あれは確か、３年前……。

「あんた、また別れたんだって？」

ＴSＡにある社エレベーターの扉を、雅が手でこじ開けてって來た。

プライベートの話をするために、扉を閉めるボタンを押さえ続ける。

「関係ないだろ。もう、どのと付き合っても一緒だ」

言い寄られた通りに付き合ってはみるが、いつも心が満たされることはなかった。

理由は自分でもなんとなくわかっていた。

「どうして、そんなに荒れてるの？」

「もうその話はやめろ」

里穂を見返すために小學、中學、高校とを鍛え猛勉強し、難関大學にった頃、數人のと付き合ってはすぐに別れることを繰り返した。

社會人になり、父親の後を継ぐため仕事を手伝うようになってからも複數のと付き合ってはみた。しかし、結局上手くはいかない。

里穂のことをずっと念頭に描き邁進まいしんしてきたからこそ、ここまで來たはずが、気が付くと目の前には何もない。そのことに愕然がくぜんとした。

昔の記憶に囚われている俺は、どうかしているのか？

そう思うこともあったが、彼のことを乗り越えない限り、前へ進めそうにもない。

知り合いの調査會社に、初めて里穂の辺調査を依頼した。

〈鈴河里穂。南関東の地元高校を卒業し、東京の私立大學へ進學。卒業後、ラングルというWEB開発の會社に社。

一人暮らし。現在、際男は存在しません。

総務部、営業部を経て、広報宣伝部に勤務されています。

趣味は映畫鑑賞、休日は自宅で過ごすことが多いようで……〉

調査書には沢山の寫真が添えられていた。

「なっ、なんだよ……すげぇ、可い……」

思い出の中の里穂は、大きいをした元気のいいの子(ちょいガキ大將）のイメージだった……。

いっそのこと現在いまの彼が自分好みでないのなら、諦めもついたはずだ。

ところが、寫真を見て余計に興味が湧き、里穂のことがますます気になった。

それから數日後、仕事の打ち合わせを早く済ませるため、社にある雅の個室を直接訪ねた。すると彼がパソコン畫面へかじり付くように座り、眉間にシワを寄せ、數字の表に見っている。

「新しい仕事か？」

「まだ検討中の案件なんだけど、ウチが出資して婚活アプリを共同開発する話なの。私の才能を活かせるビックビジネスよ」

システムエンジニアをしている雅は、父親を説得して、TSAの事業展開をアプリ開発に見出そうとしていた。

「ふ～ん。なんて會社だ？」

「ラングルよ。まだそれほど大きくはないんだけど、マッチングアプリで若い子に人気があるみたい。だから、婚活専門を立ち上げて、上場を目指してるんですって」

ラングル……どこかで聞いた名だ。

スマートフォンを取り出し、し前に里穂の辺調査をしてもらった時のデータを調べた。

「やっぱり……」

「遙斗、あんたは跡継ぎなんだから、今後のことも考えないと。だから、安定した彼を作って、早く両親ふたりを安心させなさい」

雅が偉そうに説教を始め出す。

こうして目の前に里穂と繋がる案件が現れたということは、どこか運命に導かれた見えない力が働いているのかもしれない。

赤い糸なんて信じてはいないが、今はそれを肯定するべきもののような気がした。

「それなら、協力してしいことがある。ずっと気になっているがいるんだが」

雅に洗いざらい話すと、すぐに呆れた聲を上げた。

「なっ、何よそれ。気になるなら、はっきりと告白すればいいだけでしょ？」

「簡単に言うな。２0年近く會っていないんだ。いきなり現れた俺をどう思うか……」

「モテるのに、どうして自信が持てないのよ」

「それは……」

それは里穂のことをずっと想っていたからで、俺が考えるには歪んだ思い込みも多あった。完璧な男でないと、振り向いてもらえないのではないか……そんな想いが強く、余計簡単には踏み出せそうにはない。

「ちょうどいいわ。このアプリは、AIを使って婚率が出るようにプログラムする予定なの。あんたが使ってみて、本當に彼と結ばれる運命なのかを試してみればいいわ」

「アプリに命運を賭けるっていうことか」

「どちらも功すれば、仕事も彼も両方手にる。一石二鳥ってことでしょ」

雅の言ってることは現実離れしているが、彼との再會する際のインパクトは絶大かもしれない。

アプリ開発の件は、資金提供や開発の段取り等、ＴSＡ部では俺と雅が一切を引きけ、２年で大きなビジネスへと長させた。

開発した婚活アプリ『Ｍマリッジプロミス』は人気急上昇。

途中、ラングルの宣伝報もってきた。

今回はクリスマスにイベントが開催され、社に參加者を募り、里穂のいる広報宣伝部は強制參加だという。

ついに萬全の制を整え、里穂と接するというミッションを開始する。

俺は絶対に功することを誓った。

里穂に自分のことを記憶してもらい、間違いなく彼を手にれる。

そのためには、しっかりと復讐の計畫を練らなくてはならない……。