※バルナバ視點

「あ、アニエス様、おかえりなさーい！」

ベルティーユが付き添い、しいドレス姿の彼が宮殿から戻って來た。何の用だったのか僕も分からないけど、殿下のことだ。きっと何事もなく無事に終わったのだろう。

でも付き添いはベルティーユだけではない。次殿の配下や見知らぬ人たちも居る。コリンヌと顔を見合わせ、僕たちは違和をじていた。

「あの……ベルティーユ？」

「バルナバ様、コリンヌ……アニエス様の冤罪がお認め頂けました。これで晴れて自由のとなられたのです」

「そ、それはようございました！」

「アニエス様、おめでとうございます！」

だけど彼の表は固い。

「ありがとう……」

そう言ってアニエス様は涙を流した。余程嬉しいのだろう。──と、思ったのは早とちりだと気がついた。

「わーーっ！」

アニエス様はコリンヌを抱きしめた。突然、抱かれた彼は、ただ激してるものだと勘違いしてる様だ。僕は“自由の”が何を意味するのか悟ってしまった。それは、アニエス様とのお・別・れ・なのだ。

「ぐすん……アニエス様、どうかご達者で」

その言葉にコリンヌがようやく理解した。

「い、いやだ！　いやだ！　アニエス様と離れ離れになるなんて、いやだよ！　うわーーんっ！」

「コリンヌ……これはめでたいことなんだよ」

僕は彼の背中をりながら優しく諭す。でも涙が溢れてきた。ふと、ベルティーユも涙を指で拭う姿が映る。皆、突然のお別れが辛いのだ。

「落ち著いたら島に行くね。ジェラール様がお約束してくれたから……」

「きっとですよ！　きっと……！」

コリンヌにとってアニエス様は特別な存在だったんだと、改めて思った。黙々と働き、孤獨がちな彼にとってココロの開ける唯一の方だったのだ。ベルティーユもそうだ。この三ヶ月で彼らは変わった。明るくなった。楽しい時間をともに過ごしたからだろう。

そして、王太子になられた殿下も島へは戻れない。それも分かっている。恐らく次殿も王都へ殘るものと推測する。あの島は、僕の故郷は、自分が守るしかないのだと強く決意した。

「ところで、バルナバ様」

次殿の配下が後方で、凄く人なを連れていることに気がついた。だけど、何か様子が変だ。不貞腐れている。というか……。

「アニエス様にそっくりだ！」

思わず口に出してしまった。はぶてたアニエス様。そんな印象だ。もしかして、先日牧場でんだあのなのか……だとすると彼はアニエス様の妹。

「カリーヌです。監獄へ収容してください」

「ええっ！？」

「ふんっ！」

と、妹はソッポを向いた。

彼との出會いが僕の人生で最も厄介な出來ごとになるなんて、この時はまだ分かっていなかった……。