《暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが》第55話 〜賊〜
「エルフ族領境まであとしですよ」
イライラと腕を組む俺に、若いエルフがニコニコしながら聲をかけてきた。
若いと言っても、アメリア達と比べて若いというだけで、俺より遙かに年上だろう。
例にれず、このエルフも男子だ。
イケメン滅べ。
俺の、殺気を込めた視線をどう解釈したのかは知らないが、そのエルフはハッとして慌てて自己紹介してきた。
「私はウィリアムといいます。お恥ずかしながら、うちの両親がリアム様のファンでして・・・」
「なるほどな。自分の息子にリアムの名をれたのか」
「はい。私自もリアム様を尊敬しておりますので、名前に不満はございませんよ。々恥ずかしいだけです」
「・・・あんなののどこがいいんだか」
「何がおっしゃいましたか?」
「・・・いや」
確かに、キリカの魅了が解けてからリアムの働きは凄かった。
エルフ國を立て直すために東奔西走、アメリアとキリカに正式に婚約を破棄することを宣言し、それについての謝罪や、俺にも土下座して謝ってきた。
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あれは日本人並に素晴らしい土下座だったな。
『アキラ殿、貴殿は殺しかけたばかりか、私がしなければならなかったキリカ様をお止めすること、アメリア様をお救いすること、全てにおいて多大な迷をおかけした。本當に申し訳ない!!!』
『あ、おい、ちょ、土下座!?どこでそんなもの習ったんだよ!無駄に綺麗だし!顔上げろって!』
『人族領の國、大和では謝罪やお願いをする時にこうすると言う。貴殿の故郷は大和に似通ったところがあるらしいので、私からの一杯の謝罪をけ取ってほしい』
『分かったから!許すから顔を上げてくれって!』
結局、その気迫に負けて許したんだっけか。
遠い目をする俺に気づかず、ウィリアムはリアムのことについて話しだす。
「本當に、リアム様は素晴らしいお方です。確かに王なしではこのエルフ族はり立ちませんが、それはリアム様も同じことが言えるでしょう。連日ほぼ徹夜で國の財政を立て直ししていらっしゃるらしいのですが、まだ學習途中の私には何をしていらっしゃるのかさっぱり。リアム様は文のであるにも関わらず、エルフ族でもアメリア様に次ぐ腕前ですし、狩りでも獲を一度たりとも逃したことがないとか。リアム様ころ、文武両道と言うやつですね!」
「そーですねー」
適當に相槌を打っていると、前の方が何やら騒がしくなってきた。
そして、順調に進んでいた進行が止まる。
ウィリアムはあとしだと言ったが、こんなにすぐではなかったはずだ。
その証拠に、ウィリアムが慌てている。
「しまった!賊です!!」
「賊?盜賊って事か?」
アメリアを中心に守り、それぞれの武を構える。
まだ森の中のため、“夜刀神”は使えない。
それに、人數はあちらの方が圧倒的に上だった。
「違います!ここらでは良く狩りに來ていた子供が攫われるんです!そして、誰も帰ってこない!!」
「・・・人攫いか。テンプレだと、エルフ族はその容姿から他族の奴隷になりやすいとかだよな」
「良くご存知ですね。奴らは、同胞を奴隷として獣人族や人族に売りつけているのですよ!!」
拳を握りしめるウィリアムの掌からが流れた。
じりじりとを狹めてくる気配をあらん限りの殺気を込めて睨みつけていた。
先程までのおっとりとしたリアム信者の面影はどこにもない。
このじ、ただの推測でしかないが、ウィリアムはきっと近しい誰かをこいつらに攫われたのではないだろうか。
見渡すと、他にも何人かウィリアムと同じ狀態の者がいる。
エルフ族は同族思いだ。
例えの繋がりが一切なくてもただ同族であると言うだけで、彼らは自分の命を投げ出す。
報復のためなら何でもするだろう。
そんな彼らを敵に回して、なのにこんなに堂々と攫っていくということは、國か、もしくは大陸がバックについているのだろうか。
俺は考えることを放棄した。
今はこの包囲をどう抜け出すか考えなければ。
他のことは後でじっくりと考えればいい。
殘念ながら前衛は俺だけ。
拐犯がいるならキリカも連れて來たかったのだが、生憎と用事があるらしく、姉の見送りを泣く泣く諦めていたのだ。
と言うか、拐犯がいることを何で先に言わないんだよ!
「さて、エルフ族諸君、お姫様を渡してもらおうか。そうすれば、命だけは助けてやる」
「お姫様?」
「アメリア王のことだ。さあ、さっさと寄越せ」
やっと聲が屆く位置まで近づいたと思ったら、今度はアメリアを寄越せとほざいている。
俺の手に握られていた暗の一つがピシッと音を立てて々に砕けた。
殺っちゃっていいのかな?
いや、殺しはしないけど、とりあえず影魔法で縛っとくか?
ついでに腕の一・二本、影魔法にくれてやろう。
「ア、アキラ殿?」
「なんだい、ウィリアム君」
「あ、暗が使いにならなくなりましたが・・・」
「ああ、まだあるから大丈夫だよ」
「アキラ殿、口調がおかしいですよ?」
「何を言っているんだい、ウィリアム君。しだけイライラしているだけだ」
「そ、そうなのですね」
俺の周囲だけ、エルフ族がウィリアムを含めて後ずさった。
から溢れ出る殺気に當てられた為だ。
が、その荒れ狂う殺気も、一人のにかかればただのそよ風に変わる。
「アキラ、私はアキラを信じているから。私を離さないでね」
「・・・當たり前だろう?好きなを離す男がどこにいる」
側に來たアメリアが、暗を々にした腕にしれただけで、自分が落ち著くのがわかった。
アメリアはすっと息を吸いこんで、腰の引けているエルフ達にぶ。
「敵は私たちより多い!だが、このアキラがいる限り、私たちに敗北は有り得ない!同胞達を攫って行ったこの賊どもに我らエルフ族の力を見せてやれ!」
「「「おおおおおおお!!!!!!!」」」
アメリアがエクストラスキルの『軍師』を使って全員の指揮を上げた。
自らも重力魔法の発準備をしていた。
一緒に戦うらしい。
「とりあえず、俺は自分の職業にあった戦いをしてくる。アメリア、無理するなよ」
「アキラもね」
俺は気配隠蔽を起した。
とりあえずリーダーを制圧、その後に雑魚だな。
俺は一人、エルフ族のから抜け出して聲のあった方へ。
スキルレベルを上げていた『暗殺』によってどれほど強く踏み込みながら歩いていても、音が出ない。
後ろは大丈夫。
アメリアに勝てるやつなんているわけがない。
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