《婚活アプリで出會う馴染との再會で赤い糸を見失いました~》揺れる心(1)

年末は忘年會や打ち上げで遙斗とのスケジュールが合わず、すれ違いが続いていた。

年始にはお互い実家へ戻っていたので、まともに顔も見ていない。

仕事始めの前日に、遙斗のレジデンスへと戻る。

玄関を開けると、わざわざ目の前まで出迎えてくれた。

「おかえり、里穂」

久しぶりに會えて、もの凄く嬉しいのに、鼓が激しすぎて、何も言葉が出てこない。

寢室へ荷を置きに行こうとして、背後から追いかけてきた遙斗に抱きしめられた。

「會えなくて寂しかったよ」

思わず息が止まりそうになる。

喜びが湧き上がり、顔が綻ほころびそうになるのを必死で堪こらえた。

「実家はどうだった? ゆっくりできたの?」

「あぁ、親戚中が集まって、騒がしかったよ。耳障りな話を、逃げ場がないところでされたからな」

「何を言われたの?」

遙斗は後ろから私を抱きしめたまま、首筋にらかなキスを落とし、首元の辺りに顔を埋うずめるようにして、寄りそった。

「そろそろを固めろ……ってさ」

ドキンとする。

もう30になるのだから、結婚は現実問題として避けられない年齢。

実は私も両親から、誰か良い相手はいないのかと尋ねられていた。

「きっと、遙斗ならすぐ見つかるよ。それに、次期社長でしょ? 結婚は責任重大じゃない」

明るい口調で、大袈裟おおげさに言ってみた。

「まだ自信が無いからな……」

ボソッと呟く。

遙斗らしくない、後ろ向きな言葉。

「えっ? どういう意味?」

「今は里穂の躾しつけに忙しいってことだよ」

「何、それ……」

後ろから抱きしめたまま、耳元にれている最中、遙斗のスマートフォンが鳴った。

「早速、仕事の連絡だ――――」

ポケットから取り出すと、ディスプレイを眺め、殘念そうな表を浮かべて自室へ戻っていく。

耳に殘る暖かな余韻よいんに寂しさをじながら、遙斗の背中を見送った。

* * *

年明けの仕事始めはゆっくり10時スタートで、部署ごとに新年の挨拶が行われた。

部署で軽く新年會を行い、ピザやサンドイッチを食べて歓談し、午後は自由解散する。

忙しい部署は新年早々、仕事に手を付け始める。殘念ながら、広報宣伝部もその一つだった。

テーブルに並べられたピザの殘りや飲みを、萬智と二人で片付けてる最中、こっそり打ち明け話をしてくれた。

「実は、彼氏とうまくいってなくて……試しにアプリを登録してみたんだ」

「えぇっ!? それじゃあ萬智、お正月大変だったじゃないっ。相談してくれたら良かったのに……」

「もう今はすっきりして、気持ちを切り替えたとこだから」

萬智の表は意外とさっぱりして、清々すがすがしかった。

「それでさ、年末に昔の友達と飲み會をして、新しい人とメッセージ換したの。結局アプリは役立たなくて。だからあまり大きな聲で言えないんだけどね」

萬智は嬉しそうに紙コップを重ねて、テーブルを拭いている。

ではアプリ推進目的のため、他の場所で出會い、付き合っているというのは、どことなく公言しづらい空気だった。

「里穂の方は、その後の進展どう?」

「えっ!? あぁ、う~んと……あんまり……」

小田さんから、頻繁に調を気遣うメッセージが屆いていた。

仕方なく儀禮的な言葉を返すけれど、本當はこのやり取りも、もう終わりにしたい。

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