《暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが》第6話 〜騎士団長〜

バカ達がこの世界を救うと決めてから數時間後、俺達は各々の職業に合った武を手に、グラウンドどころか、學校丸々りそうな訓練場に集合した。

俺も不自然ではないタイミングで気配を現す。

訓練場一つで剣も弓も槍も魔法も、何か分からない訓練もしている。

何だあれは……モーニングスター?

「初めまして、勇者様方。私はサラン・ミスレイと申します。この國の騎士団長であり、“最後の砦”です。これ、自分で言うと恥ずかしいなぁ」

騎士団長と名乗った優男は、そう言ってへらりと笑った。

こんな騎士団長で大丈夫なのだろうか。

と言うか、イケメン滅べ。

「団長、そのままでは舐められてしまいますよ!」

俺の心を読んだのか、副団長と思しき真面目そうな男が後ろからコソッと言っているが、サラン団長は笑ったままである。

王様達の笑顔を思い出すと、団長さんの方が暖かい気がした。

多分だけど、この人達は大丈夫だろう。

でも、一応警戒はしといた方がいいよな。

「大丈夫、大丈夫。さて、勇者様方には1ヶ月後に近くの迷宮に潛ってもらいます。その為に、今日から毎日、この時間から訓練。……というのが王様からのご命令ですよ」

ニコリと笑っていたかと思うと、急に真面目な話をしだすサラン団長。

出會ったばかりだが、この人は本當に摑みにくい人だな。

ざわりと空気が揺れた。

訓練かぁ。

俺は自分のペースでやりたいんだよなぁ。

よし、サボろう。

ふと橫を見ると、勇者達の顔が恐怖に歪んでいる。

あれ、君ら世界救うんじゃなかったっけ?

団長さん達はそんな勇者達を見て、呆れた顔をしていた。

「い、一ヶ月後ですか?」

「何か不満でも?」

「一ヶ月で強くなるものでしょうか」

「むしろ、私達が指導して強くなれなかったのなら、それは君達の方に原因があると思いますね」

サラリと宣言する団長さんにへっぽこ勇者は顔を顰めた。

そういえばこいつ、他人からバカにされるのが凄く嫌いだったような。

「ハッキリ言いますと、私達騎士団はこの國の“最後の砦”であることに誇りを持っています。魔法もないような世界から來た、しかもたかが子供に、負けるわけにはいかないんですよ」

再びあの食えない顔でニッコリと微笑む団長に、勇者とその他は額に筋を浮かべる。

簡単に挑発に乗りすぎだろ。

ふと、団長と目が合った。

一応、お返しの意味でニッコリと笑っておく。

こいつらはともかく、俺まで舐められているのはちょっとムカつく。

……何だかんだ言って、俺が一番子供っぽいな。

俺のお返しをちゃんとけ取った団長さんは、しだけ目を見開いて、今度は優しく微笑んだ。

くそう、イケメンが笑うんじゃない。

子達の視線がそれだけでサラン団長に釘付けとなった。

サラン団長からの話はそれだけらしい。

騎士達に従って、勇者達は扱う武ごとに散らばり始めた。

よし、サボるか。

頑張れよー、勇者様達。

俺はちょっと蔵書室行ってくるからー。

え、止されているって?

知らないね。

昨日の會話を聞いた後だと、王様達の命令には片端から反抗したくなる。

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