《『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……》23話 ラムド、俺はお前を尊敬するね
23話
ラムドは、引き千切った自分の右腕を目の前に放り投げた。
千切れた腕は、地面に落ちると同時、そこに紫のジオメトリを描く。
(腕をにした? ぃや、違うな……そうじゃねぇ。ラムドの存在値が一気に下がったところを見るに、腕はただの依代。右腕に、生命力の大半を込めて、『贄にえ』にした)
勇者のサードアイでは、的に、どれだけ下がったかは分からない。
なんとなくはわかるが、そこまで。
対象の存在値がデジタルに理解できるようになるのは、セブンスアイから。
(狂気の沙汰だが……まあ、俺が相手だ。そのぐらいしねぇとなぁ)
勇者は、ラムドの狂気を稱賛し、けれた。
召喚に詳しい訳ではないが、決して無知ではない。
何をしようとしているのか、それを察するぐらいの事はできる。
(理論上最高の召喚か……介して邪魔するべきなんだろうが……見てみたいと駄々をこねる自分が、どこかで、確かにいる……くく……まあいいさ、寛大な心を持ってあがきを許し、嘲笑を持って捩じ伏せる。それでこそ、俺だろ? なぁ、勇者ハルス)
「くるがいい、スリーピース・カースソルジャー」
禍々しいジオメトリから、『ソレ』は這い上がってきた。
紫に染まる呪われた鎧を纏いし屈強な魔人。
左手に攜えている『死に染まった魔剣』が怪しく輝く。
「……嘆するぜ……心からなぁ」
勇者は微笑んだ。
喝采したい気分だった。
「すげぇよ……ラムド。俺はお前を尊敬するね」
勇者はそう言うと、腰の鞘に、雙剣を戻す。
そして、右手を前に差し出し、
「活躍のチャンスが、ようやく來たな。お待ちかねの、出番だぜ……サテライト・エクスカリバー二式」
宣言した瞬間、勇者を囲むように、二つの聖剣が召喚される。
勇者を守るように浮遊する聖剣は、念じるだけで自在にれるオールレンジ兵。
「俺は強すぎた。あまりにも。……五歳を過ぎてからは、本気で闘った事なんて一度もねぇ。」
勇者は五歳の時、超難関の『冒険者試験』を歴代最高の績で合格してからというもの、敗北を経験した事がない。
期は流石に、幾度か、指南役や歴戦の冒険者相手に敗北を喫した事がある。
しかし、冒険者試験という難関を乗り越えた事で、勇者は己の壁を破壊した。
以降の勇者は敗北を知らない。
もっと言えば、誰も、勇者の敵にはなれなかった。
「飢えていたよ、お前のような『敵』に……」
勇者は嗤う。
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