香滴る外資系エリートに甘く溶かされて》2-4. 遠い夏の夜の記憶

「はい、みんな集合~!今からバナします!」

「柳ちゃん、元気すぎ」

「いいじゃん。最初の予約のお客様が來るまでまだ30分もあるし、たまには子同士語らいましょうよ」

いや、あんた男じゃんという突っ込みはもはや誰もしない。オネエではないと思うのだが、柳さんは々と謎だ。

「それで、柳ちゃんって今は人いるんだっけ?」

なんだかんだ言いつつも、電子タバコ片手に絵梨花さんが會話を始める。今、店で待機しているのはこの2人とルナさん、明日香あすかさん、遊里ゆうりさん、そして私だ。遅番で後から來るキャストもいるので、今いるのはこの6人だけだった。

「今は獨りを謳歌してるよ…って、違うんだよ!俺はリリちゃんの話が聞きたいわけ。リリちゃん、聞いてもいい?」

「それって、私が経験ないって話ですか?」

「そうそう!」

えぇ!?という顔で絵梨花さんがこちらを見る。他のお姉さま方もなんだなんだと近くの席に集まってきた。

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特に隠しておきたい訳でもないので、掻い摘んでこれまでをしたことがない理由と実は異し苦手だという話をした。そして、そのせいで最近よくいらっしゃるお客様にどう対応していいか分からず、悩んでいるという話も。

「ええ、めっちゃ意外だわ。ってか、そのお客様って榊原さんと一緒に來てた超絶イケメンだよね。初回の挨拶でいきなりリリちゃんに一目惚れしたって言ってた人」

「待って待って、何それ!?」

「その話、超気になってた!!ここしばらくリリちゃんご指名のびっくりするくらい形なお客様がいるって理ちゃんから聞いたんだよね」

「そうそう、榊原様と同じ會社の加賀谷様って方なんだけどすんごいよ?ついこの前も1人で來て、ずっとリリちゃんにべったりだった」

お姉さま方と柳さんが盛り上がる。柳さんの言うこの前というのは數日前のことで、なんと加賀谷さんは1人で來店した。若いお客様が1人で來店するのはとても珍しいのでキャストはもちろん、近くの卓のお客様たちも興味津々といった顔で時々こちらを見ていて、々と居た堪れなかった。

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ただ、その日の會話の容は気皆無な私の進路相談で、加賀谷さんのリサーチ能力と話に驚かされるばかりだった。おかげで化粧品業界に詳しくなってしまった。各社の強みと將來、企業風土を加味した上でのおすすめの就職先をプレゼンされて、ただただ勉強になった。そして、橘さんと佐倉さんが話していた通り、仕事モードな加賀谷さんは相當クールだった。時折、思い出したかのように朗らかに笑いかけてくれたのだが、そのギャップにうっかりときめいてしまった。

「あー、ほんと加賀谷さんのこと思い出すとが苦しいです……」

「発言だけ聞くとする乙そのままなのに、その割には顔が歪みすぎてるよリリちゃん」

「いや、だって…経験皆無な私に容赦なく好意を向けてくるんですよ?どうやって接したらいいのかほんとわからなくて……」

「えー?嫌じゃないならさっさと付き合っちゃえば良いのに。私だったら速攻で食べちゃうよ」

あっさりとんでもないことを言い出したのは明日香さんだ。私と同い年の彼はおっとりとした上品な見た目で、有名な私立子大に通う正真正銘のお嬢様なのだが、何を間違えたのか男遊びが超激しい。話を聞く度に彼氏が違うし、彼氏がいない時は暇潰しにホストクラブへ遊びに行くという猛者だ。

「こらこら明日香ちゃん。リリちゃん、びっくりして固まっちゃったじゃん!」

「えー、でもお客さんとそういう仲になっても別に良いんでしょ?」

「店でトラブルを起こさないならね。うちの店は営業ナシが基本だし、俺としてはお勧めできないねぇ」

やれやれといった素振りをしながら柳さんが釘を刺すと、明日香さんが「えー」と不服そうに抗議を始めた。そんな2人を見ながら、遊里さんが口を開く。

「リリちゃんってバイトだからノルマないよね?どういうにせよ好意を向けてくれてる訳だから常連さんになってくれそうだけど、私がリリちゃんの立場だったらこのままスルーし続けちゃうかな。ノルマないなら営業かける必要ないし、放置でいいと思う。っていうか、リリちゃんって夏休みの間だけって話じゃなかったっけ?」

「そうそう、香みかちゃんが急に辭めることになったから臨時バイトとして來てくれてる。夏はそこそこ忙しいってのに急に辭めやがったからなぁ……まぁ、それですぐリリちゃんを紹介してきた辺り、香ちゃんさすがだなってじだけど」

香というのは、お店で詩織が使っていた名前だ。ヤツは私を生贄、もとい自分のアフターフォローとしてこの店に連れてきた。働いていた期間は1年半程らしいが、評判は上々で指名客も結構いたそうだ。本當に詩織はちゃっかりしている。

「わ〜、香ちゃん!元気にしてるかな」

「元気にしてますよ。彼氏と毎日いちゃついてます」

「そっか、2人は大學の同級生なんだっけ。ちなみに加賀谷さんの話、香ちゃんにはした?」

「この前會った時にしだけ。お客様と付き合うのは何かと大変そうだから、お店を辭めるタイミングで連絡先渡すなりしてそこからに持っていけば?って言われました」

「おぉ~良いアドバイスだね!俺も香ちゃんに賛だわ」

「うんうん、それが一番ベストな気がする。こういうお店で働き続けるのに抵抗示す彼氏も多いしね」

何故か私と加賀谷さんが付き合う方向で話が盛り上がり始めた。お店での加賀谷さんの様子だとか、これまで何の話をしたのか事細かに聞かれてげっそりしていると、それまで相槌を打つだけだったルナさんがぽつりと話し始めた。

「水を差すようで悪いんだけど、その加賀谷さんって人は大丈夫なのかね。榊原さんの紹介だし、元は間違いないと思うよ?でも、ハイスペ超絶イケメンが子大生のラウンジ嬢口説いてるって事実だけ考えるとなんか…遊ばれてるんじゃないかって心配になっちゃって。私は加賀谷さん見たことないから何とも言えないけど」

夜職1本で10年やってきたというルナさんにそう言われるとぐうの音も出ない。私もその可能については常々考えているが、あの加賀谷さんの様子だとそれはないのかなと思っている。橘さんと佐倉さんにもあれだけ言われたし、と思っていたのだが続くルナさんの言葉に顔が引きつった。

「このお店のお客さんはそんなことしないって信じてるけど、前に働いてた銀座のクラブにいたんだよね。お遊びでの子をガチさせて、一晩過ごした挙句にドッキリでしたって言い切った客が。よく一緒に飲みに來てた同じ會社の上司や同僚もグルだったらしくて、みんなでそのの子の反応見て遊んでたんだって。ほんっとに最低だった」

UNIほどではないにしろ結構良い會社の人だったよと付け加えられて、私は一気にの気が引いた。就活相談をしていてに染みて分かったが加賀谷さんは恐ろしく賢い。その気になれば私を誑かすことなんて造作もないだろう。顔が悪くなった私を見て、柳さんが珍しく真剣な表で言葉を紡ぐ。

「うーん、俺もこの世界長いけど加賀谷様はそういうじではないと思うな。ただ……凄まじく重そう。一度でも付き合っちゃったらなかなか別れてくれないタイプだな。あと、エグい趣味ありそう」

「エグい趣味……?」

柳さんの反論に驚きつつも、最後の言葉が気になった私は思わず聞き返してしまった。そして後悔した。

「あ、聞いちゃう?男の勘だけど、加賀谷様はエッチすんごい激しそう」

「あー、わかるわかる。絶倫な予がする。めちゃくちゃ濃厚そう」

「————っ!!!柳さんも絵梨花さんも真面目な顔で何言ってるんですか!」

瞬時に2人に突っ込みをれた。明日香さんと遊里さんが聲を出して笑っている。真っ赤になってぷるぷる震える私の肩をルナさんがそっとでてくれた。

「あぁ……加賀谷さんってそっち系なのね。リリちゃん、頑張ってね。困ったことあった聞いてくれていいから」

何とも言えない微笑を湛えたルナさんが優しい口調で勵ましてくれる。何を勵ましてくれているのかについては考えたくない。みんな、私が経験ないってこと忘れてないかな。

そうこうしているにお店の扉が開いて、今日最初のお客様がいらっしゃった。子會はここまでだ。

「リリちゃん、顔真っ赤だししばらくバックヤードで待機ね。次のお客さんの席ついてもらうから。あ、あと今日も遅い時間に加賀谷さん來るらしいからそこもお願い」

無駄に爽やかな笑みを浮かべた柳さんが私にそう言ってきた。しかも、今日も加賀谷さんが來るらしい。それは子會をする前に伝えておいてほしかった。柳さんは赤い顔で項垂れる私を見て、ニヤニヤしながら仕事に取り掛かったのだった。

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