香滴る外資系エリートに甘く溶かされて》ex 2-2. 私と彼と悪友たち

「玲奈、家に著いたよ。降りて」

「やだ!このまま春都にくっついてたい」

心のままに言葉を放つ。さすがにこうなってしまえば自分でも分かる。私は今、泥酔している。

5人での飲み會は想像以上に盛り上がってしまい、無事終電を逃した私たちはタクシーで帰宅した。あまりに酔ってしまってタクシーの座席から立つのが億劫になってしまった私が春都に頬を寄せて甘えると、彼は役得とばかりに目を輝かせて私を背中に乗せてくれた。頭の片隅にいる冷靜な私が「殘業で疲れてる婚約者に酔っ払いの重いを背負わせるなんて!信じられない!」と絶している気もするが、春都の背中が溫かくてどうでもよくなってしまった。もうここから離れたくない。そう思って、ぎゅっと彼の背にしがみつくと春都の耳が赤くなっていくのが目にった。それが堪らなくかわいくて思わず引っ張ってしまった。

「ちょっと、玲奈!何してるの!」

「ふふふ、赤くてかわいかったから」

やっぱりなんだか楽しくなってきた私は春都の背中から飛び降りて、洗面臺へと向かう。染みついた習慣というのは凄いものでこんな狀態なのに手を洗って、メイク落としまでして部屋著に著替えた。セクシーな下著をに著ける気力はないので、春都の部屋著を拝借する。いい加減自分のルームウェアをこの家に持ってくるべきだと分かっているのに、なんだかんだ事足りてしまっているのでもう自分の部屋には長いこと帰っていない。自分の部屋はさっさと解約してしまって、この家の1部屋に荷を押し込んでしまおうかなとかに畫策している。ちなみに、このことはまだ春都には話していない。

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すっぴんになって春都の部屋著を著た私はキッチンへと向かう。グラスとワインとおつまみを持ってリビングのサイドテーブルの上に置いた。グラスになみなみとワインを注いで、しい人の名前を呼ぶ。

「はるとー!早く來て!飲みなおすよー!」

「はあ!?玲奈まだ飲むつもりなの!?」

驚いた顔をした春都がこちらに近づいてくる。彼もいつの間にか部屋著に著替えていた。もうお水かお茶にした方がいいんじゃないかな?と私を心配そうな顔で覗き込んできた。

「えーーー、やだ。はると全然飲んでないじゃん!」

「そりゃあ、俺が最後に著いたからね…って、玲奈なんか舌足らずになってない?もう一回俺の名前呼んでみて」

「はると」

「………かわいい」

「はると、おさけのも?」

彼の口にグラスを押し當てた。彼は観念したようで、グラスをけ取ってくれた。わたしもナッツを摘みつつ、自分のグラスに注がれていたワインを飲み干す。

「うわ、玲奈…いくらなんでもそんな飲み方したら明日に響くよ……」

「たまにはいいの。こんな私はいや?」

「………いや、とても良いです」

グラスをテーブルに戻して、春都の腳に頭を乗せた私が上目遣いに彼の瞳を見つめるとあっさり彼は陥落した。ちょろい。酔っ払いというのは意外とこういうことには頭が回るのだ。この勢だとお酒が飲めないので、私はパッと起き上がって彼の肩にもたれかかることにする。

「それにしても今日は楽しかったねー」

「そうだね、そうかな……」

「はるとの浮気の話もおもしろかった」

「やめてってば!誰とも付き合ってないし、そもそもそういうことできないだったんだから!」

「あはは、今じゃとっても元気なのに!」

春都が凄く赤い顔をして、両手で顔を隠した………何の話かは察してしい。私としても、婚約者のセンシティブな話を友達の詩織に聞かれて恥ずかしかった。しかも、酔っぱらった橘さんにまんまと話を振られて、春都と私の今の夜の事についても話しかけてしまって、というかし話してしまって春都に全力で口を押さえられた。

「玲奈、そんなこと言ってると襲っちゃうよ…?」

「まだ飲みたいからだめ」

「そんな斷り方ある…?」

しょんぼりした顔で春都がこちらを見つめている。おそらく、春都もそこそこ酔っている。よくよく考えると、ここまで泥酔した狀態で彼と會話するのは初めてだ。酒量という意味ではお店で働いていた時も結構飲んでいたが、やはり気安い人々と飲むお酒は格別に酔いが回るらしい。しかも、今は誰よりも心を許している彼と2人きりな訳で。お互いこんな狀態になるのも然もありなんというじだ。

「それにしても、まさか橘が詩織に持って帰られるとは」

「ふふっ……玲奈、橘のこと呼び捨てになってるよ。でもほんとに。あれは意外だったね」

「はるとと2人きりだからもういいかなと思って。まぁ………詩織だからね」

そう、なんと橘さんが詩織に持って帰られた。厳には持って帰られたというか押しかけられたというか…何にせよあの2人は今、一緒に過ごしているはずだ。

「それにしても、詩織さんが弁護士だってことは俺も知らなかったよ」

「厳には司法修習生だけどね。ほんっと、あの子はあんなじだけど賢いから……まぁ、UNIに勤務されていらっしゃるお兄さま方には敵いませんけど?」

「そんな言い方しないでよ……単純比較はできないし、そんなことを考えるのは無意味だね」

春都がふと敏腕マネージャーの顔を覗かせる。その顔も素敵だが、せっかくいい気分で酔っているというのにそれは違う。だから、私は彼の頬をつねった。

「うわっ…玲奈なにすんの!?」

春都のびっくりした顔が面白くて床を転げまわった。その狀態のまま、私は話を続ける。

「橘のあの顔も面白かったな。詩織がいじめたくなる気持ちも分かる」

詩織が司法修習生だと知った瞬間の橘さんの顔が傑作だったのだ。なんでも、彼はつい先日新規で提案した案件の契約書チェックを社の法務部に依頼したところ、ボロクソに言われたんだとか。その直後ということもあって弁護士がややトラウマになっているらしい。しかも、詩織は直前に春都を焚きつけて橘さんを絞らせていた。元を正せば、私たちに余計なことを言った橘さんが悪いのだが…まぁ、そういうこともあってとにかく詩織が弁護士の卵だと知った瞬間、それはそれは嫌そうな顔をしたのだ。

そして、その弁護士の卵は格に…というか男の趣味に難がある。ドSなのだ。大學時代はそうでもなかったはずなのだが、いつの間にか詩織は王様になっていた。詩織が本格的に橘さんを口説き始めた時には殘りの3人で顔を見合わせてしまったが、まぁ大丈夫だろうということで放っておくことにした。どうやら橘さんも詩織も異遊が派手なタイプの人間で、良くも悪くも手慣れているようだ。

私と春都としては、あの2人には飲み會で散々恥ずかしい目に遭わされたのでちょっぴり良い気味だと思っている。ちなみに佐倉さんは颯爽と自宅に帰っていった。5年前と同じで相変わらず奧様のことが大好きだそうだ。佐倉さん、最高です。

「まぁ、確かにあの顔は面白かったけども。それにしてもさぁ……橘って関係派手だけど誰かに…何ていうの?組み敷かれる?みたいなことは経験してないはずなんだよね。あいつが常にリードする側だから」

「へぇ、じゃあ今夜は初験なんだね」

「ねええ!!さっきから言がおかしいよ!?」

「だって酔っ払いだもん」

ふふふ、と笑い転げているうちにまた酔っ払い特有の悪いことを思いついてしまった。を起こして、わざとらしく服をいで春都をする。

「ねぇ、たまには春都も私に組み敷かれてみる?」

できる限り妖艶な表を作って、彼の顔を覗き込む。

「…………………はい」

春都はしばらく絶句していたが、どうやら乗り気らしい。夜はまだまだ長そうだ。

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