《島流しされた悪役令嬢は、ゆるい監視の元で自由を満喫します♪》94. 掌握

※ジェラール視點

「ブリスの確保、ご苦労だったな。バルナバ」

やつは必ずあの屋敷に立ち寄ると、予め警護の者を潛させていた。その場で取り押さえなかったのはバルナバの采配。アニエスらにお別れする機會を與えたのだ。私には分からない大きな絆が皆にあるのだろう。ちょっと羨ましいが……。

「いいえっ、僕はただお城に付き添っただけです」

「そ、そうか。まあ良い。あとはビソンの取り調べを待つのみだな」

「殿下、あいつの処分はどうなさるおつもりで?」

そのことだ。私の一存では何とも。だから急ぎ書簡を陛下に送った。その返答次第では……。

「普通なら極刑だ。大々的にな。だが、結果的にルーク様が陛下となり私が王太子となったのだ。彼が一人で歴史を変えた。勿論、これまでの犯罪は許されることではないが……」

バルナバの表は暗い。

「何とか……いえ、僕が口出しできる話じゃない」

「取り調べにはかなりの時間を要する。その間に考しよう。ところで……カリーヌだが」

のことも気になる。あれから大部屋へ移している。さぞかし大人しくなっただろう。いや、もしかしたら神的に參ってるのかもしれない。暴な策だったか? と心配していたのだ。

「そ、それがですね」

「ん? やはりキツかったか?」

「いえ、カリーヌは三階一號室を掌握しました」

「……は?」

「シェリーはじめ、八名のボスになったのです」

「……は?」

「実は彼はアニエス様に匹敵するくらい武の達人だったのです」

「……は?」

「殿下、知らなかったんですかあ!」

し、知らん。私は十歳の時に王都から離れたんだ。その時はアニエスしか武を嗜んでいなかった筈。

「ああっ、我儘も一段と磨きがかかって……これでは更生どころじゃないですう!」

「いや待て、あのボスはどうした? リンダだ」

シェリーはあくまでも一號室のサブリーダー。あの部屋は三階を仕切ってる階ボスの重鎮、リンダが居る。だからあの部屋にしたんだ。

「リンダは先日、看守を毆って気絶させたので獨房へれてます」

「直ぐに部屋へ戻せ。でないとカリーヌが三階全てを掌握するかもしれない。その方がまずい!」

室のリーダー格がれ替わるのはよっぽどの出來ごとだ。そして必ず部屋同士で爭いが起こる。均等に保たれてるチカラ関係があってこそ囚人棟の平和がり立っているのだ。

バルナバによると「キモ~い」とキレたカリーヌは看守の目を盜んで八人を毆り倒したらしい。今では部屋でリーダーの席へふんぞり返って座っているという。それは周りの囚人の態度や顔のアザが語っていた。

ありえない。とんでもないオンナだ……。

「かしこまりました。僕も見てはないですけどカリーヌがあんなに強いとは思いませんでした。でもリンダには敵わないでしょうね。ああ、彼が心配です。大怪我しなければ良いですが……」

囚人同士の喧嘩はご法度だ。だが、秩序のためにはある程度黙認するしかない。リンダには條件を付けて手加減してもらおう。

「これ以上、カリーヌを臺頭させてはならない」

萬が一でも三階のボスになったら、各階ボスへの影響が出る。囚人棟の覇権をかけて大抗爭に発展するだろう。あの総ボスのお出ましだけは避けたい。

何としてもリンダに抑えて貰わないと……。

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