《『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……》26話 ウイング・ケルベロスゼロ(EW)

26話

(……強ぇ)

勇者は強い。

総合力なら、間違いなく、この星の一等賞。

だが、

(どうやら、魔王と同じで、魔法は使えないようだが……戦士としての格……『殺し合い』という純粋な一點に置いて、俺は、こいつより、わずかに……しかし、確かに劣っている)

適宜、最善の距離をとり、2本のエクスカリバーで、カースソルジャーを削っていくが、

「ぐぁああ!!」

損を覚悟で詰められて、強引に、一撃を叩き込まれれば、

それまでに稼いだ優位は即座に覆される。

「くそが、くそが、くそがぁああああ!」

を吐きながら、歯をむき出しにして、

「調子に乗んなぁああ!」

勇者はアイテムボックス(亜空間魔法のランク2。生命以外で、重量5キロまでなら、どんなものでも収納できる亜空間倉庫)に手をばす。

取りだしたのは、1枚の誓紙。

B5サイズの、日に焼けてボロボロの紙。

勇者は、荒々しく、親指を噛み千切ると、

「ウイング・ケルベロス!! デザートの時間だぁ!!」

勇者のけ止めた判狀は、青い焔に包まれて火の玉になる。

玉になった青い焔は、ツラツラと長くびて、火のをつくる。

そのの向こうから、

「グルルルゥ」

翼を生やしている三つの頭を持つ犬が現れた。

ウイング・ケルベロスは、この場に出現すると同時に、

ギチギチ、ブルブルと震えだし、を、コンパクトに変形させていく。

前屈し、腕と足がくっつき、翼が化する。

バックパックの形狀になったのを確認してから、勇者は、バチンと大きく指を鳴らす。

グワっと、ウイング・ケルベロスは勇者の背中に食いついた。

浮遊する2本の聖剣を従えし、ケルベロスの翼を生やす勇者が、そこにはいた。

「さぁ、本番と行こうか……ここからの俺は、もっと高く飛ぶ。文字通りなぁ!!」

ヒュンヒュンと、黒の翼が風を切る。

軽快に空を舞いながら、

勇者は、浮遊するエクスカリバーで、カースソルジャーに猛攻を加えていく。

「どうした?! 得意の剣が屆いてねぇぜ! まさか、飛び道は無しか?! おやおやぁ! カースソルジャーさんともあろう者がけねぇ! 呆れてモノも言えないとは、まさしく、この事ぉ!! ――って、なぁっ!?」

カースソルジャーが、魔剣の柄を、タタンと指ではじいた瞬間、

の魔剣は、一瞬で、死の魔雙銃に変わる。

「ちぃ!」

カースソルジャーは、二本の剣をアクロバティックに回避しながら、両手に握りしめた魔銃をする。

歪な形狀をしているサブマシンガンタイプの魔雙銃は、

引き金を引き続けている間、延々に、高速で気弾を放ち続ける。

連発してくるエネルギー弾の雨。

それを、リロードもなしで、無盡蔵に撃ち続けられるという兇悪ぶり。

(クソがぁ! 厄介な事を! ――ぃや、だが、あの銃の威力は、剣より劣る!)

銃タイプの武は、この世界に太古から存在している。

ただ、あんな複雑な形狀の武を、

いったい、いつ誰が発明したのか、それは知られていない。

――というか、誰も知らない。

(弾の方が圧倒的にダメージは低い。よほど近づかれねぇ限り、弾は適度にバラけっから、まともには當たらねぇ。しゃぁねぇ……こうなりゃ、比べだ……)

気弾の雨を、必死にかわしながら、

(ナメんなよ、カスが。その火力じゃあ、俺は殺せねぇ。てめぇが俺を殺しきる前に、確定で、俺がお前を削りきる)

勇者は、長期戦を覚悟した。

だから、ぶ。

覚悟をれ直すために。

「上等だ、ごらぁああ! どっちが先に盡きるか、命でガマン比べしようじゃねぇか!」

そんな、必死に闘っている勇者を遠くから眺めつつ、ラムドは、

(ウイケロかぁ。なつかしいなぁ。カッコいいっていう理由で、俺も使ってたんだよなぁ……魔改造して、ウイング・ケルベロスゼロ(EW)とか言って遊んでいたなぁ。どんだけ改造したところで、飛行オプションで使うなら、レーザーファルコンかドラゴンホークの方が上だから、結局、まったく使わなくなったけど)

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