《暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが》第50話 〜逆鱗〜

アメリアと和やかに會話をしていると、背後が騒がしくなった。

「キリカ様があのような野蠻な人族に負けるなど有り得ない!皆の者、目を覚ますのだ!ズルをしたに決まっているだろう!!」

その聲を皮切りに、喧騒が更に大きくなった。

している聲に聞き覚えがあるなと思ったら、先程俺が人質にとった男だった。

臺の下からこちらに向けてんでいる。

アメリアを殺しかけて、俺から多は痛い目に合わされたはずなのに、懲りないやつだな。

「リアム、今のどこがズルだと?」

アメリアが冷たい目線で男を見下ろしながら言い放った。

そうそう、リアムとかいう名前だったな。

イケメンの名前は覚え出いないんだよなぁ。

勇者も含めて。

それはどうでもいいとして、アメリアは堂々とするようになったな。

いい事だ。

威勢よく飛び出した割にはアメリアの一言に怯むリアムとやら。

まあ、アメリアも大概殺気が凄いからなぁ。

特に今はお腹すいているから尚更イライラしているのだろう。

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俺は臺の違う場所から降りようとリアムに背を向けた。

「貴方の目も曇ったようだな。流石は忌み子と言ったところか?昔はまだマシだったはずだが、やはりお前は同胞に災厄をもたらす存在なのだ。人族に加擔するなど・・・。」

俺はリアムのぐらを摑み、臺の上まで引きずり上げた。

し力が強すぎたのか、リアムは床に這いつくばって咳をする。

咳が治まるのも待たずに脇腹を蹴り上げてこちらを向かせた。

「ぐっっ!!?・・・・・・ひっ!!!」

リアムは俺の顔を見た途端、小さく悲鳴を上げた。

失禮なやつだな。

ちょっと威圧を混ぜながら強めに殺気を放っただけだろう?

ああでも、久しぶりに腸が煮えくり返っているような気がする。

こんな風にキレたのは、中學の時に妹の唯ゆいが電車で癡漢にあった時以來だな。

あの時はたまたま俺が見つけて、癡漢をしていた男を周りに止められるまで毆った。

流石に母と學校まで連絡がいき、俺と母は男になぜか謝罪することになったのだが、家に帰った途端母からは良くやったというお褒めの言葉をいただき、妹からは抱きつかれた。

母はが弱い割に容赦ない格だし、唯は本気で怖かったようだからな。

この事件のせいで、俺は中學を卒業するまでシスコンのレッテルをられ続けたんだったか。

今ではもう懐かしい記憶だ。

そう言えば、こいつを痛めつける前に、確認することがあるな。

「なあアメリア、こいつはお前の何なんだ?もしくはキリカの何なんだ?」

俺が聞くと、アメリアは迷うようにし考え、迷った末に口を開いた。

「婚約者、だった。小さい頃からずっとそばにいたけど、キリカの魅了にかかってからはキリカの婚約者。」

「・・・へぇ、こんな奴がお前の元婚約者ねぇ。」

元だとしてもなんか癪だなあ。

アメリアは今、俺の者なのだから。

よし、半殺しにしよう。

「ひ、ひいいいぃぃぃぃ!!」

「さてと、お前さっき何て言った?」

本気で怖がって話が進まないリアムに、俺は首を傾げてアメリアを振り返った。

そんなにひどい顔をしているかどうか聞くと、確かに怖いとのお返事が返ってきた。

アメリア言われると、しショックだ。

「まあいい。そんなに不満ならお前か、お前が戦えないならお前の代理人と決闘してやるよ。これで文句はないはずだ。」

一旦怒りは収めて、至って紳士的に対応した。

話が進まないのはもっとイライラするからな。

でも、リアムはまだ足元に這いつくばったままだった。

威圧をかけすぎて立ち上がれないのだとか。

もうこれだけでも勝負は決まったようなものだが、結局は不満が大きいため、王も了承してもう一度決闘をすることになった。

ちなみにキリカはまだ目を覚ましていない。

それ程強く突いていないからすぐにでも目を覚ましそうだったのだが、俺の手元が狂ったか、気絶したふりを続けているかのどちらかだな。

──リアム目線

「リアム様、俺に代理をさせて下さい!」

「いえ、俺が人族の小僧を懲らしめてやります!」

「我らが神を貶めた罰をけさせねば!キリカ様の婚約者である貴方様の正従者である私が出ます!」

私の従者達が揃って聲を上げる中、私は黙って瞳を閉じた。

頭の中では、ここ最近の記憶がぐるぐると回転し、渦巻いている。

それに、従者達の言葉にも引っかかることは沢山あった。

キリカ様?

私がキリカ様の婚約者?

いや、我が婚約者はアメリア様。

災厄を運ぶと言われながら気高く真っ直ぐに生き、そのしい髪と瞳は我らがエルフ族の寶。

確かにキリカ様もお強く、おしいが、アメリア様には敵わない。

なのにどうして私がアメリア様をいじめ、あらぬ疑いをつけてこのエルフ族領から追放し、キリカ様と婚約者の契をわしているような景が頭に浮かぶのだろうか。

婚約の盃をけ取るキリカ様の、歪んだ笑顔が脳裏をちらついた。

そうだ!

私はアメリア様に呼ばれているとキリカ様に言われ、あの広場に出向いた。

いくら待ってもアメリア様は現れず、とうとう痺れをきかせて帰ろうとした時、キリカ様が現れて私に接吻をしたのだ。

突然のことに私は反応できず、またステータスにも差があるため振り払うことも出來なかった。

それから私はキリカ様のことしか考えられなくなったのだ。

「ああ、思い出した。私は、・・・私はなんて事を・・・。」

ああ、アメリア様、申し訳ございません。

キリカ様の狂気に気づくことの出來なかった私の落ち度でございます。

私のアメリア様を思う気持ちはどんどん深い海を沈むかのように私の中を落ちてゆき、表面ではキリカ様を思う私が行しキリカ様と共にこの呪いのようなものを広げていった。

子供でも効きは弱いが効力はあり、王を初めとしてハイエルフ、王族の皆様もキリカ様を可がり、アメリア様を無視するようになった。

まるで、その前までのアメリア様とキリカ様のように。

確かにキリカ様は可らしい顔立ちをしておられる。

が、いくらアメリア様にそっくりでもやはりアメリア様の方がおしく、皆アメリア様を注視していた。

それが、キリカ様は気に食わなかったのだろうか。

しかし、キリカ様の実力は皆が認めていた。

アメリア様が學問に秀でているのであれば、キリカ様は武に秀でておられるのだな。

姉妹揃って優秀な方々だ。

流石は王族。

お二人は我らがエルフ族の寶。

キリカ様は私が止めねば。

「いや、私が出よう。」

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