「時間を間違えたのかなぁ……」

約束の日は、９月下旬日曜日の夕方。

待ち合わせ場所は、大きなターミナル駅近くにある、コーヒーショップ店の前だった。

もう１５分以上待たされているのに、相手が一向に現れる気配が無い。

まさか、あれだけやり取りしたのに、このまますっぽかされるの？　そう思うと一気に心細くなってきた。

もしかして、モテる相手にただ弄もてあそばれただけなのかも……。

そんな不安が頭をよぎる頃、背後から聲が掛かった。

「りんさん……ですよね。遅れて申し訳ありません」

「あっ、あの、ハルさんですか？　私もさっき來たところです」

アプリ用のニックネームで呼ばれ、返事に戸った。

そこに現れたのは高長で、黒のテーラードジャケットとスキニーパンツがよく似合う、モデルのような男。

肩幅が広くガッチリとした格に、目は切れ長で鼻筋の通る整った顔立ち。低く落ち著いた聲が魅力的で、寫真以上に素敵な人だった。

「とりあえず、ここで話をしましょうか」

「はい」

二人でコーヒーショップの店へることにした。

相手の雰囲気にのまれ、さっきまで抱いていたモヤモヤはどこかへ消えている。

店でコーヒーを二つ注文し、４人掛けのテーブル席に座った。

ハルさんの視線は私にばかり向けられ、どことなく居心地が悪い。

恥ずかしさに手元しか見られず、慣れない狀況に、さっそくが高鳴り始めた。

「あ、あのっ。今日はよろしくお願いします」

軽く頭を下げて視線を戻すと、なぜかハルさんは私を見て微笑むだけで、何も話そうとはしない。

なんだろう、この沈黙……。

メッセージではあれだけ熱烈にやり取りしていたのに、実際に対面すると無反応だなんて。

もしかして、私の寫真と実イメージに違いがあるとか？

それとも、いつもつまずく長の問題？

「えっと……私、婚活アプリって初めてで。張して、何を話せばいいか……」

ハルさんはテーブルに両手を置き、前のめりに屈むと、い表で尋ねてきた。

「りんさんは、今までお付き合いをされたことはありますか？」

いきなり口を開いたと思ったら、その質問？

「え、えぇ……まぁ、付き合ったというか……ほんのしだけですけど……」

とりあえず言葉を濁にごすしかなかった。

この年でまともに付き合ったことが無いなんて、とても恥ずかしくて口に出せない。

「こちらも一応お伝えしておきますね。付き合ったは大學時代に３人。社會人になってから２人付き合いました。彼いない歴３年です」

「あ、あの。こんなこと言ったら失禮かもしれませんが、ハルさんならアプリなんて使わなくても、十分モテそうですけど……」

「そんなことないですよ。もし登録していなかったら、こうして、りんさんみたいな素敵なと巡り合うこともなかったですから」

淡々と答えるハルさんの言葉が手慣れた印象を與え、し構えてしまった。

けれど、カッコいい人から目の前で口説かれてるシチュエーションに悪い気はしない。