《『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……》16話 狂信者、誕生

センは顎を引く。

いまだ、時間は止まっているはずなのに、厳かな風が流れた。

拝むように手を合わせる。

ただの構え。

心を整えているだけ。

センは、誰にも祈らない。

その頭上に誰もいない事を知っているから。

センは丹田に、ほんのしだけ力を込めて、

「……『神化』……」

ポソっとそう呟いた。

センにしてみれば、超々々低位の覚醒魔法。

二十段階ほどある強化システムの、最初のギアを、ほんのしだけれてみただけ。

しかし、

「――――――っっ!!!」

瞬間、アダムの世界が閃で包まれる。

虹だった気がする。

小さな虹の塊が、パチンと弾けて、空気と混じり、世界に溶けていった。

――目が潰れたと確信した。

に染まる虹のスーパーノヴァ。

線狀の冷たい輝きが、アダムの眼球に溶けていく。

はまだ、そこにあった。

「ぁあ……ぁあああああ……」

見えている。

確かに見えている。

確認できる。

しかし、何も、理解できなかった。

あまりにも果てしなかったから。

気付いた時には、ボロボロと涙がこぼれていた。

とめどなく溢れ出る。

センを包むオーラは、このちっぽけな世界全ての何倍も、何十倍も、何萬倍も大きく見えた。

センは口を開いた。

「こんなものは、ただの數値だ。……まあ、突き詰めていけば、実は、なんだってそうなのだけれど」

神化を解いて、フェイクオーラで、自の途方もない輝きを封じ込めたセンは、

ここではない、どこか遠くを見つめながら、

「お前と戦うの、楽しかった……久しぶりに生きている気がした。まあ、実際のところ、この程度の事にも楽しみを見出さないと流石にやってらんねぇってだけなんだが」

さびしげに、かなしげに、

どこか儚げに、

神は虛空を眺めて、ため息をつく。

――アダムは、

包みこまれておきながら、

不敬にも、

この方を包みこんでさしあげたいと、

――そんな事を想ってしまった。

「主上様」

「ん? ……俺の事?」

「この上なく尊き方……どうか、このわたくしめを……」

禮をもって、神前に伏せる。

「主のシモベの一人に、神の足下に、輝かしき末席に加えて頂けませんでしょうか」

心が平伏した。

生まれて初めての覚。

この上なく尊い輝きにれて、魂魄が歓喜に包まれた。

生まれた意味を知った。

哲學の解答を得る。

――私は神のために存在し、神はここにいた――

アダムは溺れるほどの涙を流す。

溢れかえる想い。

これは、まぎれもなく『』。

この世で、最も尊い

――偉大なる神に盡くし、奉仕するために、私は生まれてきた――

アダムの想いは固まった。

アダムは生まれ変わった。

神の下僕。

それが、私の全て。

――私は、添い遂げる。一生、神の手足として――

「ぁあ、無い、無い。そういうのも飽きてんだよ」

アダムのをシカトして、神は、渋い顔で、手と首を橫に振ったのだった。

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