1週間ぶりの出社で、し張しながらエレベーターを待っていた。

なぜか、前に並ぶ社員たちがチラチラとこちらを振り返る。後ろには誰もいないから、どうやら私のことを見ているらしい。

自分の席に著くと、後輩子の今井さんから聲を掛けられた。

「里穂先輩って、際順調なんですね。うらやまし～」

「なっ、いったい何のこと？」

「人事の小田さんがSNSで自慢してるみたいですよ。里穂先輩とのデート寫真」

今井さんから事を聴きいて、小田さんのSNSをチェックしてみた。

以前公園デートした時に一緒に撮った寫真や、お弁當の寫真まで堂々と公開している。

まさか、以前よりも際をアピールをしてるなんて……もう限界。

こんな狀態のまま心穏やかに仕事をすることなんて、とてもできそうになかった。

「課長。相談があります。ここでは話せないので、會議室までいいですか？」

山野課長は、不思議そうな表を浮かべ、了承した。

ひっそりとした會議室で、付き合った経緯からストーカー事件のことまでの詳細を話した。

「事はわかった。つまり、小田君との付き合いはもう終っているということなんだね」

すぐに話をわかってもらえて、をで下ろした。

「でもね、部長に伝えても、きちんと対処してもらえるかどうか……。

一応アプリを通しての付き合いだし、最初はお互いの都合で付き合ったわけでしょ。

それにマッチングに功したカップルが、こういう形で破局するとなると、社的にも印象が悪い。今後も、全社員へ積極的にアプリを広めたいと思っているからね。

しかもバレンタイン企畫に、二人で參加してもらおうという案まで出ているし」

課長の話を聞いて、呆然としてしまった。

會社側はストーカー行為よりも、破局したことを隠したいというのだ。

「力にはなりたいけど、僕の役職では、難しいかもしれないな」

済まなそうに笑う課長を見て、これ以上話をしていても進展がないことを悟った。

「わかりました。話を聞いて頂き、ありがとうございます」

力なく會議室を後にする。

すぐ席に戻る気にならなくて、エレベーターに乗りエントランスへ降りると、ちょうど小田さんとバッティングしてしまった。

向こうは數人の同僚と一緒にいる。

視線を合わせないように俯うつむいて通り過ぎようとした。

「鈴河さん、おはよう」

「おはようございます」

聲のトーンを落とし、儀禮的に挨拶をわした。

隣にいた同僚が小田さんに微笑みかける。

「照れてるよ。可いじゃん」

ボソッと呟いた聲が聞こえてくる。

早くその場を離れたくて、足早に外へ出た。

このまま、こんな狀態で仕事を続けなくちゃならないなんて……もう無理なのかもしれない。

お晝に萬智をい、外の定食屋に出掛けた。

「えぇっ！？　ストーカー？」

「シーッ。大きな聲では話せないんだけど……とても困っていて」

事ことの顛末てんまつを話すと、萬智は驚いた表をこちらへ向けた。

「まさか！　小田さんって、紳士的で一見穏やかそうに見えるけどなぁ」

「顔が広い萬智なら、小田さんについて詳しい知り合いがいるかもと思って」

「OK！　調べてみるよ。それと、帰りは必ず一緒に帰ろうね」

課長に相談して何も解決してもらえなかったのに、同僚には力強く応援してもらえるなんて。萬智の言葉がとても頼もしく思えた。