《婚約破棄されたら高嶺の皇子様に囲い込まれています!?》18.魔道店を目指そう!

一息ついて落ち著いたところで、改めて皆で魔道店に出発! である。

わたくしとしては、眼鏡はもう購済みなので、本日の目標は達されている。とは言え、買ったのはごく普通の眼鏡であり、霊眼を抑制する作用などはなさそうだ。

魔道店への道すがらでついでに検証できたのだが、レンズ越しでも、見ようと思えば普通に煙のようなのような、主に人から立ち上る魔力の流れが視界に映った。

やはりあの侯爵家からの贈りは、特注品だったということなのだろう。

「じゃあそれ、今は実用のないただのファッションってことか」

「ええと……まあ、そうなるんですかね」

「ん? ってことはよ。さっき迷子捜ししてた時さ、わざわざ一回々しく外す必要なかったんじゃね?」

…………。

そこに気がつくとは、ロジェ=ギルマン、さすがは特待生ですね。震え聲。

眼の方がより見えやすいだろうし、気持ちの問題も大事だよ」

やめて! 殿下、フォローしないで! ますますいたたまれなくなります!

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それにしても、先ほどの使いすぎで覚が鋭敏になっているからだろうか、皇子殿下の方に視線を向けるとすぐこめかみの辺りにむずむずした覚が走る。

ちなみにロジェもじーっと熱心に眺めていると同じようになるのだが、普通にしている分には気にならない、というじだ。平民基準――いや標準的魔法使い基準ではロジェも充分化けなのだが、殿下はそれを更に上回る、ということなのだと思う。

はあ……ご尊顔が見守れないって、地味に落ち込みますね。これ、明日以降治るといいけどなあ……。

ふらっとさまよわせた視線の先に映り込むは、五歳児クリスタ。彼もなかなかに將來有と見える。

何しろ跡がたどれるほど濃厚な魔力をダダれさせているのだ。髪と同じ青なので、水屬なのだろうと推測する。

ちなみに今日また一つわたくしの目の特を知ったのだが、どうも洗練されていない魔力は煙のように、きちんとされている魔力はのように映るものらしい。

クリスタのようにまだ魔法を正式に習っていない子ども、あるいは自分の魔力を意識していない人間等は、もやもやーっとしたを自分の周りに漂わせている。

一方、己の魔法の扱い方を心得ていて、不要な魔力放出を控えている人間は、に輝きを宿しているように見える。殿下が最も典型的だし、ロジェもこちらのタイプだ。

そして疲れ目の狀態だと、煙タイプの方が、タイプよりも見ていて苦にならない。

自分の目のことながら、一どういう仕組みなのか……不思議だ。

「セディにーさま、クリスタのおうまさん!」

「馬は二つ足で歩かない」

「にーさまぐるま!」

「兄は車ではない」

「じゃあ……にーさまって、なんなの……?」

「兄は兄だ」

さて、わたくしの視線の先、クリスタは兄に肩車をしてもらってご満悅そうだった。そして妹に淡々と返す兄の表筋は相変わらず死んでいる。

ちなみにカフェから出発する前、セドリックはわたくし達に、

「戦略的な妹確保を行いますので」

とか々しく宣言してきた。一何が始まるんです……!? と怯えたら、おもむろに妹を肩に乗せたというわけだ。ちょっとずっこけそうになった。

まあ、クリスタ嬢は放っておくとなかなか危なっかしそうなお子様に見えるので、事故防止のためには最適解の一つなのかもしれない。

小さなお手々がきゅっと紺の髪を握りしめている様はかわいらしい。しかしあまり強くすると髪の主の頭環境が悪化しそうなので、ほどほどにしていただきたい。

他人事ながらし心配になるが、セドリックは妹に荒らされる髪型についてはノーコメントだ。なんだかんだ妹の相手をしているし、だから懐かれているのだと思う。

そういえば、クリスタがわたくしの紺スカートに寄ってきたのも、わんわん泣きながら握りしめていたのも、思えば兄の代替行だったのか……。

「しっかし魔道店かあ。俺も最近行ってなかったから、ちょっと楽しみだな」

「ロジェもなの? シャンナの眼鏡の話をした時、話題に出していたのに?」

「そりゃ俺は平民だし、全く利用しないってことはないぜ? けどな……學園にいると、常連になるほどじゃねーっつーか……なあ、わかるだろ? 俺、一応特待生だしさ」

気まずそうに目を逸らすロジェと、不思議そうな表になる殿下。

わたくしはちらっと先を行く伯爵家兄妹に目を向ける。クリスタが何かを指さしては兄に話しかけ、セドリックが淡々と返答する様子が見えた。

ひとまずこちらには二人の注意が向いていないことを確かめてから、こほんと咳払いし、小さく殿下に耳打ちする。

「殿下。皇國では魔道の開発にも利用にもさほど抵抗がないという話ですが、ここ王國では未だに魔法主義が強いのです」

皇國が大陸のまとめ役となり、保守的な我が國にも魔道文化は普及した。

しかし我が國は昔から伝統主義の強い気風、特に貴族はその傾向が強い。

魔道でできることは、一流の魔法使いであれば全部自分の魔法でできるはず――つまり魔道使いは落ちこぼれ、という偏見がまだまだ強く殘っているのだ。

「ロジェくんは特待生――しかも魔力素養を見込まれて、奨學金が出ている人です。庶民なので、魔道っていたから一発アウト! はさすがにないでしょう。けれど、あまり用が過ぎると……仮に常用の証拠が提出されでもすれば、最悪特待生特典の取り消しもあり得ます」

「どうして? 魔法使いだって、自分の得意な屬以外の魔法はうまく扱えないものでしょう。だからそれぞれの魔法の専門家に魔式を書いてもらって、自分の魔力で稼働させる。魔道は構造的には魔式とほとんど変わらない。それなのにどうしてそんなに差をつけたがるの?」

「いえ……ただその、力が魔石、というところが問題というか――」

いまいち納得できない、という顔の殿下にどう説明したものか悩む。

そう、やっていることはほとんど変わらないのだ。だから皇國では魔道使いに抵抗がないと聞く。

だが、王國では、自分の魔力、という所が貴族の価値なのである。

わたくしが口を閉じている間に、顔を悪くしたロジェが、そっと顔を寄せてきた。

「なあ。俺、今更嫌な予がしてきたんだが。その……あんたもしかして、あのボンボンが見えちまっている……いやこの場合、見えない・・・・のか?」

わたくしは答えなかったが、時に沈黙は肯定を意味する。

セドリックからは煙もも見えない。まあ目を懲らせばちょっとっている……かな……? ぐらいだ。彼の妹からは、煙がダダれであるというのに。

――Aクラスで當然の分の人間が、なぜかBクラスにいる。

――名門伯爵家の息子なのに、街に出かけて一人の供もいない。

――妹が道屋に一緒に行きたいと言った……つまり彼は魔道店を常用している。

……ああ、この目が見る魔力の流れや質から真実を推測することは、し前まではただ便利で楽しいだけのものだったのに。

わたくしは自分の目が、時に見なくていいものまで見かしてしまう殘酷な一面を持つことを知った。

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