香滴る外資系エリートに甘く溶かされて》3-3. 忘れられないと當

いつかのように、が熱く火照る。

ノアに腰を抱かれた時は嫌悪で冷たい汗が背中を伝ったというのに、今はどうだ。腕を摑まれて、加賀谷さんの後姿を見ながら無理矢理歩かされているというのにに熱がどんどん溜まっていく。やっぱり、私はこの人のことが————と考えかけたところで急に雨が降ってきた。

加賀谷さんが舌打ちをして立ち止まる。近くのホテルの軒先に連れて行かれ、名殘惜しげに腕を離された。彼は苛立った手つきで雨に濡れた髪をくしゃりと掻き上げる。私が呆然としたままその様子を見ていると、気まずそうに話し始めた。

「……オフィスを出る時に、君と仲のいいの子たちが話しているのを偶然耳にしたんだ。それで、居ても立っても居られなくなって君を探しに來たんだ」

「……な、んで」

「君が好きだからに決まってるだろ」

苦しそうに笑いながら加賀谷さんがそう告げた。

「あの時と、最後に會った夜と同じだよ。俺の目の前で君が誰かに奪われるなんて耐えられない」

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どうして、そんなことを言うんだろう。そんなことを言われたら、私の心なんて呆気なく崩れ落ちるのに。

冷たい雨に濡れた頬に熱い涙が流れ落ちた。

5年前と変わらずにしいのに、あの時よりもさらに魅力的になった加賀谷さんの凄絶な香に眩暈がする。その香に理を溶かされた私は、きっと今、酷い顔をしている。

そんな自分の表を加賀谷さんに見せたくなくて、顔を逸らす。

「……聞きたいことも、話したいこともたくさんある。でも、今は1つだけ答えてくれれば十分だ」

その言葉に心臓がドクンと音を立てる。

「君は、俺のことが好き?」

そんなの、答えはずっと前から決まってる。5年もの間、何度も忘れようとしたのにどうしても消え去らなかった。

それでもすぐに答えられないのは、あの朝、私の心に刺さった小さな棘が心の中でずっと燻っているせいだ。

「私は……」

震えるで言葉を紡ぐ。簡単な質問なのに、どう答えるべきか分からない。なんの答えも持たないままゆっくり前を向いて、彼と視線を絡ませた私は言葉を失った。

————酷い顔の男がいた。

ぐちゃぐちゃにれたで歪んだ顔を見た瞬間、自分の心の痛みなど途端にどうでもよくなった。この人に、私の大好きな彼に笑っていてしい。その一心で私は彼に想いを伝えた。

「貴方のことが、好きです」

***

それからどうなったかは………察してしい。

ノアにホテルへ行こうとわれた時はいかに逃げるかしか考えられなかったのに、この差はなんなんだろう。

5年ぶり、2回目の行為は尋常じゃなかった。初めての時も大概で、あれから數日間は下腹部の違和が取れなかったが、今回はもっとひどい。

エッチすんごい激しそう。絶倫な予がする。めちゃくちゃ濃厚そう。

いつか誰かに聞かされたあの言葉は見事に合っていた。何度し合ったのか、記憶がない。昨夜のお酒のせいでし重い頭を起こして、軋むに力をれてホテルのベッドから立ち上がろうとした————が、腰に手を回された。

「今度は絶対逃さないよ、玲奈」

再びベッドにい止められた私をしい顔が見下ろしている。

「……春都さん、もう逃げないから。というか、立てないんだけど…」

「逃げられないように立てなくなるまでしたに決まってるでしょ?それと、名前」

「……春都」

ふふ、と幸せそうに笑った彼が顔中にキスを降らせてきた。なんだか恐ろしいことを言っていたような気がするが、キスをけ止めるのに必死な私は途中で考えるのをやめた。

雨宿りに立ち止まったホテルの軒先で想いを伝え合った私たちは、そのまま雪崩れ込むようにを確かめ合った。5年前と同じように昨夜は彼に熱く求められて、私もまた彼を求めて、互いのを余すところなく慈しんだ。

してる』

を滲ませて激しく私を求める彼の姿を思い出すだけで気が狂いそうだ。私の知る普段の彼は優なイメージで、的な訳ではないのに”しい”とか”香”という表現がしっくりくるような人なのに、夜は違う。溢れた香が結して滴り落ちるような、そんな濃厚さを纏わせて私にを注ぐ。

不埒なことを考えているのがバレてしまったのか、笑顔の春都が一層近づいてきた。

「ねぇ、もう一回したい」

耳元で吐息混じりにそう告げた彼は、彫刻のように均整の取れたり寄せてきた。昨夜、數えきれないほどし合ったのにそんなことを言う彼が信じられない。

「ダメです」

私も私で全が心臓になったかのように脈打っている。を捩って彼から離れようしたが逆効果だったようだ。全をぴったりくっつけられ、そのままの狀態で強く抱きしめられた。

「〜〜〜〜〜〜っ!」

まだまだ力が殘っているらしい彼は私にじゃれついてくる。

「ちょっと!!どうなってるんですか!!!」

「あはは」

「貴方もう32歳ですよね!?」

「わぁ、ちゃんと覚えててくれたんだ」

當時と同じ表で春都が朗らかに笑う。その顔をまた見ることができて本當に嬉しい。思わず私まで笑ってしまった……が、大事なことを思い出した。

「そろそろチェックアウトの時間ですよね。とりあえず支度して外に出ませんか」

「あー、そうだね」

「シャワーも浴びたいですし……って、春都!?」

春都はにこにこしながら私を橫抱きにしてベットから立ち上がった。不安定な勢に思わず彼の首に縋りつくと「さすがにこの狀態じゃ外には出られないからシャワーを浴びないとね。でも、今の玲奈は1人じゃ立てないでしょ?」と妖しげに目を細められた。「いえ、1人でれますから!!」と暴れると「もう敬語で喋るのもやめにしない?もっと気楽に話しかけてしいな」と見當違いなことを言われて…………シャワールームでもう一度された。ただを洗い合うだけで済む訳がなかった。

熱いシャワーを浴びながら互いの舌を絡ませ合うと堪らなく気持ちよかった。キスの合間に「…っこんなことしてたら、チェックアウトに間に合わない」と息も絶え絶えに伝えると「玲奈が眠っている間に延長しておいたから大丈夫」とさらりと言われた。

とんでもない男に捕まってしまったのではないかという想いが込み上げて來たところで、私は逆上せてまた意識を失ったのだった。

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