《香滴る外資系エリートに甘く溶かされて》ex 5-3. 明るい海でを告げる
「それで、どうして急にロサンゼルスに來ることにしたの?サプライズだって言ってたけど、電話貰った時は本當にびっくりしちゃった」
結局、夜通し睦み合ってしまった私たちはルームサービスの朝食を早めに運んでもらうことにした。春都と再會した頃は仕事が忙しいとよく食事をスキップしていた私、というか私たちだったが、最近は健康のために決まった時間に食事を摂るよう心がけている。だからこそ、もう本當に空腹で限界だった。
バターと生クリームが贅沢に使われたオムレツを味わいながら私は彼に話しかける。殊の外、真面目な顔になった彼が私を見つめながら話を切り出した。
「急なことだし、玲奈が良ければだけど………俺の家族に會ってしいんだ」
「ご家族、って…そういえば、西海岸で生まれ育ったって初めて會った頃に教えてもらったような気がする」
「そう、よく覚えてたね。俺の実家はロサンゼルスの海岸線沿いの街にあるんだ」
早朝の爽やかな日差しを浴びながら、上品に紅茶を飲む春都がそう告げた………のだが、高級ホテルのスイートルームの窓際で紅茶片手にバスローブ姿で佇む彼があまりにも決まりすぎていて、そちらに意識を持っていかれてしまった。こんなに華のあるアジア系男、彼しかいないのではないだろうかと真剣に考えてしまった。
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「あれ、玲奈?話聞いてる?」
「う、うん。気にせず続けて」
また余計なことを言ってベッドに連れ戻されてはひとたまりもない。さすがに今日は彼とデートを楽しみたい。パンを口に運びながら話の続きを促した。
「初めて西海岸に來るならやっぱり真夏がいいかなとも思ったんだけど、ちょうど俺も休みが取れたし、玲奈もアメリカにいたから今回手配してみたんだ。俺の休暇が取れた時點で家族には連絡をれてあって、いつでも大歓迎だって。実家の近くに住んでる姉たちも玲奈が來るならすぐに行くって。あんまり大人數だと玲奈も気負うだろうし、研修で疲れてるようならまた次の機會にしてもいいかなと思ってはいるんだけど…」
「いや、是非ご挨拶させてしい。だって春都の家族だもの」
「……本當?なんというか、うちの家族に會うのは結構大変だと思うんだけど、できるだけフォローするから困ったことがあったらすぐ俺に言ってね。玲奈もよく知ってると思うけど……俺、長いこと人がいなかったから家族に相當心配されてたんだよね。で、そんな息子に急に彼ができてあっという間に婚約したから、もうなんか凄いその話題でもちきりらしくて……俺としても姉たちにあれこれ質問される未來が見えててちょっと憂鬱、っていうか面倒だなって思っててさ」
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「ふふ、春都は家族に大事にされてるんだね」
「まぁ、大事にされてるとも思うけど末っ子だからっておもちゃにされてるがあるよ。あー、もう玲奈が姉たちに會って引かないか心配」
春都は心底うんざりした顔を浮かべている。むしろ、私としては彼にこんな表をさせるご家族が気になってしょうがなかった。お會いできるのが楽しみだ。
「ご家族に會うのはいつがいいとかってある?」
「それが早く會いたいってうるさいんだよね。俺としては帰國直前の來週末あたりがいいかなって思ってたんだけど、今朝も姉さんたちからメッセージが來ててげんなりしたよ————って、噂をしてたらユリアからだ」
どうやら姉たちのうちの誰かから電話が來たらしい。出ても良いか視線で問いかけられたので首肯した。
《ユリア、急にどうしたの。え?玲奈はいつ來るんだって?は?みんな今日來ると思って準備してるの!?俺そんなこと一言も言ってな……はい、はい………いや、それは本人に聞かないと……わかったよ!確認すればいいんだろ!》
春都がこちらを向いた。さすがに私も何の話をしていたのか想像がついている。彼はまたしてもげんなりした顔をしているが、私の答えは決まっていた。
「玲奈、うちの家族が————」
「春都、私も早く春都の家族に會ってみたいな。今日お邪魔してもいいかな?」
これからの予定を考える。研修中もちょっとしたレセプションがあったので、彼の実家へ伺うにあたって問題のないコーディネートはできそうだ。春都に貰った婚約指も私の薬指で輝いている。當然、化粧品もある。となると、後は手土産だろうか。ご家族は何が好きか春都に聞こうとすると彼が私の橫に立っていた。
「玲奈、大好き」
甘い聲で私に橫から抱きつく彼にときめいた。昨夜のように気を迸らせる彼も、こうして子供のように甘えてくる彼も堪らなく大好きだ。突然の訪問ではあるが、彼のご家族に気にってもらえると良いなと思いながら私は彼の頭を優しくでたのだった。
***
「…えっと……あちらがご実家なの………?」
「その反応も無理ないよね……俺が中校生くらいの時に建て直したんだけど、その時に父さんが張り切っちゃったらしくて」
遠くから見ても分かるほどに立派なその建築は、どこか日本らしさをじるモダンな佇まいをしていた。艶のない黒い石としい白木が融合した外観はまるで蕓品。和洋折衷を現したその建の周囲には広大な庭園が広がっていて、まさに大邸宅と言う言葉が相応しい————加賀谷邸は私が思っていた以上にとんでもなかった。
「まぁ、とりあえず行こう」
「………うん」
ハイセンスな旅館のようなその施設を実家だと肯定した春都を信じられない目で見ていると苦笑を浮かべられた。獨特すぎて周囲の景観と浮いちゃってるよね、と彼は言うがそんなレベルじゃない。なんだか気が遠くなってきた。
「今更だけどめっちゃ張してきた……えぇっと、お姉さんたちの名前は上からサラさん、エレナさん、ユリアさん。皆さん結婚してらっしゃってて、エレナさんにはお子さんが2人いて………」
「大丈夫。俺が隣にいるし、玲奈から話を振るまでもなく姉たちに質問攻めにされるだろうから………っていうか、うちの家族について覚えるより玲奈と俺のアレコレを口裏合わせしとかないとまずいかも」
春都は何かに気がついたような顔で私に視線を向けた。ご実家までもうし距離があるのでまだ2人きりで話す時間は殘っている。背の高い街路樹が並ぶ幅の広い歩道を歩きながら彼に話の続きを促した。
「…というと?」
「2人の馴れ初め?って言うのかな、出會った経緯とか婚約に至るまでの過程を々聞かれると思うんだよね。5年前に俺が一目惚れしたけど縁が無くて結ばれなかった初の子と仕事関係で再會して、みたいなじで家族には話してるんだけど…最初の出會いがお店だったのは伏せた方がいいよね?」
なるほど、そういうことか。確かにその話は敢えて家族に話す必要は無さそうだ。私としても詳しく聞かれるのは気恥ずかしい。なので、2人の出會いは大學のキャンパスということにした。偶然なことに出大學が同じなので、OBとして遊びに來ていた春都が在校生の私に一目惚れして聲を掛けたという設定にしてみた。
「………なんか、想像してみたらちょっとドキドキしてきた。リリちゃんじゃなくて普通の大學生の玲奈でしょ?ちょっと會ってみたかったな。どっちにしろ一目惚れしてた自信はあるし」
「いや、どうかな。今は仕事柄そこそこ気を遣うようになったけど、あの頃の私はほんと地味な大學生だったし。春都に見つけてもらえなかったかもね?」
「いや、絶対に見つけてたよ」
春都が私の腰を抱き寄せる。微笑を浮かべてはいるものの、その聲音には確たる自信が滲んでいた。そんな彼の様子を見ていると、どんな道を辿ったとしても結局こうなっていたような気がしないでもない。
「そういえばさ、玲奈はいつ俺のことを好きになってくれたの?実はずっと聞いてみたいと思ってたんだけど」
そう尋ねられて、私は過去のことを考えてみる。なくとも、初めてを捧げたあの夜には間違いなく春都にに落ちていた。でも、それよりも前から惹かれていた。
「んー、いつかな。自分でもわかんないや」
「ええ、そうなの!?もうちょっとよく考えてみてよ。きっかけとかなかったの?」
「そうだなぁ………意外と私も春都に一目惚れしてたのかもね?」
5年越しに1つの可能に気づいた私は悪戯っぽく彼に微笑んでみた。そんな私の様子を見て、彼は顔を真っ赤にしたのだった。
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