《香滴る外資系エリートに甘く溶かされて》ex 5-2. 明るい海でを告げる
そして、本來なら日本に帰國する予定だった日に私はロサンゼルスの空港に降り立った。
アメリカ大陸を東から西に6時間かけて橫斷した先に待っていたのは、まばゆい日差しと乾燥した空気だった。背の高い椰子の木が立ち並ぶ大きな道路と明るい合いの海。著陸寸前に窓から見た景はなんとなく想像していたアメリカ西海岸のイメージそのものだった。もうすぐ10月だというのに空港には夏を彷彿とさせる気な雰囲気が漂っている。出発直前のニューヨークの空がどんよりとした雨模様だったこともあって、そのギャップに驚いた。
無事こちらに著いた旨を春都に連絡して、私は予め待ち合わせ場所として指定されていたカフェに向かう。到著ロビーの近くにあるというそのカフェで彼は待っているらしい。1ヶ月振りに彼に會えるのかと思うと、見知らぬ場所にも関わらず私の足取りは軽くなっていった。やっと、やっと春都に會える。再會してからまだ數ヶ月しか経っていないのに、すっかり私の日常にり込んできた彼と離れて暮らす日々は辛かった。もちろん、研修に行ったことを後悔している訳ではないが、それとこれは別なのだ。
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すっかり浮き足立った私は到著ロビーを抜けて、指定されたカフェを探すためにきょろきょろ周囲を伺っていると突然聲を掛けられた。ラテンな雰囲気漂う2人組のお兄さんたちだった。黒髪に焼けた、そして腕に彫られた大きなタトゥーを見て思わず後ずさる。
《やぁ、人なお姉さん。良かったら俺たちとお茶しない?》
《うんうん。俺たちもここで友達を待ってるんだけど、せっかくだしお姉さんと話してみたいな》
にこやかな笑顔ではあるが、その厳ついルックスに慄いてすぐに返事が出てこない。困った私がおろおろしていると、馴染みのある溫に後ろから抱き締められた。
《悪いけど、彼は俺の婚約者なんだ》
電話越しにずっと聞いていた艶のある低い聲。背中が甘く痺れる。堪らなくなった私はを捩って、彼のに正面から抱きついた。私が世界で一番大好きな彼だ。上を向いて彼の名前を呼ぶと、彼もまた私の名前を呼んでくれて。そんな些細なことがどうしようもなく嬉しくて私は破顔した。
《おやおや、隨分熱烈だね。邪魔して悪かったな》
《いつまでも末永くお幸せにな!》
おっかない見た目の2人組は一層笑顔になると、私たちに手を振りながら去っていった。思わず春都と顔を見合わせて笑ってしまった。
「あははは!!今のお兄さんたち何だったの!?言と見た目が合ってなさすぎ!」
「ふっ…!!たしかにちょっと珍しいじの人たちだったね」
春都のに抱きついたまま笑っていると、彼が私の髪をでてくれた。その優しい手つきにしさが込み上げてきて彼の頬に手を添えた。期待を込めながら、彼の瞳を覗き込む。
「春都、ただいま」
「おかえり、玲奈」
久しぶりに見てもやはりしい彼の顔が近づいてきて、私に熱いキスをしてくれる。大膽にを食まれ、私も彼の艶やかなを堪能する。互いを求め合うあまり、どんどんキスが深くなっていって次第に2人の舌が絡み合う。多くの人々が行きう空港の騒めきに混じって小さな水音が響く。
あまりに激しいキスに息を止めてしまった私が呼吸を求めると、春都のがほんのしだけ離された。またすぐにがれ合ってしまいそうな距離で私は彼に話しかける。
「………いくら海外の空港とはいえ、激しすぎじゃない?」
「そうかもね。でも俺としては全然構わないよ。俺の唯一の人だって、君を世界中に見せつけたい。そのくらい、久しぶりに玲奈に會えて嬉しいんだ」
あまりに気障な言葉に私が目を見開いて固まると、彼は再びキスを求めた。腰を抱かれて、まるで世界に2人きりになったかのような気分で彼のをけ止める。永遠にこの時間が続けばいいのに。そんなことを願ってしまうくらい、心が満たされて幸せな一時だった。
「ん————はっ———あぁ」
その気持ちよさについ聲がれてしまった。私の陶然とした聲音に、何かを察したのか急に彼のが離れていった。両腕を摑まれて、まで引き離されてしまう。
「………ちょっと、さすがにそれはまずいかな。その顔は俺以外に見せないでしい」
狼狽えた表を浮かべながら、先程と矛盾したことを口にする彼がおかしくて。私は再び彼のに顔を寄せた。彼は目元に手を當てて、天を仰いでいる。
「今日はこのまま空港周辺でデートしようと思ってたんだけど……それはまた今度にしよう。玲奈、ホテルに行くよ」
いつかのように彼に強引に手を引かれて、その背中を見ながら私は空港を歩く。彼の耳が赤く染まっているのを見て、私はまた聲を出して笑ってしまったのだった。
***
久しぶりの再會に盛り上がってしまった私たちは真夜中に起きた。
空港近くにあるラグジュアリーなホテルの広々とした部屋に連れてこられて私は瞠目した。これはとんでもなく贅沢なことをしている。部屋にった瞬間、直でそう悟った私が春都を振り返ると「たまにはね。こういう時のために俺は普段頑張って働いてるんだから楽しまなきゃ」と悪戯っぽい顔でウィンクされた。
その後は、滴り落ちるほどの香を振りまく彼に組み敷かれて………今に至る。私が目を覚ますと同時に隣で微睡んでいた春都も覚醒したようで、顔を見ながらくすくすと笑い合った。2人とも、互いにしかを抱かないせいか相當に飢えていたらしい。
散々し合ったを支え合って、私たちはバスルームへと向かった。海外にいるとなかなかお風呂に浸かれないから、と話す春都が予約してくれたこの部屋には2人でってもゆとりのある大きなバスタブが備え付けられていた。大きな窓のある開放的な雰囲気のバスルームで互いのを慈しみながらこれからの予定を話し合う。
「ねぇ、食事しない?さすがにおなかすいちゃって」
「そうだね、俺も頑張りすぎてもう限界」
「ふふ、春都はなんで毎回ああなっちゃうんだろうね。私より6歳も年上なのに」
「わぁ、気にしてるんだから敢えて言わないでよ……」
広々としたバスタブは正方形のような形をしている。隣でお湯に浸かっている春都が甘えるように私の肩に頬を摺り寄せてきた。
「気にしてたの?私、年齢については今までほとんど気にしたことなかったかも。強いて言えば、年上の彼氏ってむしろ憧れてたくらいな気がする」
「ほんとに?なら、俺が年上で良かったよ」
あまりにも真剣な顔つきで彼がそう話すので笑ってしまった。こうしていると本當に6つも歳の差があるのか分からなくなる。
「それで、食事はどうしようね?ルームサービスとかあるのかな」
「あ、そういえばバーが開いてるはず。軽食があるかは微妙だけど電話でフロントに確認してみようか」
「そうだね。じゃあそろそろ上がって———っんん———あっ——は、ると」
「—ん———っく———っ、もうししたらね」
「な、んで————たくさんし、たのにっ————んぁ!」
「————っ、こんな年上の彼氏はいや?」
彼の完璧な形のがしく歪んでいる。それに、瞳には妖しいが揺らめいていた。あんなにしたのにまたその気になってしまったらしい彼に極限まで溶かされて、食事どころではなくなってしまったのだった。
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