《婚活アプリで出會う馴染との再會で赤い糸を見失いました~》業務命令(3)

今日も何ごとも無く帰宅すると、珍しく遙斗が先に帰っていた。玄関で出迎えてくれた彼の顔を見て、ホッと一安心する。

「里穂、おかえり。今日は仕事を早く切り上げた。簡単な料理だが、できているから、まずは風呂にってこい」

帰宅して優しい言葉を掛けられ、お風呂にご飯まで。至れり盡くせりの待遇で涙が出そうになった。

ダイニングテーブルに並んでいたのは野菜とベーコンで煮込んだポトフだった。

こ、これで簡単な料理なの?

「遙斗って用だし、よく気が付くし、子力高いよね」

「もしかして、俺はいい奧さんになれるかもな」

「遙斗が、奧さん? ふふふっ。あはははっ……」

その言葉で、久しぶりに心から笑うことができた。

スプーンにすくった明なスープをひと口すすると、ほのかな甘さと心地よい香りが鼻に抜ける。

「なんだかホッとする味」

「最近、疲れてないか?」

「ううん。大丈夫。イベントが近いから、殘業はあるけどね」

泣きそうになるのを必死で堪こらえた。

こんなに優しくされてしまうと、自分が弱くなってしまいそう。

遙斗にこれ以上心配させたくはないから、もっと頑張らないと。

必死で自分をい立たせた。

* * *

翌日、仕事に取り掛かろうとして、また課長に呼び出された。

「鈴河さん、ホントに申し訳ない。上の命令で、今日から営業部の手伝いをしてもらえないかな」

「えっ!? 営業部……。でも、もうすぐイベントもあるのに……」

「部長が、自分が出した企畫をって……機嫌が悪くなってね。しばらくは営業部を手伝って、また落ち著いてきたら、宣伝部の方に呼んでもらえるよう話をするから。ねっ」

ここまで頑張ってきた仕事を、そんな理由で変えられてしまうだなんて。

「実は昨夜、小田君に聞き取り調査をした際に、鈴河さんからわれてアプリを使用し、際したとか、ストーカー行為は誤解されてるとか、とにかく大泣きして大変だったらしいんだ。なぜか上層部は彼のことを信頼しているらしくて、今後、小田君には際を諦めさせるから、このことは責任を問わないでもらいたいと言われた」

「そんな……でも、話の容がまるで違って……」

「鈴河さんには悪いけど、しばらくは別の場所で頑張ってもらうってことで」

「本當に小田さんは理解してくれたんでしょうか? 同じ會社にいたら、いつまた同じことをしてくるか……とにかく怖いんです」

「小田君はちゃんと約束したそうだから、大丈夫だと思う。今後社のいざこざが広がると、マスコミにも騒がれるし。今回は、引き下がってもらえないかな」

この會社は問題をかき消すために、私を配置転換することで決著をつけたかったらしい。

もうこれ以上楯突たてついても、何も変わらないんだ。

「わかりました。しばらくは営業部で頑張ります」

悲しくなりながらも、何も反論することができなかった。

もう誰にも相談することができない。

それも仕方のないことなのかも……。

強引にわれたとは言え、小田さんと付き合うと判斷したのは、紛れもない自分なのだから。

営業部では資料の整理や、お客様のお茶出し、簡単な力作業が中心となる。

新しいアイデアを出すことや、イベントへ向けての準備も無くなり、時間的にはゆとりができた。その代わり、仕事のやりがいは減り、し侘わびさも殘った。

この仕事だって、大切なことは充分理解している。

そうは思っていても、以前のような気力は湧いてこない。

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