《売れ殘り同士、結婚します!》プロローグ

「い、今、なんて……?」

にいるのに、冷たい風がゆるりと頰をでたような気がした。

私の聞き間違いだろうか。

そう思うのに。

その真剣な瞳は、私を抜くように見つめていた。

「あの時の約束、実現してみねぇ?」

目の前の男は今、確かに"あの時の約束"と言った。

頭の中に浮かんだものは、一つだけ。

「……それって、つまり」

遠い昔、売り言葉に買い言葉のように頷いてしまったことがある。

"三十歳になってもお互いフリーだったら。売れ殘り同士、結婚しよう"

まさか、三十歳という節目の年にこんな形で再會することになるなんて思ってなかったし、まさかこの男があの約束を覚えているだなんて微塵も思っていなかった。

子どもだからこそできた、本気か冗談かもわからない、不安定な口約束。

「あぁ。どうやら俺たちは二人とも売れ殘り同士らしいし。……約束通り、結婚しようぜ」

わなわなと震える私の口元に、目の前の彼は楽しそうにフッと微笑んだ。

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