《暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが》第18話 〜サラン団長からの贈り

「これを君にあげましょう」

そう言ってサラン団長が取り出したのは、1振りの刀だった。

……待て、今どこから出した?

疑問が口に出る前に、サラン団長はずいっと刀を俺の前に差し出す。

サラン団長のニコニコとした笑みに負けて渋々け取った。

黒の柄に黒の鍔、黒の鞘と、なんとも俺の中の廚學二年生をくすぐる刀だった。

……ってか刀ってこの世界にあったんだな。

今まで見たことがなかったからないものとばかりと思っていた。

「これは??」

「これは初代勇者様がご自分の手でお作りになったカタナと呼ばれる武です。確か、君は初代勇者様と同じ世界から來たのですよね?カタナのことは知っているでしょう?」

「……いや、うん。ってか、何で勇者じゃなくて俺にこれを?と言うか、そうポンポンあげていいもんなのか」

し抜いてみると、刀も見事に真っ黒だ。

……分かっているじゃないか、初代勇者。

「もちろんツカサ君にあげることも考えましたが、彼は曲刀のスキルを持っていないのと、勇者には代々渡される聖剣がありますので、ジール君と相談して君にあげることになりました」

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「……王様には?」

「……これは緒なのですが、これ、王城の寶庫から盜んできたんですよ。今日のミノタウロス戦で君の武は壊れたようですし、ちょうど良かったですね」

さらっととんでもないことを言うサラン団長に、俺はしゾッとした。

今寶庫から盜んできたって言わなかったか?

「ちゃんと寶庫から盜んできたと言いましたよ。それに、ただギラギラとした金塊に埋もれているより、使われた方がそのカタナも喜ぶでしょう。それに、君が使っていた短剣も盜んできたものでしょうに」

……エスパーだ。

あと、壊れた短剣の出どころは完全に黙する。

壊れたのだから、もう掘り返さないでほしいものだ。

俺は刀を完全に抜いた。

刃はいわゆる小烏造りと言われる形狀で、峰の部分にも切っ先だけ刃がついている、両刃の刀だ。

「安心しろ、峰打ちだ」が出來ない刀である。

「銘はないのか?」

「あるにはあるそうですよ。ほら刀の付けの辺りに。私達は読めませんが」

見てみると、確かに文字が彫ってあった。

漢字で。

やはり、初代勇者は日本人だったようだ。

久しぶりに見る漢字に懐かしさがこみ上げてくる。

「それで、なんと書いてあるのです??」

ワクワクとした顔でサラン団長に促され、その文字を読んだ。

銘は黒の刀に白で刻まれてあり、とてもよく目立った。

「銘は“夜刀神”。確か神様の名前だったような」

「ヤトノカミ……その様な神が君の世界にはいらっしゃるのですか?」

「ああ、うちの國の、だけどな。俺達が生まれた國、日本では、八百萬の神という思想があって、全てのには神が宿っていると伝えられているんだ。それこそ、無限に等しいほど神がいるんじゃないかってくらいにな」

「全てのに神が宿っていらっしゃる。……なるほど、そのような考え方はしたことがありませんでしたね。この世界の神は、創造主様一柱のみですし」

新しい知識に目を輝かせて、頼んでもいないのにこの世界の神とやらの事を説明しだしたサラン団長は放っておいて、俺は刀に目を落とした。

「……ん?」

銘の橫に目立たない、のつけられていない文字がある。

月のに反して辛うじて読めた。

“將來やって來るであろう、俺の後輩に助けになる事を祈って”

そのし左に傾いた文字に、知らず知らずのうちに笑みがこぼれる。

心の中で、先輩に謝した。

間違いなく、今の俺の心の支えになる言葉だ。

「……初代勇者に會いたいなぁ」

「………」

日本では見られない、曇りのない満點の星空を仰いでそう言うと、サラン団長も黙って星空を見上げた。

殘念ながら知っている星座はなかったが、昨日まで馬鹿な勇者や何かを企んでいる王様たちにじていた憂いや怒りが、跡形もなく綺麗に消えている。

「なぁサラン団長、俺さ――」

俺はサラン団長に一つ、頼み事をした。

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