《『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……》19話 存在値17兆

19話

魔王と勇者の闘いは、アダムだけではなく、

とうぜん、センにとっても退屈極まりないものだった。

存在値100前後は、エックスなら、2・3しかいない超珍種だが、

アルファなら、50~100くらいはいる有象無象。

センが99回目(前回)に転生した世界は、

アルファの中でも、かなり質の高いアルファだった。

そんな世界で102年生きてきた直後のセンにとって、

目の前の魔王と勇者の闘いは、正直、見ていられないものだった。

この程度の闘いは、前の世界だと、

片田舎の闘技場でも頻繁に見られた安い演舞でしかない。

ブウ編のZ戦士サイドから見た、普通の地球人しか參加していない天下一武道會の予選とでも言えば、センの心境も理解しやすいだろうか。

(魔王は剣しか使えないってだけあって、存在値90臺にしてはマシなグリムアーツを使っているが、戦闘経験が圧倒的に足りていない。同レベルのヤツがほとんどいないエックスで生きてきたんだから當然と言えば當然だが、本當に……イラつくくらい、いちいち、スキが多すぎる。同レベルが相手だと通用しない戦闘スタイルなど無意味)

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グリムアーツは究めれば、『あらゆる異能の頂點に立てる潛在能力』をめた技能だが、キチンと使いこなせていなければ、単なる技の延長でしかない。

(……勇者は、なんていうか……酷いな……)

『見ている分には』という注釈はつくが、勇者は確かに酷かった。

パーフェクトオールラウンダー。

スキルもステータスも戦闘力も、全スペックが一律で高水準。

戦闘スタイルもビルド(能力構)も、ザ・王道。

ゆえに強い。

スキはない。

だが、見ている分には、何一つとして面白くない。

の方は、なかなかエッジがきいた腐り方をしているくせに、能力は、とんだ優等生じゃねぇか。欠點がないってのは、言いかえれば、突出した個がないってこと……)

『特徴がないのが特徴です』

センには、勇者がそうびながら闘っているように見えた。

(さて、どうすっかなぁ……)

センは、このイベントの処理方法を考える。

すぐに、幾通りも浮かぶ。

この世界で臺頭していくのならば、方法は一つ。

――だが、

(邪魔されんのが一番ウゼェ。かといって、何の力もない分だと、中級世界エックスでの調べは困難になる)

ネットという最強の報ツールがあった故郷でも、國家機や、裏世界の報や、マジの異能に関する隠されたなどは、一般人だとなかなか手できなかった。

どの世界であれ、報は資産であり、その価値が高ければ高いほど、例外なく手困難。

センは、決してその事実を嘆かない。

むしろ、そうでなくてはいけないと思っている。

報とは、すべからく匿すべきものなのだ。

そうでなければ、失敗した時、面倒くさい。

(そんな観點からいくと、ラムドのポジションは、なかなか味しい。宰相という役職は、ちぃと面倒くせぇが、もともと、『気が向いた時だけ手助けする』って立場だったみてぇだし、最悪、そういう諸々の頭脳労働系雑務はアダムに任せておけばいい)

アダムの『吸収』は、他者の知識や演算能力も、

もちろん丸々ではないが、ある程度奪う事ができた。

全世界を見渡しても、アダムより優れた頭脳を持つ者は、そうそういない。

(となると、ここでの一手は、おのずと決まってくるって訳だ)

魔王を助ける。

勇者は殺さない。

どちらも、うまく利用する。

勇者には、死ぬよりも遙かに『しんどい目』に遭ってもらう。

この先、勇者は、今日この日に魔王城へと乗り込んだことを、

幾度となく後悔するだろう。

(既に、この世界の、國家間パワーバランスは把握した。ラムドの頭にある報だけだから、とうぜん後で補間は必要だが、大ならもう見えた。魔王國の立場を現狀の序列五位から、三位まで持っていき、俺が壽命を迎えるまで、その位置をキープする。これが最良)

目立たず、騒がず、されど決して無名ではない、ほどほどの地位。

報回収だけが目的ならば、それこそが、もっとも効率的な立ち位置。

(俺ってば……いつのまに、こんな『効率廚さん』になっちゃったのかねぇ……悲しいねぇ、虛しいねぇ)

最初の街で、延々とスライムを狩っていた日を懐かしく思う。

ほとんど脳死狀態で、淡々と経験値を積んでいくだけの毎日。

けれど、

……逆説的ではあるけれど、

事実、

頭の中では、世界がどんどん広がっていたのだ。

無邪気な期待は、過剰を越えて膨らんでいった。

可能は無限で、未來は輝いていた。

(結局、あのころが一番楽しかったような気がする……はっ。やべぇなぁ……『懐古廚さん』にだけはなりたくねぇと思っていたんだが)

それなりに時間はかかったが、辿り著いてみれば、やっぱり呆気なくて。

頂點なんて、耳ざわりがいいだけの虛無でしかなくて。

(……でも、ほんと……楽しかったんだよなぁ……未來があった時は……)

『最強』という『膨大に膨らんだ數値』がセンに見せた風景は、何もない平原だった。

振り返ったら、誰もいない。

前を見ても、なにもない。

――ただ、可能が閉じて、未來が死んだだけ。

神を超えた神。

存在値17兆。

……だから、なんだってんだ。

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