうしました？」

「わたくし無一文でした。拘束されてそのまま船に乗せられたから」

「心配いりません。ここのお代は経費から出しますよ。それにアニエス様には王都から月々お給金がります。お金のことはお気になさらず」

「え、そうなの？　罪人なのに？」

「特別待遇ですからね」

いいのかな……？　何もしないのにお給金貰えるなんて聞いてなかったよ。でもお腹空いた。まあ難しいことは後で考えようか。

「コリンヌも行こうよ」

「わ、私もですか？　バルナバ様？」

「大丈夫だよ。だってベルティーユが來ないのがいけないだから」

「……は、はあ」

わたくしは戸うコリンヌの手を握って、バルナバさんと大衆食堂とやらへった。

「いらっしゃい！　三名様ですねー！」

こじんまりとした食堂にはカウンターとテーブルがあり、ほぼ満席になっている。この店には味しい匂いが充満していた。わたくしは人生初の食堂に心が躍る。食事と言えばグレート・ホールやダイニングルームだったから。

「まあまあ、綺麗なお嬢様だねえ！　バルナバ、紹介しな！　まさかアンタの？」

「お、將さん。違いますよ。この方は……」

彼は紹介を躊躇した。「罪人です！」とは言い難い様だ。でもここは囚人の島。何も言わず將は察したみたいだ。

「あら、アンタの彼じゃないなら訳・あ・り・のお嬢様なんだね」

「まあ、そう言うこと」

「お名前は？」

「アニエスです」

「そう。アニエス、何が食べたい？」

うーん、迷っちゃうなあ。全部味しそうだよー。

「お任せしますわ」

「あいよー！　じゃ、自慢のスープから出しちゃうからね！」

「はい！」

ガヤガヤと賑やかで活気のある食堂だ。人の出りも激しく將は忙しそうに働いてる。そんな様子を眺めているとテーブルにスープが並べられた。

「あ、味しそう！」

「アニエス様、遠慮なく食べてくださいね。ほらコリンヌも」

「は、はい」

も～うたまりませんわ。

わたくしは早速スープを口にする。

「こ、これは！？」

「いかがしました？」

「味しい！　凄く味しいよ！」

「そうですか。気にって良かったです」

何これ？　初めての味わい。おダシから香辛料から何もかも今まで食したことのないスープだわ。お魚のもお野菜も上手く溶け込んでいる。こんな味しいもの毎日食べたいよ！

わたくしは夢中で口にれた。食べながら思ったことがある。

……自分でも作れないかしら？