《『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……》29話 験生垂涎 これが……アリア・ギアス……っっ!!

29話

「ラムド! そのカースソルジャーとやらを上手く使って、勇者を捕らえよ! 立場上、これほどの狼藉を働いた者を見逃す事は出來ん! おい、聞いとんのか、ラムドぉおお!」

ラムドはカンシャクを起こしている魔王に、

「ふむ。ちなみに、その『上手く』とはどうやるのですかな?」

冷靜に言われて、魔王は顔を真っ赤にし、

「それを考えるのがお前の仕事だぁあああああああああああああああああああ!」

「では、考えましたぞ。答えは……」

そこで、ラムドは、勇者に視線を向ける。

「一分やる。手は出さん。好きにせぇ」

「ラムドぉおお! おぉおおい!」

「自上等のテロリストを刺激するのは、あまりにも悪手ですぞ、陛下」

「そんなことは分かっておる! しかし、ラムドであれば、この狀況でも――」

「はっはっは、無茶を言わんでもらいたいですなぁ」

「なにを笑っとるか、このクソバカ者がぁああ!」

ガオーっと吠える魔王をあしらうラムド。

そんなラムドの耳に、

「……ラムドぉお」

強烈な呪詛を込めた聲が響く。

「答えろ。……いるのか? もう1匹……そこにいる1號と2號だけじゃなく」

「ん? 呼ぶか? ほれ」

ラムドがそう言うと、紫のジオメトリから、3目のカースソルジャーが出現した。

「これぞ、スリーピース・カースソルジャー。一人、やられてしまったが、全員同時にやられん限り、消滅はせん。一日も経てば、そこに倒れている1號も復活する」

「……三……同時に相手をしなけりゃいけねぇってか……狂ったバケモンを呼びやがって……」

そこで、勇者は、自分の親指、その爪をグっと奧歯で噛んだ。

そして、

「上等だぜ」

バリィっ!!!

と、親指の爪を、奧歯でブチ剝がした。

「アリア・ギアス起 時間に命じる。俺から、『今日の記憶』を一秒たりとも奪うんじゃねぇ」

苦痛を差し出して、記憶を強化する。

瞬時かつ大量にモノを暗記しなければいけない文などが、切羽詰まった際にやる裏技。

正直、今日という日を忘れるなどありえないので、この行は、無意味なのだが、意味や価値があるかどうかはどうでもいい。

これは宣言。

覚悟を現しているだけ。

爪が剝がれた親指の、グチュグチュになった、痛々しい姿。

見ているだけでもキツい、その狀態でも、

「刻んだぞ、この屈辱……」

涙の一つも流さず、脂汗をわずかに浮かべただけで、

「殺しにくるからな。テメェも、今日を、絶対に忘れるな。必ず俺は戻ってくる……そこの三匹を……まとめて殺せるようになって、俺は、必ず、お前を殺しにくる……いいな、ラムド……俺の敵」

勇者の言葉をけ止めたラムドは、そこで、フンっと鼻で笑い、

「わしに敵はおらんよ」

言い切る。

その意味は一つ。

「敵と遊んでおるヒマなどない。もし、また、出會ったとしても、対応は今日となんら変わらん。ワシが、ぬしを実験臺にする。それだけじゃ」

最後までブレないラムド。

勇者のこめかみに、青筋が浮かぶ。

「俺とテメェの戦爭……開戦だ」

最後にそう言うと、アイテムボックスから取り出した寶玉を掲げ、

「邪魔すんじゃねぇぞ。こいつは、ただでさえ、不安定な転移しかできねぇんだ」

「ほう。逃げる手段にランダム転移を用意するとは、酔狂なヤツじゃのう」

「魔王城に次元ロックがかかっている事くらい知っている。だから、わざわざ、こいつを用意したんだ。どこに飛ぶか分からねぇ代りに、どんな妨害もけ付けねぇ。こんな微妙能だが、かなりのレア魔道なんだぜ」

「確かに、なかなかのレアじゃな。しかし、はて……次元ロック……この城に、そんなもの、張っておりましたかな、陛下」

「お前、ほんと、どんだけ、魔王軍に興味ないの?! ていうか、ここに次元ロックを張ったの、お前ぇ!!」

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