《暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが》第59話 〜出航〜
とりあえず、捕らえたボスは森に放した。
エルフ達が尋問しても何も吐かなかったからだ。
いや、きっとあいつは何も知らないのだろう。
ボスっぽいだけで剣筋が雑だし、何より盜賊をやるにしては計畫がお末過ぎる。
そして、エルフ部隊を半分に分けて、一つは人質だった人たちを帰すための案兼護衛。
もう一つは俺達の案だ。
先ほどのこともあってか、前後左右をしの隙間なくエルフ族の騎士たちが護衛してくれているため、実質俺達はただ歩くだけだった。
途中で疲れたアメリアは巨大化した夜の上に乗っている。
「アキラ、本當によかったの?もし本當にギルド公認の賊だったのなら報酬貰えたのに」
口を尖らせるアメリアを小突く。
きっと、それで稼いだ金で味しいものが食べたかったのだろうな。
「こっちは拐された人を取り返せたからいいんだよ。それに、二兎を追う者は一兎をも得ずって諺があるからな」
「にとをおうもの?」
首を傾げるアメリアと夜に意味を説明する。
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『なるほど、主殿の世界の住民は面白い言葉を使うのだな』
心したように腕を組んで頷く夜とアメリア。
その仕草がおっさんのようでし笑ってしまった。
「さあ、著きましたよ!」
先頭を歩いていたウィリアムの聲が響き、一行は歩みを止める。
木々が邪魔でししか見えないが、あまり使われていないであろう波止場に大きな船が停泊していた。
ちなみにアメリアと夜は目の前に広がった青い海に夢中だ。
「アキラ殿、あの船はエルフ族領と獣人族領を定期的に行き來している“ラン”號で、今回あれに乗ってもらいます。」
そう言ってウィリアムが差し出してきたのは、エルフ族王族の印がされた手紙。
獣人族唯一の港町、ウルで使えと王が渡してきたのだと。
粋なことをするな。
恐らく王はこれで俺に借りを返したと思っているだろうが、殘念。
人質を解放したの、俺なんだよね。
王の、同胞が帰ってきて嬉しくもあるが、絶しきった顔が見れないのが一番の不満だな。
「私達はここまでです。アキラ殿、ヨル殿、エルフ族でもないあなた方にこう言うのは、きっと國としてダメなのでしょう。ですが、ウィリアム個人としてあなた方に頼みたい!」
ウィリアムは瞳に溜まった涙をこらえるように顔を顰めた。
「我がする妻と娘を!どうか連れて帰ってほしいのです!!」
「わ、私も!」
「お願い致します!」
頭を下げるエルフ達。
きっと、エルフ族の生態を研究している學者が見れば、きっと大興するに違いない。
エルフ族は基本他族とわらず、そしてプライドが高い。
自ら頭を下げて願うことなど、エルフ族からすれば拷問以外の何でもない。
それを、いくら晶が強いとは言っても、自分達より數は多いが遙かに劣っている人族にするのだ。
彼らの覚悟が目に見えて表された。
「・・・悪いが、俺も故郷にの悪い母親と妹を置いてきてるんだ。先を急ぐ」
「あ、アキラ殿!!」
「だがまあ、俺の目指す道にお前達が言う同胞ってやつがいたなら、拾ってやってもいい」
きっと、城を出た時には絶対に言わなかったであろうセリフ。
アメリアも大分出會った時より変わったなと思っていたが、俺もだったらしい。
「アキラ殿、謝いたします!」
「アメリア様もお気をつけて!」
「おをお大事になさってください!!」
俺達が船に乗り込むと、エルフ達がそうんでいた。
俺は姿が見えないように甲板の中央部に逃げ、アメリアに丸投げする。
「皆も、気をつけて」
「はい!!」
そうして、船は出航した。
小さくなっている夜は俺の肩で風にあたってご満悅だ。
『気持ちが良いな、主殿』
「ああ」
でも風ってベタベタするからあまり好きじゃないんだよなぁ。
今日は夜も念に洗わないと。
「アキラ、し話があるのだけど」
「・・・アメリア」
無表で俺の前に立つアメリア。
アメリアが言いたいことはよく分かっていた。
「アキラ、私も・・・何か手伝うことない?」
「ないな。アメリアの出番はまだまだ先だ」
「・・・そう」
アメリアが俯く。
きっと、前まではその頭をでていたのだろうが、俺はそうしなかった。
「アメリア、もし俺と行理由が違うのなら、一緒にいない方がいい」
「どう、して・・・」
俺も、こんなことは言いたくない。
「アメリア、俺はエルフ族なんて知ったことじゃない。俺は俺の周りだけ幸せだったらそれでいいんだよ」
「その中に、私はってないの?」
「いや、ちゃんとってる」
だからこそ、何をしたいのかは分からないが、アメリアを攫おうとしたウルク國が許せない。
でも、ウルク國によるとなると、魔王城への最短ルートでもなくなる。
一刻も早く日本に帰りたい俺と、アメリアを守りたい俺が心の中でせめぎあっているのだ。
そんな俺の心を知ってか知らずか、アメリアは背びをして俺の頭をでた。
「アキラはアキラのやりたいようにやればいい。私は私のやりたいようにやる」
「・・・そうか」
全てを肯定するアメリアに、俺は苦笑した。
つくづく、こいつは俺に甘い。
そう言うと、晶もアメリアに甘いと突っ込まれそうなので言わないでおいた。
『・・・主殿、俺はいいのだが、こんな公衆の面前・・・船の甲板ですることではないな』
夜の指摘にハッとすると、甲板では俺たちを極力見ないように全員たちが作業しており、俺達は限りなく邪魔だった。
そう言えば、この世界の労働者層だが、ほとんどが人族なのだ。
船で作業している船員も、襲ってきた賊も人族。
人族と獣人族はそんなに対して変わらないのだが、人口がぶっちぎって多いために、他族へ出稼ぎに出ている者はなくない。
俺達が見てきた人族も、全のごく一部にすぎない。
不満に思う者こそいないが、人族の待遇がほかの部族と違うことは確かだ。
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