《島流しされた悪役令嬢は、ゆるい監視の元で自由を満喫します♪》103. 驚愕
※バルナバ視點
「リンダ、ついでに貴も相手してあげる。二人でかかって來なさい」
部屋の奧に広々とした空間があるとは思わなかった。ここはグレース様専用の道場らしい。そして各室のリーダー二十名が見守る中、戦いの火蓋が切られようとした。
僕は囚人の闘を黙認するのか……と、罪悪に掻き立てられたが、これはあくまでも試合だと自に言い聞かせる。だってグレース様は指導員だ。あくまでも武の訓練をしてるのに変わりない。
「二人がかりだと? どうしますか、カリーヌ様?」
「そう言うならいいよー。でも、その前に……」
彼は審判役のライラの前に立つ。
「何だ? お前の相手はグレース様だぞ」
「アンタ、さっきから生意気なのよ!」
ガキィィーーッ!
カリーヌの見事な正拳がライラの顔面を直撃する。不意を突かれたとはいえ「ぐわっ」と、あっけなく彼はぶっ倒れた。その姿に一同度肝を抜かれる。
「あら……あのライラを一発で。これは面白いね」
グレース様だけは楽しんでいた。久々の強敵にココロ踴ってるか、軽くステップを踏む。
「いっくよおーー!」
「おおーーーーっ!」
二人がかりでグレース様に立ち向かった。でも彼は余裕で攻撃を躱す。そして……。
「先ずはリンダ。貴は脇が甘いのよ」
振り向きざまに回し蹴りを炸裂する。そのカカトはリンダの脇腹に突き刺さり「があ……」と、その場で彼は固まった。
「はい!」
と、手刀でリンダの首を叩いて沈める。
「ふ、ふーん。やるわね……」
「貴の欠點も直ってない様ね。カリーヌ」
「何のことかしら?」
「まあ隨分と太っちゃって。パワーアップしてるけどきは鈍くなってるわ。それじゃアニエスに一生敵わないよ?」
「な、何ですって!? アンタ何者なのよ!」
かぁーっとなったカリーヌはなりふり構わず攻撃を繰り出す。でもグレース様の防は完璧だ。そして一瞬の隙を突いて攻撃に転じた。
「はあーーっ!」
彼の飛び蹴りがカリーヌの首元を捉える。ゴキッっと首が折れたのかと思うくらい鈍い音がした。
い、いかん、死ぬかもしれない!
「痛ったあぁぁ。やったわねえ……」
天井に顔を向けながら目線だけはグレース様を睨みつけるカリーヌは、まだやる気満々だ。
「貴が躱したわけじゃないから。私が手加減してあげたのよ」
「手加減? そんなの無用よっ! このバケモノが!」
「ふふふ、貴の欠點は冷靜になれないこと」
それから二人の格闘は暫く続いた。でも、どう見てもカリーヌは劣勢だ。このままだとマズい予がする。彼は失神するまでやるつもりだ。そりゃあ叩きのめされて改心してしい。だけどこれ以上、傷だらけになるのは忍びない……。
ああ、カリーヌ!
審判が倒れた今、この試合を止められるのは僕しかいないんだ。どこかで、タイミング見て止めなければ……い、いや戦闘に巻き込まれちゃうよ。怖過ぎるだろっ。
僕が躊躇してるその時だった。「バキィィ」っと鈍い音が道場に鳴り響く。カリーヌが捨ての頭突きを喰らわしたのだ。その衝撃でガルグイユの仮面が割れて床へ落ちていった。
「はぁはぁはぁはぁ……出たな、バケモノめ。思い出したよお……王様」
グレース様の顔面がわになる。誰も知らないその素顔を見て皆が驚愕した──
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