《売れ殘り同士、結婚します!》20話 お家デート
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朝になり、私はの鈍痛を抱えつつじとりとした視線を送りながら自分で用意した朝ごはんを食べていた。
向かいでは必死に私の機嫌を取ろうとしながら同じように朝ごはんを頬張っている冬馬の姿。
「悪かったって」
「もー……」
「だってしずくがあんまりにも可すぎるから我慢できなくて」
「だからって夜通しは聞いてない!結局ご飯も食べられなかったし……」
結局あの時間が夜通し続いたため、何も食べていなくて気が付いたら朝方だった。だからほとんど眠れてもいないのだ。
「わかった。今日しずくの食べたい店に行こう。なんでも食べていいよ」
「そういう問題じゃないの!」
食い意地が張ってると思われているのか、確かに食べることは好きだけれどそれはそれで腹が立つ。
子どもじゃないんだから、食べで釣れると思ったら大間違いだ。
せっかくの同棲初日。冬馬と一緒にいられるのがそもそも久しぶりだったから、私は冬馬にぎゅっと抱きついてたっぷり眠りたかったのに!
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冬馬は艶も良くなっているような気がするけれど、私は寢不足でクマが酷いのもなんだか解せない。
食べ終わって食を洗おうとすると、冬馬が私の分も洗ってくれた。
「……ありがとう」
しかしまだ私の機嫌が治らないことにしゅんとした様子の冬馬が、私と視線を合わせて覗き込んできた。
「……昨夜、嫌だった?気持ち良くなかった?」
と存在しないはずの立ち耳を垂れさせながら聞いてくる。
叱られた犬のような表に、グッと心が摑まれたような気がしてそれ以上文句は何も言えなくなってしまった。
「……別に嫌だったわけじゃないし、その……気持ち良かった、けど……」
「けど?」
「ただ、私は同棲初日だから冬馬とゆっくり一緒に過ごしたり、眠りたかっただけで」
決してあの時間が嫌だったわけじゃない。大好きな人にも心も求められて嫌な人なんているわけがない。
ただ、しでいいから私の気持ちも聞いてしかっただけだ。
し私のわがままも聞いてもらいたかっただけだ。
噓はつけなくて思っていることを伝えると、
「そっか。そうだよな。しずくの気持ち何も聞かず勝手に連れて行った俺が悪いよな。勝手なことして本當にごめん」
と謝ってくれた。
「今日の夜はゆっくり一緒に寢よう」
「うん」
「他にしたいことはあるか?」
「んー……もし時間あったらだけど、一緒に家で映畫見たい!」
「じゃあ急いで仕事終わらせてくるから、後で見たいもの一緒に探そう」
「うん。ありがとう」
お禮を告げると、冬馬は幸せそうに微笑んでくれた。
確信犯なのかただ用意周到なだけなのか、冬馬は今日は午前休をとっているらしい。
午後からクライアントとの約束があるらしく、それに間に合えば今日は大丈夫なんだとか。
もし遅くなって映畫が見られないならそれはそれでいいや。どうせこれからいくらでも一緒の時間を過ごせるのだから。
「ん?どうした?」
「ううん。幸せだなあって思って」
「ははっ、俺も」
些細な會話で笑い合えるのも、嬉しいもの。
午後になって冬馬を仕事に送り出すと、気合をれて買いに行ってから掃除を進める。
ロボット掃除機がリビングを綺麗にしてくれるから、私は寢室と自分の部屋、あとは水回りの掃除に明け暮れる。
それが終わった後、いい合に時間が経過したので夕食の準備を始めた。
昨日は外食してしまったから、今日からしっかりと自炊しよう。
冬馬の喜ぶ顔を直接見たい。
作り置きの中でも気にってくれているビーフシチューを作ろうと、丁寧に下処理してシチューを煮込む。
それだけじゃ足りないだろうから、大葉とチーズを巻いた豚にを付けて油できつねになるまで揚げる。
副菜をいくつか用意して作り置きしておいて、お味噌を最後に作って終了。
映畫を見ている間はアイスでも食べようか。
冷凍庫の中を確認して楽しみが増える。
まだ冬馬が帰ってくるまでは時間がありそうだからし休憩しよう。
甘いカフェオレを淹れて、ソファに腰掛けてテレビをつける。
ニュースを見たり、バラエティ番組を見たり。
楽しいけれど、やっぱり冬馬と一緒に見る方が楽しい。
この蕓人さん、昔から冬馬が好きだったよなあ、とか。この俳優さんが出てる連続ドラマ、この間冬馬が録畫して見てるって言ってたよな、とか。
テレビを見ながらも浮かぶのは冬馬のことばかりで、どれだけ冬馬のことが好きなんだとそんな自分に呆れて笑ってしまう。
今のうちにお風呂も済ませちゃおうとお湯を溜めてゆっくりして上がると、そろそろ冬馬が帰ってくる予定の時間。
特に連絡は來ていないから、殘業も無いのだろう。
「っと、ご飯溫めなきゃ」
スキンケアもそこそこに、おかずやお味噌を慌てて溫める。
それから十五分くらいして玄関の鍵が開く音がして、エプロンをしたまま走って迎えに行った。
「ただいまー」
「おかえり!」
「うぉ、びっくりした。出迎えに來てくれたのか?」
頷くと、嬉しそうに抱きしめてくれる。
「今日は冬馬の好きなビーフシチュー作ったよ」
「マジ?やった。楽しみ」
冬馬が寢室で部屋著に著替えている間に食事を並べ、お茶をコップに注いだところで冬馬がリビングに戻ってきた。
「うわ、うまそう」
キラキラした表を見て、単純だけど私まですごく嬉しくなる。
いただきます、と両手を合わせて食べ始めると、旨い旨いと言ってすぐにぺろりと完食してくれた。
作った甲斐があるなあと思いながら洗いを済ませている間に冬馬がお風呂にり、上がってくると二人で約束の映畫を見る。
一緒に見ようと午前中に話し合って決めていた、有名なハリウッドのアクション映畫。
映畫も好きだけど、好きなハリウッドの俳優さんが一致しているためすぐに決まった映畫。
ハラハラするほどリアルなカーアクションがかっこよくて、見ているだけで心臓がバクバクする。
冬馬と寄り添うように手を繋ぐものの、要所要所で驚いて肩が跳ねたり展開に切なくなったり。
映畫館で見る臨場は無いけれど、好きなジュースとお菓子を用意して盛り上がりながら見る映畫はとても楽しい。
見終わると、爽快で満ち溢れていた。
「面白かったー」
「な。久しぶりに見たけどやっぱ面白い」
「冬馬これ前にも見たことあるの?」
「あぁ。しずくは初めて見たのか?」
「うん。見よう見ようと思ってたけど、一人で見るのはなあって思ってたから」
「確かに。これは誰かと一緒に見た方が絶対面白いよな」
「うん」
その後はこれも見たい、あれも気になってる、とたくさんの映畫の名前が上がり、今後も定期的に映畫鑑賞の時間が設けられそう。
とはいえ明日からは私も仕事。
片付けをして、今日は早めにベッドにる。
「今日はしずくのご所通り、ゆっくりたっぷり寢よう」
「うん、ありがとう」
布団の中でぴったりと冬馬に寄り添いながら、抱き著くようにして眠る。
冬馬の匂いをいっぱいに吸い込んで、ゆっくりと深呼吸すると心が溫かく満たされた気持ちになった。
「……落ち著く。だいすき」
「そんなこと言いながら抱きつかれたら、また襲っちゃいそうなんだけど」
「今日はだめ。私が冬馬を堪能する日なんだから」
「っ……本當、お前確信犯だろ?」
「んー……なにが?」
微睡の中で返事をすると、冬馬が緩く笑う。
「……いや、いいよ。しずくはそういうやつだ。うん」
「ん……?」
嬉しそうな聲に聞き返すものの、冬馬は私の目を塞ぐように手を置いた。
「ん、こっちの話だから気にすんな。俺も大好きだよ、しずく。……おやすみ」
「ありがと……おやすみ……」
すでに瞼は重くなり始めていて、おやすみと返すとすぐに夢の中に意識が引きずられていく。
冬馬とくっついているからか、すごくすごく幸せな夢を見たような気がした。
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