《『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……》12話 《 神の領域 》

12話

風が吹いた。

疾風。

アダムが、を低くして飛び出していた。

それは、人の目では追えない迅雷。

はエルボー。

もちろん、それは、ただの肘じゃない。

グリムアーツ『雷禪/緋

雷神を名乗っていた魔王から奪いとったグリムアーツ。

豪速で懐に飛び込み、幹を回転させながら、えぐるように肘をいれる技。

ゆっくりとなら、子供でも楽に型をマネできる、単なる武の一つ。

しかし、その単なる武を昇華させるのがグリムアーツ。

究めれば『武』を、つまりは『』を、戦略級兵に変えられる技

アダムが『雷禪/緋』を全力で使えば、山を木っ端みじんに吹き飛ばせる。

一點集中の力、範囲極小の力で、世界の地形を変えられる。

グリムアーツは、魔法と違い、會得するのに膨大な時間がかかり、會得してからも絶え間ない研鑽が求められる、非常にワガママでダダッコな能力。

だが、極めてしまえば、魔力の消費を必要とする魔法と違い、なんのリスクもなく使用できる頼れる必殺技となる。

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魔法よりも、グリムアーツを鍛えた方が、最終的には強くなれる。

そんな事は誰だって知っている。

だが、なかなか実行には移せない。

大抵の者は、一つか二つ、魔法耐が強い者と戦う時のためにと、正拳突きやハイキックをしばかり磨くだけ。

なぜなら、前述したように、グリムアーツの取得は面倒くさすぎるから。

會得するのも持続するのも、時間と手間がかかりすぎる。

ゆえに弱者はグリムアーツではなく魔法を好む。

――愚かな神よ。

貴様もそうだろう?

確かに、ランク30の魔法は素晴らしい。

流石は神。

――しかし、切り札に選んだ魔法が酷過ぎる。

よりにもよって、コピーだと?

(愚か! 貴様は、最初から、神的に死んでいる! 私の前に立つ資格はない!)

空気を裂くようなステップを踏むアダム。

腕を固定し、肘を固め、重心低く、高速で、神の懐に踏み込み――

「――え?」

すっころんだ。

ステンと仰向けで倒れこんでいた。

認識が追い付かない。

しかし、聞こえる。

「悪くないぞ、アダム」

センは、アダムの、プルンと揺れた大きなを、足でツンツンとつつきながら笑う。

かなり、しっかりめのセクハラ。

センは、三秒ほど、アダムのを楽しんでから足を離す。

追撃はせず、優雅に、まるで演舞中のスケーターのように、

地をるように、すり足で距離をとりながら、

――センは、さらに採點を続ける。

「お前に負ける事はありえないが、同じ能力である今ならば、常に確定でパーフェクト勝ちできるほどの差はない。その領域にいる者は、全世界を探し回ってもそうそういない。お前は強い。だから、自信を持って

――負けにこい」

――アダムは立ちあがる。

最小限のきで戦闘態勢に戻る。

幸い、なのかどうかは知らんけども、ダメージはない。

ける。

こうと思えば、今すぐにでも。

――しかし――

「……くっ」

アダムは、土埃を払いもせずに、苦い顔でセンを見る。

その貌に、『可憐さ』が生まれた瞬間。

芽生えた恐怖が、アダムをよりしくする。

その完璧なしさに、儚さが浮かぶようになり、脆さが含まれた。

――アダムは、センをただ睨む。

それしかできない。

まるで威圧が、にまとわりつく、鋼のツタのよう――

(マグレではない……先の一手だけでも分かる……)

冷や汗が溢れる。

心がグニャグニャしている。

そのかなの谷間に冷たい汗が流れていく。

(強い……信じられない……こいつ、私よりも遙かに戦闘力が高い……ありえない、あってはいけない。私より強い者ならともかく……私よりも『圧倒的に強い者』など……そんなもの……)

「俺を見誤るな。それは、勘違いだ」

センは軽く、両肩を回しながら、

「さっきのけ流しは、経験の差が生んだ、確定的なマグレでしかない。ブロント語に聞こえるかもしれないが、あるんだよ、事実、そういうものが」

確定的なマグレ。

なんのトンチだと、アダムは一瞬混する。

「……お前は強い。愚直に積み重ねてきたのが分かる。気が遠くなるほど繰り返したのが分かる。戦闘だろうが勉強だろうがスポーツだろうが、なんだって同じ。積み重ねた結晶が結局、一番、しい」

「……」

「さあ、やろう、アダム。何度も言うが、心配するな。お前は強い。俺が本來の存在値を持ってここに立っていたならば、お前の命は一秒持たないが、今はステータスだけなら同等。つまり、お前が積み重ねてきた研鑽は、充分、俺に屆く。だから、全力で」

――俺に負けるがいい――

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