《婚活アプリで出會う馴染との再會で赤い糸を見失いました~》ほどけない糸(5)

「もう一杯ずつ飲んだら帰ろうか?」

「はい」

今度はオレンジ系のカクテルと、モスコミュールがカウンターに並ぶ。

気持ちを引き締めて飲んでいたはずが、グラスを空にした頃には疲れと眠気で、小田さんに支えられながらタクシーに乗り込んでいた。

「あの……私、タクシーじゃなくても。歩いて帰れますから」

「大丈夫。里穂ちゃんのアパート近くで降ろしてもらうから」

強引にタクシーに乗せられ、小田さんは、私の住む最寄り駅を運転手に告げた。

その言葉に安心してしまい、いつしか心地良い車の揺れで、眠りの世界へ落ちていく。

気がつくと小田さんに肩を抱かれ、タクシーから降ろされているところだった。

私たちを降ろしたタクシーは、扉を閉めると、すぐに走り去っていく。

「えっ!?……ここって?」

「良かったら、僕の部屋で飲み直さないか? まだそれ程遅くないし、ここがちょうど里穂ちゃんのアパートへ帰る途中だったから」

「でっ、でも……。これ以上飲むと、帰れなくなりそうだし……」

「大丈夫。し飲んだら、ちゃんと送って行ってあげるよ」

強引に私の腕を摑み、目の前にあるマンションの方へ引っ張ろうとしている。

周りは住宅街で薄暗く、人通りもない。恐怖を覚え、思わず足を止めた。

「やっぱりいいです! ここから歩いて帰りますから」

「どうして僕じゃダメなの? TSAの専務とは、親しいのに?」

急に核心をつく質問をされ、ドキッとする。

「えっ? いえ、あの……彼とはお仕事で、先日お話ししただけです」

「最近、いつも心配なんだ。里穂ちゃんが他の男に取られるんじゃないかって……。ずっと気が気じゃない」

小田さんの言葉に何も返すことができない。

やっぱり遙斗のことを聞きたかったんだ。

「何言ってるんですか。私、そんなにモテませんよ」

「自分ではわかってないんだ。里穂ちゃんは魅力的だよ」

離してもらえない右手を、さっきより力強く握られている。

「最近は仕事から帰ると、里穂ちゃんが家で待っててくれたら……とか、結婚を考えたりしてさ」

「結婚って……」

一瞬小田さんの表が暗くなり、いつもにはない意地悪そうな目つきで私を見つめていた。

「これからずっと君を大切にする。だから今日は、お互いにもっとわかり合おうよ」

そう言うと、いきなり腕を引っ張られ肩を摑まれると、強引に抱きしめられてしまう。

驚いて抵抗し、相手のを押しやっているうちにを塞がれた。

嫌悪が募り、脳裏には遙斗の顔が浮かんだ。

助けて……遙斗!

必死で抵抗しようと押し返すが、酔っていてに力がらない。

やっとを離し、小田さんが言葉を発した。

「やっぱり、今日會ったあの専務のことが好きなのか? あいつのどこがいいんだ。

僕は里穂ちゃんしかいないんだよ。だから――」

逃れようとする私のを、必死に自分の方へ引き寄せようとする。力でねじ伏せようとする男に敵うわけもない。

して、わけもわからず相手のを叩き続けた。

「やめてっ、やめてよっ! こんなことしないでっ!」

同時に、必死で足をかすと、蹴り上げた足がちょうどお腹の辺りに當たった。

「うっ!!」

小田さんが小さくうめく。

「本當にやめてっ!!」

泣きぶようにして大聲を出す。不意に握られていた腕の力がし緩んだ。

一瞬の隙を見て手を引き離すと、途中転びそうになりながら駆け出し、明るく広い大通りまで走り続けた。

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