《婚活アプリで出會う馴染との再會で赤い糸を見失いました~》赤い糸の絡まり(8)

仕事を終えるタイミングで、小田さんからメッセージがる。

『一緒に帰ろう。終わるのにあと30分かかるから待ってて。會社前だと目立つから、大通りに沿いにあるレストランの前でどうかな?』

『わかりました。待ってます』

メッセージを返して、先に店の前へ到著しようとエレベーターに乗り込んだ。

1階でエントランスを出ようとして、が一瞬凍り付く。

そこに立っていたのはスーツ姿の遙斗だった。仕事帰りにここへ立ち寄ったのだろうか。

付近に人影が無いことにホッとした。

こんな場所で出資元の専務という立場の人と話をしていたら、変に思われる。

「里穂、迎えに來た。一緒に俺の部屋へ帰ろう」

「悪いけど、今日からアパートに帰ることにしたの」

「どうして? 俺はまだ許した覚えはない」

いつものように流されてしまったら、また遙斗の腕に抱かれてしまうような気がした。

その時、エレベーターの到著音がポーンと鳴り響く。

遙斗が急いで私の腕を引っ張り、エントランスを出ると、ビルの裏側にある植栽の辺りへ連れて行かれた。

「私、ある男と付き合う事にしたの。だからもう遙斗の所へは戻れない」

「里穂が俺にしたことはもう許されるのか?」

遙斗は険しい顔つきで私に尋ねてきた。

「それなら……違う方法で許してもらう。もう、こんな関係で縛られたくないから」

今、きちんと言っておかないと、後戻りできなくなる。

「相手は同じ會社の人間か?」

「違うよ。會社の人は関係ない」

「里穂はその男が好きなのか? 本気でそいつと付き合いたいのか?」

なぜかにズキンと響く。

低い聲で、責めるように問い詰める遙斗のその表からは、いつもの余裕が消えていた。

「そう……だよ」

返事をすると、縛り付けていた縄をほどくように、遙斗の摑んでいた手がそっと離れた。

「わかった」

遙斗は固い表のまま、私の前から立ち去っていく。

こんな風にあっさりと解放されるなんて、思ってもみなかった。

心のどこかがギュッと潰れる。

――――何? この…………。

言い様の無い寂しさが込み上げてくる。

そのを無視するかのように歩き出し、小田さんに指定された場所へと向かった。

「鈴河さん。お待たせ」

走って來たのか、小田さんは息を切らせて店の前に到著した。

「よかったら、今夜もどこかで飲まない?」

せっかく遙斗から解放されたというのに、なぜか今日はそんな気にならない。

しばらく戻れていなかった自宅も片づけをしたいし、とにかく今夜は早く帰りたかった。

「ごめんなさい。今日は、仕事で疲れてしまって……」

「いいよ。また今度。あと……それから、呼び方なんだけど、今度から里穂ちゃんって呼んでもいいかな?」

「えっ!? ……は、はい」

私を下の名前で呼ぶ男は、遙斗しかいない。

『りほ』っていう音を聞くと、つい遙斗の顔が浮かんでしまう。

これからは、小田さんから呼ばれることに慣れなくてはならないんだ。

「僕の方は、渉わたるって呼んでもらえたら嬉しいな」

「はい……」

急に言われても、下の名前で呼ぶのは、まだためらいをじた。

「それじゃあ、近くの駅まで送って行くね」

二人で駅へ向かって歩き出す。

これからは、すんなりと小田さんの名前を呼べる日が來るはず。

そう自分に言い聞かせ、隣で歩く相手の顔を見つめた。

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