《島流しされた悪役令嬢は、ゆるい監視の元で自由を満喫します♪》104. 悪役令嬢

※バルナバ視點

「ひっ……」

リーダーたちから小さな悲鳴の聲が聞こえる。

醜く腫れ上がり、無數の傷跡が殘る痛々しいグレース様のご尊顔に僕は言葉が出なかった。だけど彼が仮面を被ってる理由はこれだったのかと、分かった気がした。

「久しぶりね、カリーヌ」

「ふん。どこへ消えたかと思ってたら」

「島流しになったことは知ってるでしょう」

「まあね。でもまさか監獄に居たなんてね」

「十年ぶりに會えて嬉しいわ」

「あの頃より相當強くなってるでしょ?」

「あら、手加減してるって言いましたけど?」

「くっ……だからあ、そんなの無用だってばーー!」

カリーヌはふらついた足で正面から突撃していく。

「仕方ないわね」

あ、いかん。もう勝負あった! やめろーー!

『ゴキィィィィィーーッ!!』

「うげえぇぇっ!」

グレース様の回し蹴りが見事に決まった。カリーヌの鳩尾みぞおちに食い込んでいる。カッっと見開いた彼の目からは、うっすら悔し涙が滲んでいた。

そして、そのまま崩れ落ちていく──

數日後、僕はカリーヌの怪我が癒えて元気になったことを報告した。

「殿下、囚人棟の制を変えることにしました」

「そうか。……で?」

「グレース様とご相談して不在だった一階のボスにカリーヌを。二階はリンダ、三階にライラを配置しました。階の抗爭もなくなった様で良かったです」

「それでカリーヌは大人しく過ごしてるのか?」

「はい。連日、グレース様の道場に通って腕を磨いてます。彼は王様の言うことは素直に聞く様ですよ。流石は元師匠ですね」

「更生は我が姉に任せば上手くいきそうだな」

「はい。あ、それと昨日……」

「うん、どうした?」

「僕の注意も足りなかったのですが、ブリスの護送中にカリーヌと鉢合わせしちゃいまして……」

「な、なに!?」

ブリスを連れて獨房へ向かう途中のことだ。廊下の窓から中庭でランニングしてるカリーヌの姿を見てしまった。

「あ……」

一瞬、マズいと思ったけど彼は「ふふん」と、鼻で笑ってやり過ごそうとした。でも彼の方が気づき、凄い勢いで突進して來た。

「ブリスーー! よくも私の人生を無茶苦茶にしたわねえ! 許さないからあ!」

「お、おい、カリーヌ、まあ落ち著け」

「うるさいバルナバ! 何でケヴィンを殺したのよ! アンタのせいで王妃になれなかったじゃない!」

慌てて警護の者が割ってる。ブリスは後ろ手を縄で括られ無防備なのだ。

「ふん。相変わらずおめでたいオンナだ」

「なっ!? どう言う意味よお?」

「死ぬ前に教えといてやる。ケヴィンはお前を捨てようとした。俺に殺すか島で監しろと命じたんだ。まあ、殺すのは面倒だからやらなかったがな」

「う、うそよ。馬鹿なこと言わないで!」

「本當の話だ」

「信じるものですか!」

「お前はどっちみち捨てられる運命だった。殿下は知ってるぞ……いつか聞いてみるがいい。じゃあな。悪役令嬢さん」

「う そ だ」

途方に暮れる彼を置いてブリスと獨房へ向かった。僕は途中、気になって振り返ってみたら……。

「うわーーーーーーん!」

と、カリーヌはその場で泣き崩れていた。

「あ、あのな。何も私の名を出さなくても……凄く巻き込まれた気がしてならないが?」

「殿下、彼はグレース様の元で改心しつつあります。どうか丁寧なご説明をなさってくださいね」

「う、うむ……そうだな。バルナバ、すまないが……」

「はいはい、『一人にしてくれ』ですね。では頼みましたよー!」

殿下はもう王都へ帰らないといけない。僕がしっかりしなきゃって思うけど、これが最後の甘えだから許してください。……ね!

    人が読んでいる<島流しされた悪役令嬢は、ゆるい監視の元で自由を満喫します♪>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください