《婚活アプリで出會う馴染との再會で赤い糸を見失いました~》揺れる心(6)

翌日、総務部で仲の良かった子數人と外へランチに出掛けた。戻ろうとするとエレベーターホールで小田さんと遭遇する。

「相変わらず仲いいよねぇ~」

「私たち先に行ってるよー」

「うん……」

みんなが気遣い、私たち二人だけを置いて、先にエレベーターへ乗り込んで行く。

一人殘されて不安な気持ちが広がる中、仕方なく小田さんの方へ向き直った。

「最近ご飯っても、いい返事が貰えないから」

「もうすぐイベントなので、忙しいんです」

「今日も行けないの?」

し苛立つような、いつもより低い聲で尋ねられた。

「ごめんなさい」

「そう……。そうか。わかったよ」

そう言うと、あっさりと引き下がり、立ち去って行った。

「はぁ~」

ホッとしてため息が出る。

どう伝えたら諦めてもらえるのか……。

小田さんとの距離がまるで摑めない。もはや普通の友人として付き合うことすら難しくじていた。

その日も殘業があり、やっと片付けを終え、帰宅しようとエントランスを出た。

その直後、急に後ろから呼び止められる。

「里穂ちゃん。僕も殘業があって、遅くなったんだ。送って行くから一緒に帰ろうよ」

小田さんの姿に一瞬ゾクッとする。

下の名前で呼ばれることも、こうして待たれていることも、すべてに嫌悪を覚えた。

しばらく並んで歩いていたが、もう我慢することができない。

「あの……今日は、はっきり言わせてください。

もうこれ以上、小田さんと親しくできそうにもありません。

実は私、他に好きな人がいるんです。

だから、今後は會社も、アプリの方も、お付き合いを解消させてください」

きっぱり伝えると、小田さんはすっかり黙り込んでしまった。

沈黙のまま、しばらく一緒に並んで歩き続ける。

駅に到著すると、急に小田さんが満面の笑みを浮かべ、こちらに向き直った。

「どうして……だって、ちゃんと里穂ちゃんに確認したよね?

友達からやり直して、付き合おうって……。

それに、今は里穂ちゃんが好きなだけだろ。必ず結ばれるかどうかはわからない。

僕の気持ちは変わらないよ。

だから、ずっと君の傍そばにいるから」

畳みかけるように言われた言葉が重すぎて、恐怖でしかなかった。

「ごめんなさい。小田さんの期待には応えられません」

一言伝えると、足早に改札を通り抜けた。

ホームに降りて、ちょうど來た電車に乗り込む。扉が閉まり電車が発車すると、長い溜息をついた。

小田さんがますます怖くなっていく。

これからどうすればいいのだろうか……。

遙斗にも迷が掛かるから、當分レジデンスに行くことはできない。

心細い中、アパートへの道のりを急ぎ足で帰った。

* * *

翌日からは帰宅するのが怖くなり、萬智や、他の子たちと一緒に帰ることにした。

みんなと別れ地下鉄に乗り込む。

周りを見渡し、小田さんの姿がないことで、やっと安心することができた。

最寄り駅に到著し、買いでもして帰ろうとした瞬間、目の端にこちらを見つめる男の姿が見えた。

駅前にあるバス停付近に、小田さんがポツンと佇たたずんでいる。

仕事が終わる頃を見計らって、先にここで待っていたのだろうか。

改札を出ると同時に、小田さんがこちらへ近づいて來る。恐怖のあまり、思わずアパートとは反対の西口方面へ向かった。しかし、西口周辺は閑靜な住宅街が広がり、暗い道が多い。

とっさにコンビニがあることを思い出し、そこへめがけて駆け出すことにした。

    人が読んでいる<婚活アプリで出會う戀~幼馴染との再會で赤い糸を見失いました~>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください