《『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……》21話 ついに、ラムド、く
21話。
剣戟は終わった。
ドラマチックな戦闘なんて無かった。
ただ、順當に、魔王が負けただけ。
「……まだ、生きているか?」
「がはっ……ごほっ……くはっ……はぁ、はぁ……」
「……『理離守りりす』か、いいスキルだな。殺しきらない限り、どんな狀態になろうと回復し続けるオーラの自展開。だが、流石に、しばらくは立てないだろう?」
「はぁ……はぁ……」
「俺を肯定しろ、魔王。そして、自分を否定しな。自分自で、てめぇの存在価値を殺せ」
「ワシは、絶対に……ワシを否定しない」
「だろうな」
「けど、肯定はしてやる……見事な強さだ、勇者」
「…………………強さの肯定なんざ、いらねぇんだが……まあ、いいや」
一度、薄く笑って、
「じゃあな、魔王。あの世で見てな、テメェが必死になって守ろうとしたもんが、ただの地獄になって穢れていく様を」
勇者が、トドメの一撃を放とうとした、その時、
完全に、見計らったタイミングで、
「ふむ、なかなか面白い勇者じゃのう」
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ラムドが前に出てきた。
黒きローブを纏ったリッチは、くつくつと笑う。
「バカ王子、クズ勇者……他國の王族だけではなく、家族や自國の諸侯からも、裏では、散々口をたたかれている、生粋のDQN。……しかし、どうやら、それなりには、自分の哲學を持っているらしい。……哲學を持っているから何なんだ、という話は、この際、置いておこう。話が進まんからのう」
「おいおい、この闘いは、そちら側の王から申し込まれた、正式な一騎打ちだぜ。いくらピンチになったからって、アッサリと約束を破って臣下が介するってのは……ちぃとばかし、いただけねぇなぁ」
「知らんよ、その言がわされた場にいた訳でもないし……なにより、わしは、そういう一切合切を、どうでもいいと思うタチじゃからのう」
「ああ、知ってるよ。俺だって、別に、本気で邪魔すんなって言ってんじゃねぇ。頭が死にそうになってんだから、抵抗して當然だ。てか、他の連中はなんでかねぇんだって、現在進行形で思っているわけだが……まあ、んなことだって、瑣末も瑣末」
勇者は雙剣を構えなおし、
「聞きたかったんだが、サリエリが全快してんのは、テメェがなんかしたせいか?」
「変わった事に興味を持つ輩じゃのう。それ、今、重要か?」
「くく……違いねぇ。あれだけの損壊をどうにか出來る『何か』は確かに脅威だが、それほどの『何か』なら、どうせ『複數回使用』は出來ねぇだろうし、仮に、まだ何回か使えたとしても、端から全部、壊しちまえば良いだけの話……単純だぜ」
無詠唱のバフをかけなおす。
勇者は、ラムドから一瞬たりとも視線を外さない。
油斷はありえない。
勇者は、ラムドを知っている。
というより、魔王國が臺頭してからというもの、
ラムドの名を知らぬ者の方がなくなった。
頭脳と能力。
高い次元でその二つを兼ね備えた者の鬱陶しさが分からないほど、勇者はバカじゃない。
バカはバカでも、ただのバカではないのだ。
(ランク5……いや、ランク6か? 召喚士に回復魔法は使えねぇ。つまり、ラムドがサリエリに使用したのは、ランク6の回復魔法が込められた魔道。……シャレになんねぇもんを持っているじゃねぇか……噂を聞いた事すらねぇ超級アイテムだが、こいつなら用意できるかもしれねぇと思っちまう。くく……畏怖に値するぜ。てめぇの存在、てめぇの力)
勇者は、腰を落とす。
左手を前に出して、右手は下げる。
「正直に言おう。そこに転がっている脳筋魔王は、俺にとって、まったく脅威足りえねぇ。が、てめぇは違う……栄に思ってくれよ。俺がここまで評価する相手はこの世でテメェだけだ。つっても、俺が勝てない相手って訳じゃねぇ。俺を害せる可能がコンマ1パー殘ってんのが、この世でテメェだけっていう、つまりは、俺の異常を自慢しているだけさ。……さぁて、んーじゃーまー、行こうか。俺の全全霊をもって……テメェの全部を殺してやるよ」
「ひゃひゃひゃ、まあ、待て待て」
「あん? なんだ? まさか、命乞いって訳じゃねぇよな? その心配はないと思うが、一応、最初にハッキリと言っておくぜ。俺の上には誰もいねぇが、それは下も変わらねぇ。俺は、最後まで孤高に生きて、孤高に死ぬ」
「いい覚悟じゃのう。嫌いじゃないぞ」
「で、なんだ? 何をまつ? ただの時間稼ぎなら、失の念をじえねぇぜ」
「ようやく完したんじゃ。一緒に楽しもうじゃないか」
「……?」
「刮目かつもくを許そう、勇者。そして、瞠目するがいい、これこそが、理論上最高の召喚式じゃ」
言って、ラムドは、
自分の右腕を引き千切った。
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