《暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが》第47話 〜父親〜
影魔法が矢を喰らい盡くし、まだまだ足りないとでも言うようにその顎を開けた時、第三者の聲が広場に響き渡った。
「雙方引けぇっ!!」
スキル『咆哮』を伴ったそれは僅かながら俺のきを止める。
広場の一番近くにある一際大きな木の枝の上に、長の人が現れた。
遠目から見ても圧倒的な存在を放つその人は、俺達がきを止めたのを見て、足場にしていた枝を蹴り、ひとっ飛びでキリカの前に降り立った。
そこには、王がいた。
レイティスの様な怪しげな王ではなく、誰もが想像するような王が。
王冠をこれみよがしに頭にしている訳では無い。
日本の天皇皇后両陛下のように溫和な空気でもない。
むしろ刺すような威圧をじるのだが、どこからかいような、常に命令を下す立場の人間が持つ獨特な雰囲気を纏っている。
「お、お父様。」
キリカが呆然と呟く。
となると、この全から王のオーラを出している男がアメリアとキリカの父親らしい。
アメリアの話だと、父親である王も魅了にかけられているという。
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どうやら魅了のスキルは行を制限するわけでもなく、位置を特定するものでもないようだ。
いや、魅了にそんな能力があったら怖いけどな。
「キリカ、アメリアに何をしようとしたのだ。」
「わ、私は・・・。」
王は厳しい目をキリカに向けた。
それにキリカがを震わせる。
どういう事だろうか。
王はキリカの魅了にかかっているのではなかったのだろうか。
説明を求めるようにアメリアに視線を向けるが、アメリアは下を向いたまま、俺の目線に気づかない。
俺はアメリアに説明を求めるのを諦めて、現れた二人の父親に目を向けた。
アメリアは大方、先程の咆哮に當てられたのだろう。
エルフ族の中には失神している者もいるので、アメリアはまだマジな方ではないだろうか。
と言うか、咆哮一発で失神させるなど、本當にキリカがエルフ族最強なのだろうか。
「もう一度問う。お前は、姉に何をしようとしていた?」
「あ、あの人など姉ではありません。」
キリカは震える聲でそう言い切った。
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しかしその瞳は恐怖で見開かれている。
そんなに怖いのなら、噓でも謝っておけば良いのに。
「そうか。お前には失した。」
王は短くそう返す。
その瞳には明らかな侮蔑のが浮かんでいた。
続いて王はアメリアに視線を向ける。
「・・・アメリア、我が娘よ。」
その瞳は先程とは一変、申し訳なさそうな、今にも土下座でもしそうなが浮かんでいた。
まるで浮気がバレた夫だ。
アメリアはやっと顔を上げた。
しっかりと父親の目を見る。
「今までの數々のこと、本當にすまない。」
王は深々とアメリアにむかって頭を下げた。
アメリアとキリカは大きく目を見開き、周りを囲んでいる他のエルフ達もざわめいた。
先程まで全から出ていた王としての気品が、すっかり父親としての顔に変わってしまっている。
「外の世界を知らなかった娘を、怒りにを任せてこの大陸から追い出すなど、正気の沙汰じゃない。キリカのスキルによっておかしくなっていたとはいえ、父親としても、王としても私は失格だ。」
済まなかったと、王はさらに深く頭を下げた。
「なぜ・・・。」
やっとアメリアが小さな口から言葉を発した。
・・・空気読んで黙っているけど、俺と夜完全に空気だよな。
それに、もしアメリアがエルフ族領に留まることになれば、俺達は仲良く共倒れだ。
繋がりによって片方が死ねばもう片方も死ぬ。
まだ試したことはないが、アメリアの蘇生魔法ならばそのデメリットも回避できると思っていた。
アメリアに全てを委ねているが、本人も了承してくれた。
が、アメリアがエルフ族領に殘り、俺達と分かれると言うなら、俺に止めるはない。
魔族の大陸に渡るなら危険がいっぱいだし、死ぬ可能だってある。
アメリアに死ねと言っているようなものだ。
正直、魔王など無視しても良いのだが、世界眼発した時に一瞬見えた未來が、それを否定した。
どういう訳かは分からないが、俺が魔王城に行かなければ、この世界は終わってしまう。
もちろん、元の世界に帰る間もなく、俺達もそれに飲み込まれるだろう。
そもそも、この世界は全てが適當なのだ。
いや、俺から見たら適當と言うべきだろうか。
まだ世界眼を持っていなかったからほぼ勘だが、レイティスの城の中にステータスが一〇〇を超えていない者などいなかった。
恐らく王様はもちろん、はじめに出會った騎士達や執事の爺さん、メイドに至るまでがそうだろう。
唯一、王だけはステータスが軒並み低いだろう。
ならば、あの『一般の攻撃力は一〇〇が限界で、戦闘向き職業でも五〇〇が限界』という言葉は噓だったのか。
確かに、勇者達に々と文句を言いながら、あの爺さんの言葉を信じたあたり、俺もまだまだ甘い。
が、もしその言葉が本當なのだとしたら?
勇者達は魔王討伐の為にいつかは城を出ることが分かっていた。
もし、本當に勇者達を抱き込むつもりなら、あの場で噓を教えるメリットがないのではないだろうか。
外に出て、他の冒険者立ちと出逢えば、噓はすぐにバレる。
水晶で洗脳しようとしていたのかもしれないが、あれはそのようなではない。
王の水晶はきっと神をしずつ蝕んでいくようなだろう。
元々持っている負のを増幅させるもの。
異世界召喚と言う、はっきり言ってストレスのかかることが起きたのだ。
負のを持っていない人は俺を含めていない。
それに、大雑把にまとめれば呪いだが、あれは神作に近かった。
だから、解呪師の・・・関西弁も解呪するのに手間取ったのだ。
レベルが低いとはいえ、俺を含めてクラスメイト達はチート集団。
呪い程度解けなければおかしい。
それが出來なかったのは分類を間違えたから。
呪いだと斷定してしまった俺のミスだな。
今頃、全員が神作で仲間割れでもさせられているのではないだろうか。
「、きら、・・・アキラっ!」
顔を上げると、アメリアが心配そうにこちらを見ていた。
どうやら迷宮では考え事をする暇もなかったせいか、ぼーっとしすぎたらしい。
「大丈夫?」
「ああ、問題ない。」
ふと視線を移すと、エルフの王が俺を見ていた。
その瞳は娘を取られた父親の瞳・・・なんて見たことがないので分からないが、そんなじの表をしている。
アメリアの前なのでニッコリと笑っているが、目は俺のことははっきりと拒絶している。
「君はアメリアの何かな?」
ブリザードが吹き抜けたような気がした。
返答によっては殺すと言ったじか。
ここは正直に答えようか。
「狹く暗い場所で、二人っきりで約一週間ほどいた仲です。」
王の顔が引き攣った。
辛うじて笑みは殘っているが、口端がヒクヒクとしている。
「ア、アキラそんな誤解しそうな言い方しなくても・・・。確かにあっているけど。」
王の顔からすっかり笑みが消えた。
「アキラ君といったかな?」
「はい。」
「私と勝負したまえよ。」
「は?」
なぜそうなった。
俺はちらりとキリカを見た。
こいつはこいつでアメリアを睨みつけている。
先にこちらをどうにかしなければならないのではないだろうか。
「娘は君と共に行きたいと願っている。よりによって魔族領に。」
俺は驚いてアメリアを見た。
確かにそうんだが、せっかく父親と仲直りしたのに家に帰りたくないのだろうか。
俺の考えを読んだのか、アメリアは首を振った。
「アキラお父様がキリカの魅了に今はかかっていない理由が分かる?」
「いや、分からない。」
アメリアはぐるりと、未だにこちらに殺気を向けるエルフ達を見た。
「お父様の方がキリカよりレベルが上だから。スキルもステータスも娘に負けているけど、レベルはお父様の方が上なの。このエルフ族領では、お父様しかキリカに勝っているものはいない。」
アメリアはぴたりと俺を見據える。
「アキラがキリカの魅了にかからなかったのも、アキラの方がステータスが上だから。同じ理由で、私の呪詛返しもこの魅了に効かない。キリカが発を止めるのが一番なのだけれど、多分それもない。」
はっきりと自分を睨みつけているキリカをちらりとみて、アメリアはそういった。
なんというか、逞しくなったな。
先程まであの視線に震えていたのに、えらい変わりようだ。
父親と何を話したのだろう。
「そこは理解出來た。けど、何で魔族領に?」
「・・・アキラが、そうむから。私の蘇生魔法が必要なのでしょう?それに、私もアキラと共に行きたいから。これからもずっと。」
もしかしてこれ、プロポーズされているのだろうか。
の前で手を組んで、アメリアは潤んだ眼差しを俺に向けた。
長差があまりないせいか、上目遣いになっていないのが殘念。
これは、迷宮にいた時によくアメリアがしていた、おねだりポーズだ。
俺はこのポーズに弱く、どれだけを取られたことか。
「・・・分かったよ。むしろ、こっちからお願いしたいところだけど、その前にお前は父親と妹をどうにかしろ。」
キリカはアメリアを、王は俺をよく似た目で睨みつけている。
その上、すっかり忘れていた夜が巨のまま俺にのしかかってくる。
『・・・俺、空気か?主殿。』
「ぐっ・・・。」
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