《婚約破棄されたら高嶺の皇子様に囲い込まれています!?》1.逆ギレ婚約破棄! からの、皇子殿下!?
「おまえみたいな生意気なとは、婚約破棄してやる!」
「ありがとうございます!!」
わたくしは思わず、混じりけのない本音を口かららせていた。
野次馬から「おおおっ!?」とどよめきが上がる。
晝休み、王立學園の中庭は分問わず學生であふれかえっていて、言い爭いを始めたわたくし達はかなり目立っていた。
婚約者のレオナールは、完全に勝利宣言したかのような顔だった。それもそのはず、昨日まで「婚約破棄」はわたくしにとって、殺し文句のような言葉だったのだから。
レオナール=イーヴ=デュジャルダンは、侯爵家の跡取り息子だ。金茶髪の髪に明るい茶の目の彼は、土人形ゴーレムの作なんて華々しい得意魔法も持っている。お灑落で社的で友人が多くて、學業績は概ね優。
まあぱっと見では、誰もが彼を欠點のない好青年とでも思うのだろう。
一方、わたくしことシャリーアンナ=リュシー=ラグランジュは、男爵令嬢という名の実質ほぼ平民。地味カラーの黒髪な上、目つきがよくないと言われ、瓶底眼鏡で隠していた。たいした魔法の才能もなく、學業績は大どれも中の中。ついでに言うと友関係にも乏しい。
Advertisement
誰がどの基準でどう見たって、レオナールが格上、わたくしは格下――幸運にも目をかけていただいた雑魚としては、伏して拝み奴隷のように従うしかない。伝統を重んじるこの國では特に、格上が格下をいいように扱うのは當然のこととして認められていた。
でも今のわたくしは、上下云々の前に、レオナールと別れられるという魅力にあらがえない。向こうがもういらないと捨ててくれるなら、願ったり葉ったりすぎる。
(だって命を賭けるほどまでは、侯爵夫人になりたいと思えないし……この先大変だろうけど、むしろこれでよかったのかも)
レオナールの表が困に変わっていくけれど、常時見下していたわたくしにこんな顔をする彼なんて、たぶん今日初めて見たのではなかろうか。
「え……? 今なんて……?」
「ありがたく婚約破棄の申し出をけれます、と言いました」
「いや、それはおかしい。おまえのような何の取り柄もないが、侯爵家――いや、オレという男と別れたいなんて思うはずが――」
Advertisement
確かにし前までは、「わたくしの婚約者って、人前でばかにしてくるし、遊び相手との関係を見せつけてくるけど、侯爵家は逆らえない相手だし仕方ないわよね……」と思っていた。
わたくしは誰からも忘れられ、影のように生きていきたかった。下手に強者の機嫌を損なって針のむしろになるより、適度にいびられながらも基本は無視されるような、お飾りの妻で良いと考えていた。
けれど昨日、遊び相手の一人に「真実ののため」と階段から突き落とされ、人生観がちょっと変わった。
弱きもの、かざること人生のジャスティス――ただし命の危機を除く。
だから今日、晝休みにわざわざ元兇レオナールを探して呼び止め、抗議することにしたのだ。
『あなたが婚約者わたくしを気にらないのは仕方ありませんが、遊び相手をけしかけて命を狙うのは、さすがにやめていただけませんか――』
その結果が、レオナールの逆ギレ婚約破棄宣言である。
まったく、謝しかない。
そちらから言ってくれるなら、わたくしが侯爵家に不義理したわけではないし、しかももうの危険を気にせずに済む。いいことづくめじゃないですか!
……と言っても侯爵家の援助は喪失するので、今後新たな人生プランを考えねばならないわけですが。クラス降格はきっと避けられないだろうとして、學園追放まで行かないといいな。
お父様、お母様、親不孝な娘をお許しください。でもきっとお二人なら、「そっかあ……仕方ないね……」って言ってくれるって信じています。
まあ、難しいことは後で考えよう。
けれどレオナールの目的は、わたくしに謝罪をさせることだった。わたくしが婚約破棄に謝して諾することは想定外かつ、けれがたいことだったらしい。
「ま、待て。まさかオレの冗談を本気にしたのか? 頭の悪いおまえにもわかるように言ってやるが、オレはただおまえが生意気だと言っただけで、別に本気で別れるとは――」
円満に婚約破棄してもらえると喜んだわたくしだったが、さすがにそう人生甘くはない。レオナールは見下し相手のわたくしに欠片も好意なんてないでしょうに、お手軽サンドバッグに逃げられるのはしゃくに障るということなのかしら……。
しかし、レオナールがそれ以上何か続ける前に、第三者の爽やかな聲が聞こえてきた。
「ん? でも今確かに、婚約破棄するって言ったよね?」
野次馬のさざめきがピタリとやんだ。
聞き覚えのある凜とした聲は、わたくしにとっても想定外ので、も心も凍り付く。
ざざっ、と自然に割れた人並みの間を、悠々と何者かが歩いてくる。
「たかが口約束、されど約束。気持ちが離れてしまったのであれば、恥じることはない。だってミーニャ=ベルメールこそレオナール=イーヴ=デュジャルダンにふさわしい真実の人だって、この學園の生徒なら誰でも知っていることだそうじゃないか」
ね、そうでしょう? と発言者が微笑みかけると、生唾を飲み込んだ野次馬たちが一斉にこくこく首を縦に振る。名ばかり男爵令嬢であるわたくしはもとより、侯爵令息であるレオナールも口を挾めず息を呑んでいる。
今、朗らかにお言葉を口になされたのは、ハインリヒ=ツェーザル=エーデルトラウト=プロプスト――隣國の第一皇子殿下にあらせられる。つい先日、見聞を広めたいとのことでこの王立學園に転なされた。
わたくしなどには手の屆かぬ所にいらっしゃる、いわば高嶺の皇子様だ。
彼が放つ言葉は、それだけで真実であるかのように聞こえるし、実際容に相違はない。
話題に上がったミーニャ=ベルメールこそ、婚約者がいる侯爵令息に橫から猛アタックをかけている生徒だった。
ついでに付け加えると、昨日のわたくし殺人未遂の犯人でもある。
堂々とした足取りが、わたくしの隣で止まった気配をじる。恐る恐る顔を上げると、殿下ににっこりと微笑みを向けられた。
髪は輝かしい金、瞳は快晴のような青。整った顔立ちは優しげではあるが雄々しさも忘れておらず、すらりとびた手足は長くよく引き締まっている。
この場に白馬がいないことを惜しむべきか、張りセットがそろっていないからこそ「わあ、まぶしい……」ぐらいの想で済んでいると判斷すべきか悩ましい。全部そろっていたら、報量の暴力で、呼吸のついでに心臓が止まりかねなかった。
しかし、なぜ高嶺の殿下が、かような場所にわざわざ足をお運びいただいているのでしょう?
わたくし、何かしました? いえ、昨日意図せず、ダイナミック初めましてダイブを決めてしまった記憶であれば、その、はい、確かにとてもに覚えがありますけれども……。
「というわけでシャンナ・・・・、きみを縛るものはもう何もない」
「あ、あの……?」
「もしかして、まだ侯爵夫人の立場に未練があった? それともレオナール個人に何かある? きみは婚約破棄を取り下げて、元通りになりたいの?」
わたくしは即座に、ぶんぶんと勢いよく首を橫に振る。
(婚約破棄はむしろしてほしいです。あなたがここにいらっしゃって、しかもわたくしの味方をしてくださっているらしいことが、解せないだけです。昨日はよくも當て逃げしようとしたな平民、首を出せ、ということならわかりますが……)
殿下はわたくしの返事にうんうん、と満足そうに頷かれ、そのままをかがめられて――。
をかがめて?
抱き上げた?
――わたくしを!?
キャアアア! と野次馬から黃い聲が上がるが、それどころではない。
今絶対呼吸が止まった。きっと心臓も止まった。たぶん目はつぶれた。わたくしはもう駄目だ。次の人生に期待しよう。
「婚約破棄したのだし、そちらの用事は済んだのでしょう? ぼくはシャンナを送っていくよ。顔が優れないし、まだ本調子じゃないだろうからね」
「そ、そんな――」
「あれ? まだいたの、デュジャルダン侯爵令息。それで、ぼくに何か?」
「い、いえ……殿下には何も……」
フフッ――耳から何か殿下の聲とレオナールの聲らしき音はってきているのですが、まるで意味が理解できませんね。天井のシミでも數えればいいのかな。いやここ屋外だから駄目だ。世界って青くて広いなあ……。
「それではごきげんよう。真実の人と末永くお幸せに」
結局、わたくしが自失して混を極めている間に、殿下は爽やかに、それでいてピシャンとレオナールに別れを告げる。
そして踵を返し、颯爽とわたくしをその場から連れ去ったのだった。
ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし
貧乏子爵家の長女として生まれたマリアはギャンブル好きの父、見栄をはる母、放蕩をする雙子の弟を抱え、二月後のデビュタントに頭を抱える14才。 祖父から堅実なお前にと譲られた遺品と鍵つきの祖父の部屋を與えられたものの、少しずつ減らさざるを得ない寶物に嘆きつつ何とかしたいと努力していたが、弟に部屋に侵入され、祖父の遺品を盜まれた時にブチキレた! 一応、途中の內容の為に、R15を入れさせていただきます。
8 181家庭訪問は戀のはじまり【完】
神山夕凪は、小學校教諭になって6年目。 1年生の擔任になった今年、そこには ADHD (発達障害)の瀬崎嘉人くんがいた。 トラブルの多い嘉人くん。 我が子の障害を受け入れられないお母さん。 応対するのはイケメンのイクメンパパ 瀬崎幸人ばかり。 発達障害児を育てるために奮闘する父。 悩む私を勵ましてくれるのは、 獨身・イケメンな學年主任。 教師と児童と保護者と上司。 「先生、ぼくのママになって。」 家庭訪問するたび、胸が苦しくなる… どうすればいいの? ・:*:・:・:・:*:・:・:・:*:・:・:・:*:・ |神山 夕凪(こうやま ゆうな) 27歳 教師 |瀬崎 嘉人(せざき よしと) 6歳 教え子 |瀬崎 幸人(せざき ゆきひと) 32歳 保護者 |木村 武(きむら たける) 36歳 學年主任 ・:*:・:・:・:*:・:・:・:*:・:・:・:*:・ 2020.8.25 連載開始
8 87高校ラブコメから始める社長育成計畫。
コミュニケーションの苦手な人に贈る、新・世渡りバイブル!?--- ヤンキーではないが問題児、人と関わるのが苦手な高校二年生。 そんな百瀬ゆうまが『金』『女』『名譽』全てを手に入れたいと、よこしまな気持ちで進路を決めるのだが—— 片想い相手の上原エリカや親友の箕面を巻き込み、ゆうまの人生は大きく動いていく。 笑いと涙、友情と戀愛……成長を描いたドラマチック高校青春ラブコメディ。 ※まだまだ若輩者の作者ですが一応とある企業の代表取締役をしておりまして、その経営や他社へのコンサル業務などで得た失敗や成功の経験、また実在する先生方々の取材等から許可を得て、何かお役に立てればと書いてみました。……とはいえあくまでラブコメ、趣味で書いたものなので娯楽としてまったりと読んでくだされば嬉しいです。(2018年2月~第三章まで掲載していたものを話數を再編し掲載しなおしています)
8 159この美少女達俺の妻らしいけど記憶に無いんだが⋯⋯
「師匠! エルと結婚してください!」 「湊君⋯⋯わ、わわ私を! つつ妻にしてくれない⋯⋯か?」 「湊⋯⋯私は貴方が好き。私と結婚してください」 入學して二週間、高等部一年C組己龍 湊は三人の少女から強烈なアプローチを受けていた。 左の少女は、シルクのような滑らかな黒髪を背中の真ん中ほどまで下げ、前髪を眉毛の上辺りで切り揃えた幼さの殘る無邪気そうな顔、つぶらな瞳をこちらに向けている。 右の少女は、水面に少しの紫を垂らしたかのように淡く儚い淡藤色の髪を肩程の長さに揃え、普段はあまり変化のない整った顔も他の二人の様に真っ赤に染まっている。 真ん中の少女は、太陽の光で煌めく黃金色の髪には全體的に緩やかなウェーブがかかり幻想的で、キリッとした表情も今は何処と無く不安げで可愛らしい。 そんな世の中の男性諸君が聞いたら飛んで庭駆け回るであろう程に幸せな筈なのだが──。 (なんでこんな事になってんだよ⋯⋯) 湊は高鳴ってしまう胸を押さえ、選ぶ事の出來ない難問にため息を一つつくのであった。 十年前、世界各地に突如現れた神からの挑戦狀、浮遊塔の攻略、それを目標に創立された第二空中塔アムラト育成機関、シャガルト學園。 塔を攻略するには、結婚する事での様々な能力の解放、強化が基本である。 そんな學園に高等部から入學した湊はどんな生活を送っていくのか。 強力な異能に、少し殘念なデメリットを兼ね備えた選ばれたアムラト達、そんな彼らはアムラトの、いや人類の目標とも言える塔攻略を目指す。 一癖も二癖もある美少女達に振り回されっぱなしの主人公の物語。
8 103嫁入りしたい令嬢は伯爵の正體がわからない
男爵令嬢のコノエはある伯爵のお茶會に參加していた。 しかしニコラス伯爵を名乗る人物が三人いて…? 誰がニコラスなのかわからないまま、大勢の令嬢達との殺伐としたお茶會がはじまった。 主人公が伯爵を考察していく言葉遊びのような話なのでふんわり読んで頂けたらと思います。
8 168婚約破棄された令嬢は歓喜に震える
エルメシア王國第2王子バルガスの婚約者である侯爵令嬢ステファニーは、良き婚約者である様に幼き時の約束を守りつつ生活していた。 しかし卒業パーティーでバルガスから突然の婚約破棄を言い渡された。 バルガスに寄り添った侯爵令嬢のヴェルローズを次の婚約者に指名して2人高笑いをする中、バルガスが望むならとステファニーは見事なカーテシーをして破棄を受け入れた。 婚約破棄後からバルガスは様々なざまぁに見舞われる。 泣き蟲おっとり令嬢が俺様王子に、ざまぁ(?)する物語です。 *殘酷な描寫は一応の保険です 2022.11.4本編完結! 2022.12.2番外編完結!
8 159