《島流しされた悪役令嬢は、ゆるい監視の元で自由を満喫します♪》17. 手蕓店

※ブリス視點

罪人のアニエスと使用人のコリンヌ、それに役人だが、もはや使用人と化してるバルナバは大衆食堂で働いたあと、手蕓店の奧でお喋りしながらセーターを編んでいた。バルナバは疲れた様で途中から橫になっている。耳を澄ますと「くかー」と聞こえた。

おい、お前は一応、勤務中だろ。何寢てんだ?

……まあ、仕方ないか。早朝から働き詰めだったことは認めよう。

それにコイツ、アニエスに盡くしてる様で、実はコリンヌが好きなんだろうな。分かりやすい奴だ。いつも目配りしてる。ふん、は自由だ。好きにすればいいさ。

そして、アニエスは殿下に……なのか? 孤児院での様子を見てるとそんな気がしてならない。いや、まだ確信まで至らないな。殿下も殿下だ。シャイ過ぎて何考えてるのかイマイチ分からんし。

「キャッハハハハハハ……」

奧から笑い聲が聞こえてくる。

子はお喋りが好きだ。店主は元囚人。監獄で洋裁を覚え、出獄してからお店を開いてる。資金は島の財政らしい。全く、殿下は変わった仁だ。

「あの、監視殿」

うるさいので手蕓店の店先でキセルをふかしていたら、アニエスに聲をかけられた。

「何だ?」

「これ、良かったらどうぞ」

は手編みのセーターを持っていた。ブラウンの糸で丁寧に編み込んでいる。センスも良く、一見売りにも見える代だ。

「お前が編んだのか?」

「はい!」

そんな笑顔を見せるな。どう言うつもりなんだ? 俺はどんな態度をすればいい?……困るじゃないか。

「そろそろ寒くなる。丁度いいから貰っとく」

“ありがとう”とは決して言わなかった。俺は監視だ。罪人からの貢はよくないが、これで優しく接するほど仕事に甘くはない。

ふん、持つのも面倒だから著てやる。

上著をいでサッと袖を通す。アニエスはそんな俺の一挙手一投足に注目している。

おいおい、そんなに嬉しそうに見つめるなよ。

「わあー、お似合いです!」

いつの間にかコリンヌや店主までもが現れ「キャーキャー」騒いでる。

「そ、そうか。う……ん。まあまあだな」

いかん。恥ずかしい。自慢じゃないが今までにキャーキャー言われたことがない。この雰囲気は超苦手だ。

「あ、用事を思い出した。俺は城へ戻る」

その場から逃げる様にサッと手蕓店を後にした。

俺としたことが、これくらいのハプニングで揺するなんて。いや、待てよ。これって孤児院で殿下がとった行に似てるな。多分あの時、アニエスと目が合って恥ずかしくなって……。

「確かめてやろう」

俺は城へ急いだ──

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