《暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが》第21話 〜迷宮再び〜
          〈とある書斎にて〉
「上手く邪魔者を追放出來たようだな」
「はい。〝夜〟どもには褒を持たせましょう」
「ああ。……にしても、あのサランがよくもまああっさりと殺られるものよ」
「國王陛下がおみになったのですから失敗するはずがありませんわ。勇者以外の者の呪いも完いたしましたし、後は東國との戦爭理由待ちでしょうか」
「そのうち、指名手配犯を匿っているなどをでっち上げればいいだろう。あの小僧はどうせどこぞでのたれ死んでいるだろうしな」
「はい。全ては國王陛下の心のままに」
計畫は著々と進んでいく。
當事者達の知らない場所で。
          ==========
城から出た俺は、そのまま迷宮に潛った。
『もし何らかの罪を著せられて逃げる時、迷宮程良い隠れ蓑はありません。通路はほぼ迷路ですし、姿を隠せる場所は沢山ありますからね。そうならないようにこちらも注意はしますが、もし不可抗力でそうなってしまったのなら、カンティネン迷宮に潛ってレベル一〇〇を目指しなさい。君であればあるいは……』
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頭の中でサラン団長の言葉が浮かぶ。
もう會えないと思うと再び目の端に水が滲んでくるが、首を振って意識を切り替えた。
今は一瞬一瞬が命取りになる迷宮である。
常に気を張り詰めておかなければ、パーティーを組んでいない今の俺はすぐに殺されるだろう。
ただでさえ多対一が苦手な職業だ。
囲まれたら、いくら低級の魔といえども命取りとなる。
「っ!……はぁ、やっと五階層か。朝早い時間は人が多いと思ったけど、意外と居ないもんだな。」
橫道から飛び出してきたゴブリンを、城から盜んできたナイフで瞬殺して、ホッと一息ついた。
Lv.4の気配察知は半徑約五十メートルほどの距離が有効範囲だ。
気配隠蔽Lv.5を持っていて気配を消している魔なら見つからないが、こんな上層でスキルレベル3以上はそうそう居らず、半徑約五十メートル以に魔が居なければ安心していい。
前に迷宮で騎士団の人に教えてもらった方法でゴブリンの心臓部にある魔石を剝ぎ取る。
人間に似た形の魔は心臓部に魔石を持っている場合が多く、獣型の魔もあるにはあるが、人型の方がドロップ率は遙かに高い。
それは、この前の迷宮遠征でも実証された。
そして、魔石は大きければ大きいほど高値で売買される。
主に魔師の魔法介の為だが。
魔石には魔力が宿っており、魔法を使う者なら幾らか取り出して自分の魔力に変換できる。
ゴブリン程の低級の魔では、小指の爪程のサイズが通常サイズだ。
これだけで、スキル欄にすら表示されない、誰でも使える生活魔法で火が起こせる。
これからの事を考えると、魔力の消耗を抑えるためにも是非とも大量にしいだ。
「持っといて損はないからなぁ」
そう呟いて、紫の魔石を黒裝束の普段暗を仕舞っている場所にれる。
暗は後の回収が面倒くさいから、數本しか持ってきていない。
いざとなれば影魔法でどうにかするし、大丈夫だろうと思う。
気配隠蔽をカンストしているおで、目の前を魔が通り過ぎても平然としている事ができる。
もちろん、サラン団長のような目を持つ魔が居ない訳がないので警戒はするが、持っていないよりは隨分と楽だ。
姿を隠していれば、通りすがりに首をはねることも出來る。
誰に殺られたのか、どうやって殺られたのか分からないまま死んでいく魔が俺の前で大量発生している。
魔石も七匹に一つはあり、余裕が出てきたのでスキルレベル上げのために気配察知を常時全開にしておく。
レベルアップすると範囲が広くなるので、ある意味レベルアップがわかりやすかった。
つい數日前に來たばかりだったので道順も大分覚えていて、一度も迷うことなく下の層に降りる階段をみつけた。
今日中に三十階層までは降りたい俺は、躊躇うことなくその階段に足を踏み出して、止まった。
危機察知のスキルが警鐘を鳴らしている。
小さい魔石を一つ取り出して投げると、地面に當たった瞬間にその魔石の近くに矢が刺さった。
「怖っ……。こんな上層で初見殺しもいいとこだろ」
毒が塗ってあったり、矢が急所目掛けてセッティングされているわけではないが、それでもとても危ない。
前來た時はこんなのなかったのだが、いつの間に設置されたのだろうか。
その後、俺は三十階層まで一度も休憩することなく降りた。
その間に、前のモンスターハウスのようなトラップが七箇所、先程の矢や初級魔法が飛んでくるタイプのトラップが二十箇所あった。
全て回避したが、危機察知のスキルレベルを上げるのにいい鍛錬かもしれない。
途中で數組の冒険者らしきパーティーと會ったりしたが、気配隠蔽を気付くことなく通り過ぎた。
「さて、ここからが未知の世界だな」
ミノタウロスを倒したあたりで立ち止まって、ぐるりと周囲を見渡す。
迷宮の中は大薄暗く、壁際に均等に並んでかかっているランプが黃いを発している。
天井まで大十メートル位で、ミノタウロスが五メートル程だったので、もしかするとミノタウロス以上にでかい魔も出てくるかもしれない。
そんなことを考えていると、ドキドキと鼓が早まった。
冒険にワクワクするとは、俺も男だということだろうか。
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