《島流しされた悪役令嬢は、ゆるい監視の元で自由を満喫します♪》10. 監獄
※ブリス視點
「これが噂に聞くジョリー王國一番の監獄か」
ペチェア島の東に古めかしい建築が聳え立つ。幾つもの鉄格子で囲われ、監視塔からは看守が警戒にあたる姿が見える。どこか威厳をじる建だ。
「まるで要塞だな、ビソン次」
「中へ案致しましょう」
「うむ」
ふふん、俺の任務は悪役令嬢のお守りじゃない。そんなつまらん任務でこんな島へ一年もおられるか。ったく、あんなのはチャラ男に任せればよい。せいぜい週一回くらい生存確認すれば良いだろう。
それにしても、このビソンとやら。噂では王宮の吏でかなりのやり手だったとか。何故ここへ赴任してるんだ?
「時にビソン次。貴方ほどのお人がどうしてこの島に?」
「何を急に? 私のこと調べになられたのですか? まあ、隠すつもりはございませんが」
彼は微笑しつつも答えない。
よし、もうし突っ込んでやろう。
「ジェラール殿下が赴任されて二年、大きな失態もなく治めているのは貴方が居たからこそだと思っ……」
「──いえ、私はただ殿下の命に従ってるだけです」
は、話を切られた。くそ、お前を褒めようとしたのにノリが悪い奴だ。ふん!
やがて建の中へって行く。廊下の左右に幾つもの部屋があり、その一つ一つを見せてもらった。
「ここが囚人の働いてる作業場です。適正を判斷してさまざまな職種を用意してます」
「ふーん。木工に手蕓、調理ねえ。あ、屋外には畑もあるのか。園蕓と建築だな」
「ええ、彼らはいずれ出獄します。この島で生きていくための準備をしてるんです」
「彼らは言わば模範刑者だ。それより獨房を見せてくれないか?」
「構いませんが……何か目的がおありでは?」
「いやいや、どう管理されてるのか見たいのだ」
実は重要な任務が……まあいい。あの方が元気かどうか確かめねば。
彼に連れられ地下へ降りて行く。ここは薄暗く、じめじめしてる。獨房って雰囲気をじる。コツンコツンと看守の後ろを歩きながら獨房を覗き込んでみた。その姿は怪しいかもしれないが、特定の人を探してるとは思わないだろう。
通路の突き當たりまで來る。目の前には特別な獨房があった。
「この中はお見せ出來ません」
「そうか……特別な方でも収容されてるんだな」
ふん、警戒してるな。いつの間にか看守が増えてる。逃げ道も塞いでる。流石は切れ者のビソンだ。勘づいたか。
「貴方の目的はこの囚人ですか? それとも今回は下見ですか? 私も貴方のことは調べています。王太子の配下の様で実は別の方とも繋がっている」
こ、こいつ、どこまで知ってるのだ!?
「これは參ったね。この部屋の主が元気かどうか確かめる様、ある方に命じられただけだ。問題を起こすつもりはない」
じりじりと詰め寄る看守を彼は手を上げて制した。
「訳ありですね。正式に話を通せばよいものの。この囚人は元気ですよ。一生、預からせていただきますから安心を」
むむ、完璧だ。監獄の警備も、この男も勘が鋭い。
「この二年間、ペチェア島が平和なのは貴方が居るからか? それとも殿……」
「──ええ、全ては殿下の手腕ですね。監獄や港の警備制を強化したのも殿下ですから」
ま、また話を切られた。くそ、腹が立つ。あくまでも殿下の手柄だと言うのか? にわかに信じがたいな。だが、もしそうならばケヴィン様がジェラール様を警戒するのが分かる。優秀な彼を王都からここへ閉じ込めなければ安心出來ないのだろう。それは、あの方にも同じことが言えるが……。
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