《香滴る外資系エリートに甘く溶かされて》4-3. 初夏の日差しを浴びて
食事を終えた私たちは、せっかくなのでデザートとお茶も楽しむことにした。そのタイミングで私は別の話を切り出した。
「もう知ってると思うけど、改めて自己紹介させてもらえない?あの頃は仕事の関係で々話してなかった…っていうか、噓吐いてたから」
自分でそう話しながら、彼に自己紹介された時のことを思い出して懐かしくなった。もう、全て打ち明けてしまってもいいだろう。
「それは是非聞かせてしい。この1週間で々調べたけど、何もかも違ってびっくりしたよ……そもそもなんであのバイトをしてたの?」
「ああ、それは————」
詩織にわれてあのバイトをしていたという話から始まって、なぜ噓をついていたのかという理由。実は同じ大學出だということや本當の年齢まで打ち明けた。レストランで話をしているので、私がラウンジで働いていたということを周囲に悟られないよう気遣いつつ春都は々と質問してきた。私としては會社にバレさえしなければそれでいいのだが、そんな彼の配慮が嬉しかった。そして、一通り話を聞き終えた春都はテーブルに顔を突っ伏した。
「本當に見事に噓吐かれてたんだね……後々になって、榊原さんにああいうお店で働いてる子の話すことは大フェイクだからって言われた時にはもう遅かったよ……君の本當の名前すら知らないことに気づいて絶した」
「ああ、名前ね………」
「なんで教えてくれなかったの?」
思わず相槌を打ってしまったが余計だった。咳をして誤魔化そうとしたが、私を見つめる瞳が切なげに潤んでいて、恥ずかしさを堪えてでも説明せざるを得なかった。テーブル越しにを乗り出して、小聲で彼に話しかける。
「……激しすぎて…その、してる時に伝えようとしたんだけど………」
しどろもどろになりながらそう言うと、意味を理解した春都が真っ赤になった。思い當たる節があるようで彼は赤い顔のまま頭を抱え始めた。私ももう一度咳払いをして、居住まいを正す。
「…………ちなみに、なんでリリって名乗ってたの?」
「お店に面接に行った時、百合の花が飾ってあったから。ただ、前に百合子さんって人がいたらしくて。それで、英語のLilyから取ってリリになったの」
「……そうだったんだ」
「適當につけた割には気にってたよ」
アールグレイのアイスティーを飲む。リリちゃん、と甘い聲で呼んでくれた彼を思い出した。たまには、またあの名前で呼んでもらうのも良いかもしれない。
ついでに、今の會社に就職した理由も話した。教えてもらった知識が大いに役立ったと今更ながら謝を伝えると、春都は何とも言えない表で微笑んでいた……彼への失から逃避するように就活にのめり込んで、心ともにボロボロになった話はさすがに伏せた。
春都もあの當時のことについて話してくれたが、概ね店で聞いていた通りの容だった。ただ、1つだけ隠していたことがあるとすれば、當時めちゃくちゃ忙しかったらしい。今朝ホテルでも同じ様なことを言っていた。早朝から深夜まで時間構わず會議の予定をれられて、隙間時間にタスクを処理する。そんな日々を粛々とこなしていたそうだ。榊原さんにお願いして、接待という名目であの店に行けるようかに調整していたんだとか。職場では終始クールな部下のささやかな希を榊原さんは葉えていたらしい。そこまでしてでも君に會いたかったんだよ、と彼は言い添えた。
話を切り上げた春都に「そろそろ行こうか」と聲を掛けられた。外はまだ明るいが、日が傾き始めている。
————ついに彼の部屋に向かう。レストランにる前に自分から言い出したこととはいえ、張してきた。食事中はあんなにリラックスしていたのに。
「……乗って」
春都も表がし固い。手を引かれて再びタクシーに乗り込み、そこからは2人とも無言だった。見覚えのある低層マンションの前で降りて、彼と手を繋いで部屋へと向かった。
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