《暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが》第40話 〜真実〜 夜目線

俺に、新しく主が出來た。

いや、“新しい”というのはおかしいな。

俺の主は魔王様。

それは変わらん。

主殿は第二の主だ。

俺の目は魔王様の

俺の耳は魔王様の

俺の鼻は魔王様の

だが、俺のは主殿のだ。

こうしている間にも、俺の目を通して魔王様が主殿のことを観察している。

聞くところによると、主殿は勇者召喚でこの世界に召喚された異世界人らしい。

勇者召喚とはつまり魔王様を倒すために異世界人を召喚する大魔法。

主殿に魔王様を倒すつもりは今のところないらしいが、いざと言う時は俺は魔王様に味方するようにと言われている。

他ならない主殿から。

本當に、おかしな人だ。

勇者召喚と言えば、魔法がまだ殘っていたことにも驚きだが、一番の驚きは二十八人も召喚された事だ。

過去の勇者召喚において、四人以上の勇者が召喚されたことはない。

・・・記録では、そうなっている。

俺自、魔王様の手より生まれてからまだ百數年しかたっていない。

Advertisement

の間ではまだまだ新參者だ。

恐らくだが、ハイエルフであるアメリア嬢よりも年下だろう。

・・・こんなこと言っていたら痛くない鉄拳が飛んでくるな。

育った環境ゆえにアメリア嬢の知識には偏りがあり、主殿もこの世界についてほぼ無知と言ってもいい。

俺がこの中で一番の知りだ。

という訳で、けるようになるまで主殿とアメリア嬢の質問に答えていた。

もちろん、魔王様が不利になるような質問には答えないという條件で。

「お前がほかの魔と違って喋ることが出來る理由は?」

『簡単だな。主殿に対しての伝令役として人の言語を理解することはとても重要なことだからだ。』

「じゃあ、変でドラゴンになった理由は?危うく死ぬところだった。」

『アレで死ぬならそこまで。魔王様にお會いするなど夢のまた夢よ。』

悔しそうに口を尖らせるアメリア嬢に、俺は笑った。

主殿もし笑っている。

アメリア嬢も最初は、なんと表の乏しいだと思っていたが、主殿関連の話にはよく表くことが分かった。

「あとは、“魔眼”についてだな。」

『ほう・・・。魔眼とはまた、奇妙なものについて知りたいのだな。』

「いや、俺の恩人が持っていたんだよ。・・・殺されたけどな。」

“殺された”と言った時、主殿からとても強い殺気が溢れ出てきた。

その強さに思わず息を詰める。

アメリア嬢も冷や汗をかいていた。

これは、早めに手加減のやり方や力のコントロールのやり方を教えなければ、主殿は一生人の中では生きられないかもしれない。

「・・・アキラ、憎いのは分かるけど、苦しい。」

「ん?・・・あ、悪い。」

を締め付けるような殺気の中、聲を出すことが出來たアメリア嬢に謝だな。

の締め付けも無くなったところで質問に答える。

『魔眼とは、魔王様や魔王様に次ぐ実力の者からの魔法による傷を、目に負った時に稀に見られる現象だ。その恩人とやらはかなりの使い手と見える。』

「ああ、サラン団長は勇者よりも強いからな。」

主殿はを張ってそう答えた。

勇者の実力は知らんが、主殿がそう言うのなら相當の使い手なのだろう。

・・・サラン?

『サラン・ミスレイか?』

「ああ、確かそんな名前だった気がする。」

「アキラ、確かサラン・ミスレイは・・・。」

アメリア嬢が何かを言いかけて口を閉じた。

同じ理由で俺も口を閉じる。

俺達はアイコンタクトをとって、話を変えることにした。

主殿はまだ気づかなくていい事だ。

世界の殘酷さに。

「アキラ、攻撃力のこと聞かないの?」

「ああ、そうだ。ヨル、質問なんだが・・・。」

『何だ主殿よ。』

サラン・ミスレイか・・・。

隨分と懐かしい名だ。

主殿の反応を見る限りとても懐いていたのだろう。

・・・本當に、世界は殘酷で厳しいものだ。

「ステータスの攻撃力ってかなりおかしくないか?」

『おかしい?どこがだ。』

「レベル五からステータスが上がるのは分かった。でも、こんなに攻撃力ぶっちぎってるのに倒せない魔がいるんだぜ?」

主殿の攻撃力については知っている。

先代魔王様など軽く超えているだろう。

だが、それでも魔を倒すのに苦戦する理由がわからないらしい。

聞くところによると、レベルがまだ低い頃はミノタウロスに一切刃がらなかったとか。

『主殿よ、ミノタウロスに剣で攻撃したのか?』

「ああ、剣って言うよりは短剣だな。」

『・・・・・・。』

常識のない者に常識を教えることは、こちらの常識が通用しないから疲れると言うが、まさにその通りだ。

様子を見るに、アメリア嬢も答えられなかった問らしい。

俺は思わず溜息をつきかけた。

『主殿、ミノタウロスはいくら攻撃力が高くともほとんど剣は通用せん。』

「サラン団長とジール副団長の剣は通ってたぞ?」

『魔斬りの魔法を付與されている得ならばしは通るだろう。が、それ以外は別だ。攻撃力と相手の防力に天と地ほども差がなければこちらの剣が折れる。』

主殿が現在使っている刀はもちろん魔斬りの魔法が付與されている。

それでも、この迷宮で剣の修行をしている事がおかしいのだ。

俺は恐る恐る主殿に尋ねた。

『これまでこの迷宮で、剣は通らずとも魔法ならばサックリと倒せた魔がいるであろう?』

主殿はし考えて、頷いた。

「キメラがそうだったな。」

『主殿、この迷宮は対理攻撃に強い魔がたくさんいるのだ。上層の方は剣で倒せたとしても、下層は魔法または魔力を使わなければ倒すのはほぼ不可能だと言ってもいい。』

主殿はし固まり、俺の言葉を味して、驚愕した。

やはり、驚くだろうな。

今まで自分が修行していた場所が、本當は修行に合わない場所だったのだから。

「ヨル、この迷宮は魔法の修行にちょうどいいということ?」

『そう、だな。そうとも言うだろう。』

俺が考えながらそう答えると、主殿はガックリとうなだれた。

その背中をアメリア嬢が慈の満ちた顔で優しくめる。

・・・し、イラッとするな。

だが、まあ仕方ないか。

「迷宮に特があるなんて初めて聞いた。」

『まあ、そうであろうな。世界には魔法が効かない魔の迷宮もある。そちらで修行し直してはどうだ?』

「・・・ヨル、その報は確かか?」

『魔王様が言っていた。俺にはそれで十分だ。』

「・・・・・・・・・そうか。」

ため息をつく主殿は、次の瞬間ガバリと顔を上げた。

「なら、俺が倒したホワイトバットは?」

「アキラ、あの時魔力使ってた。」

「そうか・・・。」

再び撃沈する。

アメリア嬢の口角がし上がっている。

アメリア嬢は魔王様の言う、“えす”というやつのようだな。

『まあ、主殿は気配隠蔽だけでもう反則めいておるから、職業にあった戦い方をすれば負けないのではないだろうか?』

「暗殺者らしい戦い方か・・・・・・。」

主殿は、一緒にいてなかなか愉快だ。

もうくことが出來るが、もうしこの時間を楽しんで良いだろうか。

    人が読んでいる<暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください